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【鈴木静岡県知事就任1カ月】当選から休む間もなく任期スタート!「経営感覚」を取り入れた鈴木県政、川勝平太前知事時代との違いは?今後の注目点は?

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静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「鈴木静岡県知事就任1カ月」。先生役は静岡新聞の橋本和之論説委員長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年7月2日放送)
 
(山田)今日は鈴木康友静岡県知事の話題です。もう、就任1カ月ですか。

(橋本)そうですね。5月26日が知事選の投開票日でしたので。そのときには既に川勝平太前知事が辞職され、地位が空席になっていました。通常だと、当選してから前の知事の任期終わりまでちょっと期間があるため、選挙が終わって一段落してから任期が始まるという感じですが、今回は休む間もなく、すぐ仕事を始めなければいけないという状況でした。

しかも、知事選が予定より1年早まったので、「よし、知事選に出るぞ」と言って準備する時間もなかったわけですよね。だから就任後は、事務方からはおそらく分刻みでレクチャーがあり、いろいろな人と一気に会わなくてはならない状況で、すごく大変だったと思います。

(山田)だって、初めて知事をやるわけですもんね。

(橋本)加えて県議会が6月19日に開会したので、就任後からそれまでは準備をしなくてはならない上、始まってからはさまざまな答弁を調整するなど、いろんな予定が入っていたはずです。その対応もすごく大変だったと思います。6月28日の定例記者会見で鈴木知事が「あっという間だった」と言いましたが、まさにそういう実感だったんじゃないかなと思います。

「巧遅よりも拙速」を強調

(山田)大忙しだった鈴木知事ということですね。就任のときに、スピード感を強調していたということですけども、この1カ月間を見てみてどうですか?

(橋本)知事になるのは初めてですが、その前に16年間、浜松市長をやられていた経験があるので、この1カ月を振り返ってみると、何事もそつなく円滑に鈴木県政をスタートさせたなという印象です。

6月19日に開会した県議会6月定例会で、知事としての初めての所信表明を行いました。私も傍聴に行きましたが、県政には経営方針が求められると強調していました。それについて示した5項目の一つの中で「巧遅よりも拙速」という言葉を使っていたのが印象に残っています。

市長時代から、「行政にはもっと企業の経営感覚を取り入れなくてはいけない」ということをおっしゃって努力されてきた方ですので、その延長ということだと思います。巧遅より拙速というのは、仕事が巧みで遅いよりも、多少拙くてもスピード感を持って早くやった方がいいということで、それを重視するということだそうです。

この1カ月はこれを実践し、自身としては手応えを感じているようです。

(山田)県政運営には経営方針が求められて、まさに鈴木康友知事が出した「市長は社長」という自著の中でもスピード感ということについてかなり重要視しているという話がありましたね。

リニア問題に早々着手

(山田)この1カ月間、鈴木知事は具体的にどんなことをやってきたかを伺ってもいいですか。

(橋本)選挙のときにも全国から注目されたリニア中央新幹線の問題については、就任するとすぐに、リニア問題に関係する斉藤鉄夫国交相やJR東海の丹羽俊介社長、それから沿線にあたる山梨県の長崎幸太郎県知事などと次々に会談しました。そのすぐ後に、建設促進期成同盟会に出席し、そのほかの沿線都県の知事の皆さんと顔を合わせて、岸田文雄首相にも面会したということです。

川勝さんのときは、リニア推進賛成だと言っていたものの、周囲からは工事を遅らせていると見られて、ちょっと対立ムードというか、微妙な空気だったと思います。そういう雰囲気を変えることはできたんじゃないかなと思います。

(山田)そうですか。

(橋本)担当記者に話を聞くと、県庁の職員の皆さんは、打ち合わせをする際、川勝さんのときに比べると、鈴木知事は面会する時間も短いし、判断も早いと言っているということでした。

(山田)へぇー。打ち合わせ時間も短いんですか。

(橋本)川勝さんはツボにはまると話が長くなるタイプ​だったので、時間が短縮されたということで事務方としてはだいぶやりやすい面があるんじゃないかと思いますね。

(山田)県庁職員の事務方さんたちにとっては社長が変わったのと同じですからね。合う合わないはあると思いますが。なんとなく、この1カ月間、上手くいっているというイメージでいいんですかね?

