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愛されるパンクバンド!グリーン・デイ「ドゥーキー」来日公演は全曲再現ライブなるか?

Re:minder

1994年02月01日 グリーン・デイのアルバム「ドゥーキー」発売日

祝リリース30周年、グリーン・デイ「ドゥーキー」


1994年、グリーン・デイはメジャーデビューアルバム『ドゥーキー』をリリースしている(インディー時代を含めると通算3作目)。何と今年でリリース30周年。本稿では、ポップパンクの金字塔である本作について掘り下げてみよう。

パンクという音楽ジャンルに、皆さんはどんなイメージをお持ちだろうか? とりわけロックの中でも不良っぽさやメッセージ性の強さ、何だかヤバい感じという印象があるかもしれない。
そうしたイメージは、音楽ファンにとって決してプラスになるとは言い難く、その証拠に全米規模でメジャーブレイクを果たしたアメリカ出身のパンクバンドはグリーン・デイの出現まではほとんどいなかった。

しかし、グリーン・デイがブレイクする少し前にパンクから大きな影響を受けたグランジが世界的に大ブレイク。こうした背景のもと、ポストグランジの期待を背負って、アンダーグラウンドシーンの様々なバンドがメジャーレーベルとの契約を獲得しており、グリーン・デイもこの流れの中でメジャーデビューとなったわけだ。こうして制作されたメジャーでのデビューアルバムが『ドゥーキー』であり、この作品でグリーン・デイはとんでもなく大きな成功を掴んだ。

その音楽性は、ポップでキャッチーなメロディーをスピード感抜群のビートに乗せて演奏するド直球なスタイルが特徴であり、それがバンドの最大の魅力となっている。問答無用の分かりやすさは、アッという間に波及し、今までパンクを聴いてこなかったリスナーにも受け入れられた。これにより『ドゥーキー』は米ビルボードで最高2位まで上昇、今日までに全世界で2,000万枚ものセールスを記録している。しかし、ポップでキャッチーでわかりやすいだけで、これほどまでの天文学的セールスを叩き出せるほどロックシーンは甘くない。では、グリーン・デイはどのように大きな支持を獲得したのだろうか?

パンクのカジュアル化を推進、歌うテーマはティーンの日常


グリーン・デイは、それまでのパンクには希薄だった、ごく普通のティーンネイジャーの日常を歌い、その言動やバンドが醸し出す雰囲気もカジュアルだった。また、本作のタイトル『ドゥーキー』にしても、アメリカの俗語で “うんち” を意味しており、メンバーによると “ラリった勢いで、こんなタイトルだったら面白くね?” というティーンネイジャーの悪ノリ感覚でつけたそうだ。記念すべきメジャーでのアルバムタイトルなのに、かなりいい加減でテキトーなのだ。こうしたカッコつけない自然体なメンバーの親しみやすさが、ポップでキャッチーな楽曲と相まって、これまで体制批判や政治を歌にしてきたパンクロックのハードルをかなり低く設定した。結果としてそれまでパンクを聴いてこなかった新たなファン層を開拓し、大きな支持を得ることに成功したのだ。

そして、この後、グリーン・デイに続いて様々なパンクバンドがメジャーブレイクを果たしていく。特にメロディック・ハードコア、エモ(エモーショナル・ハードコア)といったシーンから登場したバンドたちの活躍は目覚ましく、グリーン・デイが鳴らしたごく普通に暮らす若者の日常を歌った表現やポップで親しみやすいメロディーの影響力は絶大で、パンクは新たな形でアメリカで市民権を獲得したのだ。こうした影響は、ここ日本でも定着し、Hi-STANDARDやELLEGARDENが絶大な人気を獲得している。彼らの表現は、グリーン・デイ以降のパンクが基盤になっており、その影響力の大きさを感じることができる。

自然体のDIY精神こそ90sパンク


さて、パンクのカジュアル化を推し進めたグリーン・デイだが、パンクの過激さや政治的メッセージ、はたまた破滅的なアティテュードに重きを置いた生粋のパンクスたちからは、グリーン・デイはパンクじゃないと揶揄されることも多かった。元セックス・ピストルズのジョン・ライドンもグリーン・デイのことを体制に抗う姿勢がない、パンクの精神がないと批判しており、私のまわりの初期パンク原理主義者の先輩たちからもグリーン・デイに批判的な意見を聞くことが多かった。

でも、どうだろう? そもそもパンクスピリットとは、それまでの主流に対するアンチテーゼや新たな価値観の提示、自分のやりたいようにやるDIY精神であり、特定の音楽のスタイルやファッション、政治信条に縛られるものではないと思うのだ。パンク=反体制・不良性という様式美に縛られている不自由さこそがパンクからは程遠い… という新しい価値観をグリーン・デイからは感じるし、そうした自由な発想の提示こそが、90年代以降のパンクスピリットだと感じるのだがいかがだろうか?

この後もグリーン・デイは、生粋のパンクスからの批判などどこ吹く風とばかりに次々とパンクのポップ化、カジュアル化を推進していく。
しかし、そんな彼らも大人になり、新たな表現を模索し始め、『ドゥーキー』から10年後の2004年には革新的なコンセプトアルバム『アメリカン・イディオット』をリリースする。パンクによるロックオペラである本作は、9分を超える組曲を2曲含み、歌われるテーマも二重人格者の主人公の葛藤を基調としながらも、反戦メッセージを強く感じさせる政治性の強い作品だ。そして、何と名作『アメリカン・イディオット』もリリースから20周年のアニヴァーサリーイヤーを迎えている。

2025年には来日公演を予定、名作再現ライブに期待!


そんなアニバーサリーづくめのグリーン・デイだが、今年の夏は精力的にアメリカでスタジアムツアーを行っていた。そして、来年2月には日本公演を予定している。今回のライブでは、『ドゥーキー』と『アメリカン・イディオット』を全曲再現するというファンにはたまらないセットリストが組まれている。来日公演が、アメリカで披露したようなアルバム再現ライブになるのかどうかは現時点では不明だが、グリーン・デイの長いバンドキャリアの中でも屈指の名盤2枚の再現を期待するファンは多いだろう。是非とも日本でも『ドゥーキー』&『アメリカン・イディオット』の再現ライブを期待したいところだ。

キャリアを代表するアルバムに向き合い、自らのサニーサイドとワイルドサイドを再確認したグリーン・デイ。これから彼らが見せてくれるパンクの新たな景色はどんなものなのだろう?
未だ見ぬ新たなパンクの地平を必ず切り拓いてくれるはずだ。

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