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『R-1』王者・街裏ぴんくとラッパー・Young Yujiroの元お笑いコンビによる対談が実現、味園で再び交わる二人の人生「 俺らの原点は高校の休み時間」

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Young Yujiro x 街裏ぴんく

ピン芸人の日本一を決める『R-1グランプリ2024』をウソ漫談で制した街裏ぴんくと、ハードなサウンドやメッセージ性の高い楽曲で支持を集める大阪のラッパー・Young Yujiro。実は二人はかつて、裏ブラウンという漫才コンビを組んでいたことをご存じだろうか? コンビ解散後、それぞれのフィールドで活動し、結果を残してきた街裏ぴんくとYoung Yujiro。そんな二人の初共演が実現するのが、11月1日に大阪・味園ユニバースで開催される『味園 LAST WALTZ』だ。共演者は、ヒップホップシーンを牽引するラッパー・Jin Dogg、異型のバンド・トリプルファイヤーなど。そこで今回、街裏ぴんく、Young Yujiroの特別対談を実施し、コンビ時代の思い出などを語ってもらった。

「エモい感じを出したいのに、お前はそれを拒むよな」(街裏ぴんく)

街裏:今回はリモートでの対談やけど、なんかちょっと照れくさいな。ちょこちょこ、俺のライブを見に来てくれていたのは知っているけど、直接喋ったのは10年くらい前やし。

Yujiro:いや、8年前くらいに結婚式でスピーチをやってくれたやん? それ以来かな。それから電話やメールはちょくちょくしていたけど、顔を見て喋るのは久しぶりやもんな。

街裏:こうやってお互い違うフィールドで負けずに続けてきたからこそ、『味園 LAST WALTZ』で共演するのは嬉しいわ。そもそも俺をお笑いの世界に誘ってくれたのが平田(Young Yujiro)やし。だからエモい感じを出したいのに、お前はそれを拒むよな。俺が「ついに一緒にやれるぞ」とXで投稿しても全然乗ってくれへんから、なんか寂しいわ!

Yujiro:ちゃうねん、ちゃうねん! めっちゃ嬉しいねんで。でもSNSで素直な気持ちを出すのって恥ずかしいやん。ただ街裏が言うように、俺が「お笑いコンビをやろう」って声をかけて裏ブラウンが結成されたもんな。「お前はお笑い芸人以外、無理やって」と言うと、街裏も「そうなんかなあ。たしかに松ちゃん(ダウンタウン・松本人志)とか好きやしなあ」って。裏ブラウンが解散して俺がお笑いを辞めてからも、街裏は一人でやっていたし。街裏が今年『R-1』で優勝していなかったら『味園 LAST WALTZ』もおこなわれへんかったやろうから、そういう意味でも共演は嬉しい。でもなんで、元コンビで共演することになったのかは全然知らへんねん。

街裏:どうやら、イベントを企画してくださったキョードー大阪の担当者の方が裏ブラウンのことを知ってくれてはったみたい。出演オファーの来たとき、嬉しさと驚きで、そのメールを嫁さんに見せたもん。二人で「ついに来たなあ!」とワーワーなって。だって二人でYoung Yujiroの曲を聴いていたからさ。平田は音楽で活躍していたけど、俺が『R-1』で結果を出さへんかったらこの『味園 LAST WALTZ』は実現してなかった。そういう意味でも『R-1』には夢がある。

三浦マイルドに怒鳴った、若手芸人時代のYoung Yujiro

裏ブラウン 時代

街裏:ちなみに当時のネタって覚えてる? 俺は、二人で出てたお笑いイベント『キタイ花ん』のDVDを2、3年に一回は観てるから、結構覚えてる。たとえば恋愛バラエティ『あいのり』(フジテレビ系)に二人で出たという設定で、俺が“魔法使い”というニックネームで恋愛の旅をして、平田がそこでのエピソードを披露するネタ。オチは「ちん○んが2本あるやつがおった」という酷い内容でさ。まったくウケずにバトルライブで負けたよな。あと、人気キャラクターの着せ替え人形をお互い持っていて、それを修理してくれるお坊さんがいるから会いに行くという漫才コント。これも全然ウケへんかったけど、楽しかった。

Yujiro:だから今、街裏がバンバン受けてるのが不思議でしゃあないねん(笑)。だって根っこは当時と全然変わってないやん。裏ブラウンって、今の街裏の漫談に俺のツッコミがついてた感じやし。ただ、街裏は中学から大学まで一緒で、バイト先も同じで、ずっとおもろいやつやった。高校の休み時間とか、教室の後ろの黒板のところで今の漫談みたいなことをやってたよな。それでみんなでゲラゲラ笑ってた。だから原点は高校の休み時間やな。

街裏:あのときから、人を笑わせたい衝動はあったかな。平田はヤンチャなグループにいたけど、でもそのグループのメンバーって全員、ちゃんとおもろかった。みんな、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)とか、『HITOSHI MATSUMOTO VISUALBUM』とか観てたから。5、6人で俺にツッコんでくれるけど、それもうまいからこっちも乗せられてどんどんボケられたし。

