Yahoo! JAPAN

発売49年!凸モールドが美しいプラレール「初代 東海型急行電車」のその後とは?

鉄道ホビダス

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回はプラレールファンの間で絶大な人気と知名度を誇る「東海型急行電車」にフォーカスします!長年ラインナップに載り続け、プラレールに触れたことがある方ならその姿に見覚えがあることでしょう。今回はそんな「東海型急行電車」の知られざる変遷について迫ります。(編集部)

【写真】歴代「東海型急行電車」の変遷を写真で辿る!

 プラレールのファンの中では圧倒的な知名度を誇る「東海型急行電車」は、1975年に発売されて以来、2020年に絶版となるまで45年間に亘り生産され続けたロングセラー商品です。2023年にはプラレール博などのイベント限定品「165系急行形電車(湘南色)」として、仕様変更の上で再販され、3年ほどのブランクを挟みながらも現役の商品としてラインナップに復活しました。今回は「東海型急行電車」の発売当時の姿と、その後の発展についてご紹介していきます。

▲1975年の発売当初の姿。窓周りは凸モールドだ。

 「東海型急行電車」こと165系のプラレールは1975年に発売されました。当時はまだ箱が身と蓋に分かれている、いわゆる「上下箱」と通称されるものを採用していた時代で、商品名も子供向けのおもちゃであることから平仮名表記の「とうかいがたきゅうこうでんしゃ」とされていました。
 同時期に発売されていた「ちょうとっきゅうひかりごう」「しんだいとっきゅう」が窓周りに帯を塗装するためのモールドを造型していたのとは対照的に、「とうかいがたきゅうこうでんしゃ」では塗装用のモールドがなく、フラットな車体へマスキングを使って塗装を行う工程を採用し、プラレール史上初となる塗り分けモールドが存在しない製品となりました。「しんだいとっきゅう」ではタンポ印刷(シリコンパッドに塗った塗料を塗装面に転写する手法)が採用されていましたが、塗装面の大きい165系ではマスキング塗装が最適だと判断されたものと考えられます。

 モデルは165系ですが、同系式を含む多くの国鉄急行・近郊型電車が同じ前面デザイン、いわゆる「湘南顔」で採用していることで、子どもの「見立てて遊ぶ」力には非常にマッチした製品となりました。発売翌年の1976年には早速113系に見立てた塗装バリエーションが登場しています。それが「近郊形でんしゃふみきりえきセット」に入っていた横須賀色と関西色です。セット名からも分かるように「近郊形」と称しており、明確に165系などの急行型とは切り離して扱われていますが、その姿は実在しない「横須賀色・関西色の165系」そのものです。

▲「横須賀色」と「関西色」のカラーバリエーション(ファンの交流会にて)。

 このセットは約1年程度の生産で終わり、また何故か二色用意されていることからコレクターズアイテムとしての価値が非常に高く、プラレールファンの間ではよく知られた製品となっています。「関西色」に至ってはセットとしてカタログには掲載されていなかったため、たまたまカタログにレイアウト例の車両として使用された1枚の写真のみが情報源となり、ネコ・パブリッシング刊行の「プラレールのすべて」においても詳細不明の車両と扱われていたほどでした。そんな中で約20年前、この車両は有志により「再発見」されたという過去を持ちます。
 これらカラーバリエーションもマスキングで塗装が施され、湘南色と同様に窓周りを塗り分けている横須賀色、窓下に赤いラインを引いている関西色と、塗装用モールドがない車体だからこそ可能な美しい姿が見所です。

 発売から3年ほどが経過した1978年頃、プラレールの塗装工程に変化が起きます。マスキング塗装が廃され、完全なタンポ印刷での塗装へと移行したのです。これに伴い、今までは凸モールドだった「東海型電車」(1976~1987年頃までの単品はこの名称)の車体が改修され、側面のモールドが全て印刷塗装に適した平たいものになってしまいました。
 1990年代も後半になると、再びタンポ印刷からマスキング塗装に戻り、平面モールド化で生まれた凹凸面も全て塗装されるようになりました。本連載でたびたび挙げている塗装技術の向上も反映され、455系がモデルの「急行電車」となったり、同じ「東海顔」を持つ車両に見立てられるという商品展開も行われます。2001年から翌年にかけて展開された「季節の臨時列車シリーズ」では、前面をオレンジ一色にして「153系」に、アコモ改造を施され臨時列車や夜行列車で活躍していた「ムーンライト色」「モントレー色」、そして北海道向けの姉妹車「711系」に仕立てられ、塗り替えだけで表現できる「東海顔」の電車ならではの一面を見せてくれました。「ファーストトライ こん」では、先述の「近郊形でんしゃ〜」のセットを彷彿とさせる横須賀色の2両編成が登場しています。2003年の通常品リニューアルの際には「165系東海型急行電車」と正式に形式名を明記し、塗装も165系に準じたパターンへ正確に塗り分けられるなど、実車の活躍の幅が狭まってからもプラレールではまだまだ現役で頑張る姿が見られました。鎌倉にある玩具店の特注品として「横須賀線」が発売されたのもよく知られています。

 そんな165系も、実車の動向と同様に目まぐるしく変わる車両ラインナップの入れ替わりにより陳腐化が目立つようになりました。しなの鉄道に譲渡され運行されていた車両が引退してからは「2扉の東海顔湘南色」が過去のものになってしまい、発売晩年は「まだ売っているのか」と言われることさえありました。そしてとうとう2020年には新製品に置き換えられ、絶版となってしまいます。
 その後、冒頭でも述べたように2023年にイベント限定品「165系急行形電車(湘南色)」として復活を果たし、2024年9月現在でもメーカー直営のショップで購入が可能です。「湘南色」とある以上、他のカラーリングの登場も期待できそうですが、それでも元は45年以上前の製品。今後はどう展開されるのか、気になる一品です。

【関連記事】

おすすめの記事