(橋本)そういう見方もあると思いますが、まだ始まったばかりなので、ここで評価するのはちょっと早いかなと思います。​今の時点では問題がないように見えても、これからいろいろ懸案を解決していかないといけないということです。

リニアについては、6月18日に山梨県側で行うボーリング工事について、JR、山梨県と3者合意というのを結びました。ただ、その後、記者会見したJR東海の丹羽社長の発言と県側の合意内容に関する解釈に齟齬があり、県側が「社長の発言はどういう意味ですか」とJR側に問い合わせるということがありました。

最終的には「認識はやはり共有されていた、合意は大丈夫だ」ということで県が発表しましたが、やり取りの内容を聞いていると、合意の中身が細部まで詰めきれていなかったため、行き違いが起きたのではないかと思われます。

(山田)ちょっとスピード感を重視しすぎて、もうちょっと細かく詰めておいた方が良かったんじゃないかっていう部分があったと。

(橋本)この問題については、難波喬司静岡市長も、先進ボーリングの実施は評価したんですが、その合意の中に入っていた先進坑という「トンネルを掘るためのトンネル」と、本坑という「実際にリニアを通すトンネル」の掘削工事を県境まで進めるという内容については、疑問視しています。

今まで、「静岡の水資源に影響があるので、対策が明確にならないうちは合意できない」ということだったのが、急に合意になったので、水試験に影響がない、あるいはJR側がしっかりと対応してくれるので大丈夫ということであるならば、「それをきちんと説明しないといけない」と苦言を呈しています。

巧遅より拙速と言っても、やはり大井川の水問題というのは、後々流域に大きな影響が出る可能性のある問題ですから、速さを重視するというよりは、きちんと細かいところまで詰めた上で合意してほしいと思います。もしあやふやな点があれば、そこは1回止めてでもはっきりさせるということが必要じゃないかと思います。

新野球場整備は今後の大きな課題に

(山田)川勝さんの流れがあったから、「ここは何とか、いろいろ早めに」という思いがあったのでしょうけどね。他に、これから大丈夫かなと思うことはありますか。

(橋本)今後、焦点になりそうな話題でいいますと、7月2日の静岡新聞1面にも出ていますが、鈴木知事の地元である浜松市に整備が計画されている新野球球場問題です。今後、規模や構造に関する議論が本格化します。特に、ドーム型にするか、屋外型にするかが焦点になっていて、それについて賛否が分かれています。

(山田)だいぶ金額も変わるんですよね。

(橋本)費用も大きく異なるため、どこが適切なところなのか、知事も頭を悩ませることになるでしょう。また、どちらかに決めたとしても、それに反対する人たちが残るので、コンセンサスをどうやって得ていくかはかなり難しく大変な問題ではないかと思います。

(山田)球場の使い道の部分も問題ですね。あとは、どうでしょうか?

(橋本)県議会6月定例会も終盤に入り、7月8日に閉会しますが、選挙で戦った県議会の自民党とどういう関係を築いていくかが課題になるかなと思います。

6月定例会中は割と穏やかで、川勝さんにはだいぶ野次が飛んだんですが、それもなく平穏に進んでいるということです。これから、意見が対立するような問題を進めていくときに、最大会派の自民党とどういうやり取りをしていくのか、どう信頼関係を築いてコンセンサスを得ていくかということが大事になるので、そこはお手並み拝見ということになるんじゃないかと思います。

(山田)ただ、この1カ月間スピーディーにやってきた部分というのは、康友さんがずっと言ってきたことをちゃんとやったな、という評価なのかもしれませんね。これからですね。今日の勉強はこれでおしまい!

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