UKロックのエアポケット「ロビー・ウィリアムス」の自伝映画が作品として名作すぎた / BETTER MAN(ベター・マン)
ロックの本場イギリス。今年42歳の私(中澤)の世代で言うと、音楽マニアの大学生はイギリス音楽を聞くものと相場は決まっていた。しかし、音楽サブスクはおろか、YouTubeもまだ始まってないか設立されたばかりかくらいの時代。
情報源は雑誌とCD屋の視聴器がほとんどで、必然的に影響力が大きいのはそこで取り上げられるアーティストだった。イギリスと言えば、やっぱりオアシスとレディオヘッド。
だけど、今振り返って見ると、同じ時代にイギリスで勝るとも劣らないくらい売れていたアーティストがいる。それがロビー・ウィリアムス。今や伝説だけど全くピンと来ない。いっそ謎。私にとってそういうポジションだったロビー・ウィリアムスを描いた映画が公開されたので観に行ってみることにした。
・あの監督
その映画の名前は『BETTER MAN/ベター・マン』。ひょっとしたら、ロビー・ウィリアムス関係なく、この映画をチェックしていた人もいるかもしれない。なぜなら、本映画の監督は『グレイテスト・ショーマン』のマイケル・グレイシー監督だから。
2017年公開の『グレイテスト・ショーマン』はアカデミー賞で無冠だったことが疑問視されるほど話題になった作品。公開当初は評論家受けが芳しくなかったそうだが、じわじわと客を虜にしていき、2018年の日本公開の頃にはブームになっていた。
・特徴
映画として大きな特徴はミュージカルということ。しかし、ミュージカル耐性のない私でもスッと惹き込まれたことを覚えている。おそらく、心情を歌で伝えるという手法以上に、視覚的な派手さに重きを置かれていたのが分かりやすかったんだと思う。
歌っているうちに人数が鼠算みたいに増えていって、最終的に街みたいな規模になる演出は癖になる壮大な広がりがあった。これが映画館の大画面で見るとなおさらスゴイ。素人でも圧倒されるばかりであった。
で、『BETTER MAN/ベター・マン』にもそういった演出があって、やはり本作も映画館で見る意味のある作品と言えるだろう。だが、本作にはもう1つ非常に特徴的な点がある。
・攻め攻め
それはロビー・ウィリアムスが猿であること。子供の頃サッカーをする時も、アイドルグループ「テイク・ザット」のステージで歌って踊る時も、ロマンティックなシーンも、全部猿。ゆえに、ただの自伝映画というより、監督の作家性がかなり出ている。
それゆえだろうか。ロビー・ウィリアムスという人に興味がなくとも惹き込まれる作品性があった。むしろ、私は本作を見てからロビー・ウィリアムスのwikipediaとネブワースのライブを調べて見たくらい。
・知っておいたら映画がより面白くなる豆知識
背景が知りたくなるのは作品として名作な証の1つではないだろうか。で、後から調べて「知っておいた方が面白く見れるかもなあ」と思った情報がある。これはただの豆知識なのでお伝えしておくと……
ロビー・ウィリアムスとリアム・ギャラガーはよくディスり合いの舌戦をしているということ。そして、リアムとオール・セインツのニコル・アップルトンは2008年に8年間の交際の末結婚している(現在は離婚済み)ということ。
見た人は「あっ」と思うかもしれない。まあ、前述の通り、監督の作家性がかなり出ているので作品内の時系列が現実に沿っているかまでは私では確認できないけれど。このおもろさも本作の醍醐味の1つだと思う。
自伝でありファンタジーでもある不思議な映画『BETTER MAN/ベター・マン』。個人的には、ここ数年の流行りになっていたミュージシャンの自伝映画の1歩先を行った気がしている。そういうところも含めてロビー・ウィリアムスのエンタメ性を感じたのであった。沸かせるねえ。
参考リンク:BETTER MAN/ベター・マン
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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