介護における接遇マナー&コミュニケーションスキルを解説します!
信頼関係を気づくために介護業界で必要なマナー&コミュニケーションスキルとは
介護の現場では、ご家族や地域の方や医療専門職など様々な人と関わりながら利用者の方を支援しています。マナー・接遇を身に着けると関わりを持つ様々な方々とのコミュニケーションがスムーズになり、円滑に仕事を進めることができるでしょう。
今回は、利用者の方に対するマナーはもちろん、職場の方・利用者のご家族に対して、介護職の皆様が接する際のコミュニケーションのポイントを解説します。
執筆者
羽吹 さゆり
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/7
なぜ介護現場では、接遇・マナーが重要なのか
介護現場へ入職した際に、多くの方々が接遇やマナーの研修を受けられているのはと思います。
そのような研修でも教わったかもしれませんが、まず介護現場での接遇として大切なこととしては、介護現場で接遇・マナーを重んじている理由を理解することです。
「接遇」とは、「応接処遇」の略語です。
つまり、「人をもてなすこと」「応接すること」を意味し、人との基本的な関わり方を指します。
この「接遇」を身につけることは、利用者の方との信頼関係を構築するのに必要不可欠であり、 接遇・マナーは、自分という人間を利用者の方に知っていただく為の、コミュニケーションの手法なのです。
さらに、高齢者介護の現場にはその場に適した「接遇」があります。
自分には全く悪気はないのに、なぜか誤解されてしまったという話をよく耳にします。
それらももしかすると、高齢者への適切な接遇ができていなかったことが原因かもしれません。
例え、悪気がない場合でも、自身のコミュニケーションの手法が相手に悪い印象を与えていると信頼関係の構築は難しくなります。
場合によっては「ケアを拒否されてしまう」といった悪循環まで引き起こすことも……。
あなたが利用者の場合、マナーの良い職員とマナーの悪い職員がいるとすると、どちらの方に支援をしてほしいでしょうか?
おそらく、多くの方がマナーの良い職員を選ぶでしょう。
自分自身が相手の目にどのように映っているのかを知るためにも、接遇・マナーの基本を学んでおく必要があるのです。
介護現場での接遇・マナーのポイント
1日のはじまりは「出会いのコミュニケーション」から
挨拶は「1日のはじまりの出会いのコミュニケーション」です。
この挨拶で相手に良い印象を与えることができれば、その方との今日の「出会いは成功」となり、その方との良い1日がスタートすると言えるでしょう。
一方で、もしも相手に不愉快な気持ちを与えてしまったら「出会いの失敗」になります。
挨拶は無意識にされている方が多いのですが「出会いの基本的な関わりである」という視点で、しっかり意識して行うことが大切です。
利用者の方はこちらのコミュニケーションを五感を通して受け取ります
利用者の方は、五感を通して職員を判断していることが多いと考えられています。
例えば、優しい笑顔や温かい眼差しを視覚から受け取り、優しい声のトーンとリズム・スピードを聴覚から受け取ると、心が満足し、自然に「挨拶や言葉」を交わしてくれます。
無表情で目線も合わせず、声のトーンも低くぶっきらぼうな挨拶を利用者の方にした場合はどうでしょうか? 利用者の方はとても不愉快に感じたり、不安や悲しみを抱くかもしれません。
よく人の第一印象は、数秒で決まると言われます。
私たち人間は言語を使える動物なわけですが、実は言葉よりも、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を通して相手のメッセージを受け取る方が得意なのです。
利用者の方は、介護職員との信頼を五感を通して受け取っているのです。
コミュニケーションは相手の受け取りやすさを重視しましょう
スムーズにコミュニケーションを行うために大切なことは、伝える側が相手の受け取りやすさを意識することです。例えば、信頼できない相手から話しかけられることや介護支援を受けることは、利用者の方の立場では、非常に不安なことだと想像ができます。
よって、顔の表情・視線・眼差し・姿勢・立ち振る舞い方・ジェスチャー・服装は、利用者の方を安心させるように意識することが重要です。
顔の表情としては「笑顔」で、視線は、「あなたに向けて挨拶している」ことを伝えるために、相手の目を見ることが大切です。
また姿勢としては、利用者の方の目線に合わせ、立ち振る舞いは「〜しながら」ではなく、しっかりと立ち止まることを心がけましょう。
服装については、TPOを踏まえ「清潔感・機能性」を意識する必要があります。
このように相手の受け取りやすさを意識することで、利用者の方に安心や信頼が伝わり相手の心を満たすことにつながるのです。
私たちはこのように、非言語(五感)のコミュニケーションのやりとりをしているのです。
逆に言えば、例え言葉遣いが少しくらい上手くなくても、「非言語」での感じられ方が良ければ、印象はそれほど悪くなりません。
しかし、丁寧な言葉遣いをしても声が小さかったり、トーンが低かったり、目を合わせてくれなかったりしたら、どうでしょう…?あまり良い印象は持ってもらえないでしょう。
「言語コミュニケーション」「非言語コミュニケーション」を一致させることで相手に誤解を与えないコミュニケーションをとることができるものの、介護の現場では「非言語コミュニケーション」のほうが重視される場面も多いため、接遇・マナーを意識したコミュニケーションが重要となるのです。
利用者の方とのコミュニケーションのポイント
これまでは、接遇・マナーの重要性についてお話をしてきましたが、ここからは利用者の方とのコミュニケーションを円滑にするためのポイントを解説します。
