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極寒の西安で60mの壁画作成! 田村能里子さん

TBSラジオ

ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。

田村能里子さん
1944年、愛知県生まれ。1966年に武蔵野美術大学油絵実技専修科を卒業後、4年間インドに滞在して創作活動に励み、1986年には文化庁芸術家在外研修員として北京中央美術学院に留学。1988年に中国・西安のホテル「唐華賓館」の壁画を手がけたのを皮切りに、中山競馬場、客船「飛鳥」、横浜コンサートホール、名古屋セントラルタワーズ、京都嵐山天龍寺塔頭宝厳院など、のべ59作の壁画・障壁画を制作しています。

JK:田村さんといえば壁画で有名なんですが、初めて会ったのは中国の西安ですね。もう何年になる?

田村:36年前になります。

JK:早いですね~! 私はその当時中国の服装協会の仕事をしてて、その時の紹介で唐華賓館のユニフォームをやりませんかってお誘いをいただいて。冬の寒い時だったわよね。すごいのよ、だって壁画ってまだ建築中のときに描くじゃないですか。

田村:そう、天井から雪は降って来るし、下はまだ絨毯もタイルも敷いてないし。だから筆からアクリル絵の具が分解して、壁画に触ろうと思っても全部ポロポロ落ちちゃうんです。今のようにホカロンがあるわけじゃないので、みなさんは唐辛子を靴の中に入れたり・・・なんとも原始的な話!

JK:暖房もなくて、上の方で足踏みしてましたよね。何m?

田村:9mです。上に上がれるように段がついてて。だいたい壁画の大きさがホテルのロビーの4面ですから。1面が15mで、4面で60m。

JK:どのぐらいかかりました?

田村:1年半向こうにいました。

JK:じゃあホテル開業の1年半前から始めてたってことね。私はほぼできたころに行ったのかしら。

田村:だってジュンコさんはユニフォームだからさ。

JK:従業員とかベルボーイのユニフォームね。かっこよかったんですよ! でも洋服は3~4年で変わるけど、壁画はいいですね~。今でもあるんじゃないですか?

田村:なかなか行けないんですけど、最近写真が送られてきたのを見たら、絵だけはそのまま。私の命よりもずーっと残るでしょうね、建物がつぶれない限り。

JK:うらやましい!

出水:田村さんはどういうルートで壁画のお話がきたんですか?

田村:40代になった時に日本の留学制度で中国に行ったんですよ。もちろん何の知識もないし、言葉もできない。それから中国側の引受人が必要で、探すのも時間かかったんですが、日本人初の中国人留学生として。40歳で留学生というには・・・(^^;)ですが、その時読売新聞なんかに写真つきで載ったんですよ。それを日本人のオーナーの方が見て・・・

JK:ああ、そういうこと!

田村:その方が電話してきて、「中国に行ったら北京だけじゃなくて、西安にぜひ寄ってみてください」って何の説明もなく住所だけ送られてきて。頭の片隅に置いといたんですけど、学校の宿舎で寝泊まりしてるうちに「ここで勉強するだけじゃなく、いろんなところ見て歩きたい」って急にムラムラ湧いてきて(笑)それで北京から汽車で西安に行ったんです。そしたらだだっ広いゴルフ場のような中に1個だけ小さな小屋があって、「日中共同でホテルができるらしいですよ」って。帰国した後に「行ってきましたよ」って言ったら、「あなたに100号の油絵でも描いてもらおうか」って。

JK:最初はそういう話だったんですね。

田村:だけどしばらくしてから、「田村さん、話が変わって壁画を描いてもらうと思う」って! 壁画は初めてだったので、ビックリもなにも! 1mも描いたこともないのに、いきなり60mなんて! どうやればいいのかしら??って(笑)今は新しいホテルに変身して、日本人のオーナーも手を引かれて、壁画は国のもの、市のものになってます。残ってるのは壁画だけ。

JK:よかったですね! ずーっと永遠に残りますね。あれは値打ちだとわかったんですよ!

田村:中国がけっこう喜んでくださって、私も初めてだから寄贈したんです。日中でやることだし、と思って。お国からも特別賞をいただいたんです。それでもっていい加減にできないらしく、大事に取っておかないといけないらしくって(^^;)

JK:改めて行ってみたいです! 日本にとっても、中国にとってもいいことしましたね。

田村能里子素描展「凛とつややかに」

田村:ずっと素描画の個展をやりたかったんです。素描ですから油絵のように色があるわけじゃなく、全部4色のコンテで。180㎝の縦長のものもあったり、モデルを使って描いたり。

JK:全部人物画ですね。モデルはアジア人?

田村:アジア人ですが、60年ぐらい絵の道をやってきて、インドがあり、中国があり。

JK:全部神秘的ですね。都会というより、土っぽい。

田村:案内状もコルク紙という変わった材料ですが、ざらっと素朴な感じ。お洋服だと木綿スタイルですね。それから来年5月ごろ横浜港に就航するクルーズ船「飛鳥Ⅲ」にも4枚大きな絵を入れる予定なんですが、前倒しで早く作っちゃったんです。

JK:まあ、かなり大きそう!

田村:さっきの西安ほど大きくはありませんが(^^;)レストランの入り口に入る予定です。飛鳥はⅠ、Ⅱに続いてⅢも描かせていただきました。

JK:私見たことある! それとホテル椿山荘でも。エレベーター降りたところに飾ってあって、すごく馴染んでるの!

田村:ありがとうございます。あそこはお庭に力を入れているから、お庭よりも出張らないシックな感じにしました。今回の個展は素描が中心なんですが、中央のところに4点の壁画も囲いのように展示します。

JK:一番に見られるってことですね! 楽しみですね~!

田村:ぜひぜひ! 銀ブラのついででいいので(^^)

(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)

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