楽しみが増していく、『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024 PARTⅠ STARRY / PARTⅡ 秀華祭』通し稽古レポートが公開
2024年9月7日(土)~ 9月23日(月・祝)THEATER MILANO-Zaにて上演される、『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024 PARTⅠ STARRY / PARTⅡ 秀華祭』の通し稽古レポートが届いたので紹介する。
通し稽古レポート
9月7日(土)に開幕するLIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024 PARTⅠ STARRY / PARTⅡ 秀華祭の通し稽古が、8月末に都内の稽古場でおこなわれた。この日は、初めてPARTⅠ(再演)とPARTⅡ(続編)を1日で通すスケジュール。
再演の通し稽古30分前になり、大道具の出捌けの確認作業が始まった。観客からの見え方やキャストへの負担を考えた上で、ストーリーにつまずきを発生させないように検討と修正が重ねられていく。
ライブで使用するバンドのセット、ひとりの自室、押し入れ、下北沢の風景…。上演中は舞台袖や裏に配置している多くのセットを、どのように動かせばスムーズに事故なく物語が進むのか? キャストたちが安心して芝居に打ち込めるように、ベストな状態で作品を届けようとする裏方スタッフたちの意気込みが伝わってきた。
作中でさまざまな使われ方をする階段の動かし方も調整しているうちに、じょじょにキャストたちが稽古場に集まってくる。ダンスの動きを体にしみこませるように繰り返しターンを重ねる大竹美希(伊地知虹夏役)。壁に向かってじっと集中する小山内花凜(山田リョウ役)。発声練習に余念がない大森未来衣(喜多郁代役)。そして、これから始まるハードな通し稽古に備えてストレッチをする守乃まも(後藤ひとり役)。
山崎がぼっちーずを集め、冒頭のとあるシーンを軽くさらって少し考え込む。「このセリフ、やっぱり元に戻そう」。より良くなるための手入れはするが、昨年の公演実績を前提にした遊びの変更はしない。新規の観客を置いていかない配慮だ。再演は、昨年の公演を丁寧にもう1度。しかしまったく同じものではなく新鮮に。初めて本作を観る人にはもちろん、昨年観た人にも新しい感動を与えられるようにと、ギリギリまであらゆる可能性を探りながら最善を尽くしていく。
稽古場のBGMが公演時の客入れと同じものになり緊張感が漂い始めると、山崎が「時間になったらそのまま始めてください」と音響スタッフやキャストたちに声をかけた。風の音、劇伴、次々に現れるぼっちーず。そしていよいよ初演の通し稽古が始まった。
一つひとつのセリフや動きを確かめながら、スムーズに芝居は進んでいく。多くのにぎやかなセットが行きかう下北沢の街並みのシーンは、セットや役者同士がぶつからないように。舞台という、ライトの当たる場所で物語をとどこおりなく進めていくために、こんなにも多くの人たちが力を合わせて作品を支えているのか、と驚くばかりだ。
星歌を演じる河内美里の存在感の大きさや、PAさん(演:堀 春菜)の少しけだるげな魅力は健在。また、後藤ふたり(岡 菜々美と津久井有咲のWキャスト)の機転のきいたかわいらしいアドリブに、思わず稽古場全体が笑顔になる。芸達者でユーモアたっぷりなピーターピーター(ギタ男役)をはじめとしたぼっちーずの面々は、梅棒の野田裕貴(後藤直樹/吉田銀次郎役)が加わることで表現のバリエーションが増えている。
オーディションシーンを経て、稽古はクライマックスのSTARRYでのライブシーンに。よく聞くと音の数が増えている。事前におこなったインタビューで山田リョウ役の小山内が「昨年は弾きやすくアレンジしてもらっていたけれども、今年はより原曲に近く」と言っていた。昨年の演奏を何度も聞いたファンであればあるほど、彼女たちがこの数か月どれほど努力を重ねて演奏の腕を磨いてきたかに気づくはずだ。
