2日で22%急騰し5000円を突破してきたセイコー株 業績予想の上積み&増配が追い風
セイコーグループの株価が8月13日、前日比8.9%高の5370円まで急伸し取引を終えた。前日も13.7%高を記録しており、わずか2日間で22.6%の上昇となった。14日も取引開始直後から前日終値比150円高と買いが先行している。背景には、今期の通期業績予想の上方修正と増配発表による投資家心理の改善がある。
同社は8月8日、2026年3月期の通期業績予想を上方修正。売上高は従来予想の3120億円から3140億円(前年比3.0%増)に引き上げ、営業利益は225億円から235億円(同10.6%増)、純利益は145億円から155億円(同16.4%増)とした。さらに、年間配当予想を10円増配の120円に変更し、株主還元姿勢を鮮明にした。
今回の上方修正は、第1四半期の好調な決算を受けたもの。4〜6月期の売上高は771億1400万円(前年同期比4.2%増)、営業利益は81億7600万円(同60.2%増)、純利益は63億5200万円(同81.9%増)と大幅な増収増益を達成している。国内売上高は408億円(同3.4%増)、海外売上高は362億円(同5.0%増)と、地域を問わず時計販売が好調だった。
業績を牽引したのは、売上高構成比64%を占めるエモーショナルバリューソリューション(EVS)事業だ。売上高は501億円(同1.9%増)、営業利益は77億円(同29.1%増)と利益率が改善した。「グランドセイコー(Grand Seiko)」や「セイコー アストロン(Seiko Astron)」などのグローバルブランドが世界各地で好調に推移し、銀座の高級店「和光」も集客を伸ばした。「セイコー アストロン」はロサンゼルス・ドジャース所属の大谷翔平選手を起用しており、インバウンド景気に影響を受けにくいブランド力を強化している。
また、精密部品やセンサーなどを扱うデバイスソリューション事業も、医療向け小型電池の需要増を背景に業績を拡大。売上高は163億円(同11.1%増)、営業利益は11億円(同101.1%増)と倍増した。一方、情報ネットワークやデータサービスを担うシステムソリューション事業は、外食チェーン向けオーダーエントリーシステムの需要が堅調で売上高126億円(同4.3%増)と伸びたが、営業利益は9億円(同1.1%減)と減益となった。
今回の決算は、主力ブランドの世界的な販売強化と多角化事業の収益安定が両立した格好だ。市場では「業績予想のさらに上積み」「増配のインパクト」が好感され、株価は心理的節目の5000円を一気に突破。今後も海外高級時計需要と医療分野の部品販売拡大が続くかが焦点となる。