気持ちが明るくなる言葉、ポジティブな表現を心がける
利用者の方の気持ちが明るくなる言葉やポジティブな表現を心がけることが大切です。そのためには、時には、相手を傷つけないポジティブな言い換えをすることも必要です。
また何かを促す際もポジティブな言い回しを心がけるとよいでしょう。
例えば、利用者の方が「私は動作が遅いから」と言った際「慎重で、丁寧ですね」と言い換えたり、入浴を促す際に「入浴しないと汚いですよ」ではなく「入浴すると気持ち良いですよ」と表現したりするものです。
肯定と共感を意識しましょう
利用者の方との会話で大切なのは「肯定」と「共感」です。
そのために有効なのが「ミラーリング」「オウム返し」というコミュニケーション技術です。
「ミラーリング」は、利用者の方の表情やペース・言葉を鏡のように真似するものです。
人間は自分と同じ仕草や行動をする人に好感を持つといわれ、このようなコミュニケーションを行うことで信頼感を抱いてもらいやすくなります。
言葉の「オウム返し」は、相手の言葉を繰り返すことで「肯定感」を感じさせ、満足感に繋がると言われるものです。
上手に使うことで、利用者の方が介護職員と話をしやすくなるでしょう。
バイステックの7原則
対人援助の基本的な姿勢を示し、利用者の方との信頼関係を築く「バイステックの7原則」を意識するのもいいでしょう。
この7原則とは、以下を指します。
これらを意識して関わることで、信頼関係を構築していきましょう。バイステックの7原則個別化…ご利用者がかけがえの無い唯一無二の存在だと捉える意図的な感情表現…ネガティブな感情も自由に表現してもらい受け止める統制された情緒的関与…ご利用者の感情に引きずられず、自分の感情を自覚しコントロールする話し方をする受容…ご利用者をあるがままに受け止める非審判的態度…ご利用者の考えや行動に良し悪しの判断をせず非難しない自己決定…誘導、命令などをせずにご利用者の自己決定を促して尊重する秘密保持…プライバシーを守り情報を他者に明かさない
ご家族とのコミュニケーションはご家族の気持ちの理解から
利用者の方とご家族が同居しているとは限りません。
同居・近距離・遠距離とご家庭によって状況は様々なうえ、施設入居のような場合もあり、ご家族が抱える負担や不安、悩みも多岐にわたります。
そのため、まず大切なのは、ご家族が抱える負担を理解することです。
その内容によって、介護職員の関わり方も変わっていきます。
負担が大きい同居家族には、特に介護職員からの「労い」が重要です。
言葉掛けをしつつ、しっかりと要望を聞いて、介護職員にできることをご家族に伝えましょう。
「自分を助けてくれる人」として、信頼関係が生まれるでしょう。
また、ご家族様とご利用者本人の関係性に目を向けることも欠かせません。
家族といっても関係性は様々です。長年培ってきたご家族の歴史をとらえていくことが、支援のヒントになります。
同僚・先輩・上司とのコミュニケーションのポイント
職場での人間関係においても、接遇・マナーをベースとしたコミュニケーションスキルが重要になると言えます。
同僚・先輩・上司との上手な付き合い方にも繋がってきますので、そのポイントを押さえましょう。
同僚とのコミュニケーションは高めあう意識を心がけよう
同僚とのコミュニケーションは、先輩や上司との関わり方よりは緊張の度合いも違いますね。
気軽な分、ついついネガティブな話題も持ち出しやすくなりますが、ネガティブな話ばかりしているとお互いがネガティブ思考になってしまう可能性があります。
コミュニケーションをとることで、「仕事がうまく行かない」「つまらない」、しまいには「辞めてしまいたい」という考え方になっては元も子もありません。
ネガティブな話題よりも、お互いを高め合えたり、安心できる会話をしたりできるコミュニケーションを積極的にとるようにしましょう。
そうすることで、一緒に過ごして、「楽しい」「前向きになれる」「もっと一緒に過ごしたい」と思えるような関係になり、お互いが勇気づけ合える良好な関係になれるでしょう。
先輩・上司とのコミュニケーションは誠実に仕事に向き合う姿勢を心がけよう
先輩や上司との関わり方となると、どうしても身構えてしまい、緊張感も高まるかと思います。
どのような関係性でも、絶対に欠かせないのが、業務上での「報告・連絡・相談」の「ほうれんそう」コミュニケーションです。
今は「確認・連絡・報告」の「かくれんぼう」コミュニケーションと言われることも増えました。
相手が先輩・上司であっても、人とのコミュニケーションだということは変わりません。
誠実に仕事に向き合っていることは、日頃の業務に関するコミュニケーションを怠らなければ、きちんと伝わるはずです。
報連相を行う際は、その報連相の目的を考えるとよいでしょう。
目的を考えることで「いつ」「だれに」「どのように」報連相をすることが適切かを検討することができます。
そのなかでも緊急度の高いものは、早めに報連相するようにしましょう。
また報告が遅くなりそうなものは、中間報告を挟むとよいでしょう。
普段から情報にアンテナを張っておく必要もありますが、事前に情報を共有すべき人を把握しておくと緊急時に慌てないため、自分が報連相すべき人を確認しておくことも重要なポイントになります。
まとめ
はじめから、上手に利用者の方やご家族と円滑にコミュニケーションをとれる方はいません。
その上達のためには「接遇・マナー」を心がけることが重要です。
日々、ご自身の接遇・マナーがどうかを振り返り、相手が受け入れやすいコミュニケーションの実現に向けて、改善を積み重ねることでスキルアップしていくことができると思います。
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