音の粒がより際立ち、鋭い演奏をするようになった守乃、深みを持った力強い音量を出せるようになった小山内のベース。昨年よりもさらに張りのある、透きとおった声を響かせる大森はギターの技術が格段にアップしている。そして、バンドを支え、引っ張る大竹のドラムの安定感。力強くキラキラとした全3曲が終わると、稽古場全体から惜しみない拍手が送られた。
続いての続編「PARTⅡ 秀華祭」編までの少しの休憩時間。昼公演・夜公演の間の長さも、本番の日と同じようにタイムスケジュールが組まれているので、裏方スタッフは機材・セットの配置や動線の確認に余念がない。
続編のセットは、ひと目見ただけでどのシーンで使われるのか分かるものも多く、思わずにやりとしそうになってしまう。そのシーンだけのためにこんなにも大がかりな大道具セットを…と思うものもあり、演出・山崎と制作スタッフによる、作品への愛とこだわりを強く感じた。
休憩中の結束バンドメンバーへ、再演での芝居と演奏の上達について声をかけると、守乃は「むむむ無理です」のように「全然まだです」と謙遜し、大竹は「次もハードですががんばります」と笑顔で意気込みを見せる。小山内と大森は、感想を聞いて安心したような笑顔になった。休憩中や稽古の前後も、常に一緒の場所で固まって談笑したりお茶を飲んだりしている結束バンドメンバーに、彼女たちの強い絆が見て取れた。
続編の通し稽古が始まる10分前、ぼっち~ずが集まり群舞の確認をしていると、台本を持った守乃が山崎のもとを訪れた。ひとつのシーンでの表現について質問をしている。脚本・演出家であると同時に現役の役者でもある山崎が実際に演じて見せると、守乃は安心した表情を見せた。外に出たくない、頑張らないをモットーとして生きてきたと守乃は常に口にしているが、膨大なせりふ量を抱え、演奏の練習もし、不安や疑問はすぐに確認して解消する。その姿には、座組の誰もが触発されるだろうと感じる。
通し稽古開始直前、再演の通し稽古前とは違った「まったく新しいものを作る」というわくわくした空気で稽古場がいっぱいに。その勢いのまま、続編の通し稽古が始まった。
夏の終わりの江ノ島を高校生らしく満喫する結束バンドメンバーのわちゃわちゃ、大きな見どころであるSICK HACK(廣井きくり/演:月川 玲、岩下志麻/演:未結奈、清水イライザ/演:斉藤瑞季)のライブ、そしてタイトルにもなっている文化祭…と、こちらもスムーズに稽古が進んでいく。
漫画・アニメでのライブを実際にその身で体感する。これが本作の楽しみの中で、大きな割合を占めるものだろう。PARTⅠでも、客席はSTARRYとなり、ときには金沢八景の路上にもなったが、PARTⅡはそれ以上。ファン1号(演:山崎里彩)、ファン2号(演:園田 光)と同じ目線で結束バンドを応援もでき、自分たちが「ぼっち・ざ・ろっく!」の世界の住人になったと感じさせてくれるシーンが多く盛り込まれている。
稽古場では映像投影・照明の効果はつかないが、アナログな手法で「それをそのままやるの」とファンから愛のある突っ込みを多く受けるであろうシーンを多く再現していた。アニメ・漫画的な表現を舞台でそのまま見せるのは勇気がいるものだ。しかし本作は、PARTⅠで言えばアイデンティティの水風船を割る、ぼっちツチノコが舞台の上を疾走するなど、あえて「そのまま」やることで、原作リスペクトと3次元の舞台での表現を両立させてきた。PART Ⅱではさらにそれらが多く取り入れられている。2.5次元舞台の入り口として楽しく、見慣れている層にとっても新鮮にうつるのではないだろうか。この表現に、本番が始まったらどのような映像や特殊効果が加わって来るのだろうと、楽しみが増していく。
役者たちの芝居は、1年を経てさらにキャラクターとなじんでナチュラルでありながら深みを増している。そして、圧巻のライブシーンでこの世界へ観客を引っ張りこむ。PARTⅠをもう1度体感し、PART Ⅱの新しい音を浴びることで、座組一同の愛と努力を強く感じるだろう。
「ぼっち・ざ・ろっく!」の世界のライブ会場観客や、体育館に演奏を聞きに来た生徒にもなれる本作。PARTⅡの本編後には、まさに結束バンドのライブに来た観客になれるミニライブが予定されている。ぜひ、再演と続編を両方とも体感してもらいたい。