Yujiro:高校2年で「お笑いコンビをやりたい」となったとき、街裏以外は考えられへんかった。

裏ブラウン 時代

街裏:コンビとして活動を始めたのは大学生になってからやけど、ふたりともトガってたよな。阿倍野ベルタ(大阪)で『コメディスタジアム』という連絡一本で誰でも出られるライブがあるけど、そこは1分ネタをやる芸人がランクは一番下、その上が2分ネタの人ら、一番上は4分ネタの人らで。俺らはもちろん一番下で、でも「1分ネタのやつらこそホンマにおもろい芸人なんや」「ウケへん方がおもろい」とか、こじらせた考え方を持ってたよな。平田は特にトガっていて、『キタイ花ん』の楽屋でみんなが騒いでたら、平田が「うるさいねん」って怒鳴ってさ。めちゃくちゃ若手なのに。しかもそこにいたのが三浦マイルドさんとかやってん。10年後、マイルドさんにお会いしたとき「あのときそう言ってきたのは確実に君の相方だ。俺は忘れない」と、いまだに怒ってはった(笑)。

Yujiro:全然覚えてないけど、そんなこと言うやつおる?

街裏:お前は言ってたねん! あと、裏ブラウンの一発目のステージがbaseよしもとのオーディションライブ『プレステージ』でさ。「若様、若様」というセリフの時代劇が格好いいからやってみようっていうネタで、皮がダルダルの“皮様”が登場する、俺らが初めて作った漫才コントがあったやん? で、そのライブはおもんなかったら鐘が鳴らされるけど、1ボケ目くらいで鳴らされて、平田がハケずに審査員を睨んでた。

Yujiro:「なにを鐘、鳴らしてんねん。審査員どこにおるんじゃ」って思ったもん。それからしばらくして、芸人を辞めて本格的にラッパーの道へ進んだ。

「『R-1』優勝とか無理やろ、と思ってた」(Young Yujiro)

街裏:平田の音楽活動はずっと見てきたよ。最近はとんでもない勢いで曲も出してるし、あとMVがめっちゃかっこいい。平田の存在は刺激になっていた。アルバムを出して「ええ作品やなあ」と思ってたら、ほどなくしてまたアルバムをリリースしたりして。そういうのを見てたら「俺ももっとネタを書かなあかん」って。

Yujiro:俺も今年の『R-1』を観てたよ。でも俺らってもう若手じゃないから、ドキドキはせえへんかったかな。なんなら「優勝とか無理やろ」と思ってた。

街裏:おい(笑)。

Yujiro:YouTubeチャンネルとかおもしろいし、それでええやんって。でもそうしたら優勝してさ。知名度も上がってテレビもいっぱい出てるし、俺は「街裏ぴんくの元相方なんですね」と言われるようになった。街裏の今の状況にはびっくりしてるかな。もちろん刺激になってる。40歳にもなると、音楽とかお笑いとか辞めていく人が多いやん。でもお互いにここまで続けてきて、特に街裏の場合は「途中でよう辞めへんかったな」って感心してる。ほんまやったら35、36歳くらいで芸人は諦めていてもおかしくないやん。

街裏:裏ブラウンは、自分がやりたいことをやるために、俺から解散を持ちかけたやん? それで平田はお笑いを辞めて、本格的にラッパーになってそれをやり続けている。だから俺もがんばれたところはあるよ。だからこそやっぱり今回の共演は感慨深い。しかも味園ビルが2024年で閉鎖して、解体・建て替えになるって聞いた。俺はフリー芸人のとき、味園ビルにあるライブハウスの白鯨、紅鶴のイベントに出て修行させてもらったから。お客さんの数が2、3人は当たり前で、多くても10人。みんな温かいから笑ってくれるけど、その環境に慣れたり、甘えたりしたらあかんから東京へ行った。そんな自分が、あの味園ユニバースの舞台に立てるのはほんまに夢がある。

Yujiro:俺も味園ビルから2分くらいのところにスタジオがあって、あの看板を見るのが日常やから、それが変わるのはちょっと不思議な気がする。今の味園ユニバースに出るのは『味園 LAST WALTZ』で最後になるはず。いつもゴリゴリなパフォーマンスをやっているけど、お笑いファンの方も来てくれるやろうし、いろんな人に親しんでもらえるものをチョイスしたい。当日、ほんま楽しみやな。

街裏:俺は『味園 LAST WALTZ』の日が来るのがちょっと怖い。どんな雰囲気になるんやろうって。でも共演者がラッパーのみなさんで、そのファンの方が多いなかで漫談をやるのは新たな扉が開かれる気がするし、そこで爆笑が取れたら、今後はどんなプレッシャーにも打ち勝てる気がする。なによりラッパーの人たちの魂に身を震わされてきた者としては、「街裏ぴんくはこういうことを20年やってきたんやな。原点にはYoung Yujiroがいて、コンビ解散後も一人でお笑いをやり続けてきた」という情熱をここで見せなきゃ、それこそほんまに嘘になってしまう。だから絶対に会場にいる全員を笑わせるつもりでやりたいね。

取材・文=田辺ユウキ

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