【レポート】首都圏屈指の大規模な鉄道工事で何が行われている? 「羽田空港アクセスライン」田町駅での線路切換(2025/4/19-20)
山手線と京浜東北線の一部区間が、4月19日(土)、20日(日)に運休となっています。週末に東京首都圏にいらっしゃれば、少なくない影響を受けている方も多いのではないでしょうか。この運休の裏では、どのような工事が行われているのか、工事当日の様子を取材したレポートと共に、お伝えします。
今回の工事は、JR東日本からアナウンスされているように、東京駅から羽田空港への直通を目指す「羽田空港アクセス線(仮称)」の「東山手ルート」の工事です。
この工事は、羽田空港アクセス線整備事業の中で、最も都心寄り・北側で行われる重要なもので、田町駅付近での第1回目の線路切換工事という、大規模なものになります。
今回の工事で影響を受ける人数(影響人員)は、約54万6,000人と予想されています。この人数は、JR東日本で鉄道をストップして行った工事の中では、歴代5番目という大規模な工事になるそうです。(ちなみに影響人員のトップは、2021年10月に実施された渋谷駅の線路切り換え工事の3回目で、約81万6,000人に影響があったそうです)
東海道線からの分岐を作るための大規模な工事
羽田空港アクセス線は、東京駅では東海道線・上野東京ラインに乗り入れての利用が想定されています。これにより、高崎線・宇都宮線・常磐線方面から東京駅を経由して、乗り換えることなしで直接、羽田空港へ向かうことが出来ます。
東京駅から東海道線の線路を利用して羽田空港方面へ向かう車両は、田町駅の北側で分岐し、羽田空港へ向かう線路「羽田空港アクセス線」へと入っていきます。
そのために、最終的には東海道線の上下線の間に、新しく「羽田空港アクセス線」を敷設するためのスペースを空けたいという事が前提となります。
今回の工事は、最終的な東海道線を移動するためのスペースを作ることを目的として、隣接している山手線外回り(田町駅付近では南へ向かう列車です)京浜東北線南行の2つの線路を、西側に移動するというものになります。
田町駅付近は、東海道線の他にも山手線と京浜東北線の6線が並ぶ区間ですが、元々の田町駅の北側には、山手線の引き上げ線があり、7線が並んでいました。
羽田空港アクセス線のルートを検討していく中、山手線の車両運用などを見直すことで、この田町駅北側にあった引き上げ線を利用せずとも山手線の運行が可能になったといいます。
山手線引き上げ線の廃止が可能になったため、2024年1月には引き上げ線が撤去されました。これに続き、ホームドアの一部が撤去され、今回の工事に備えてきました。
今回の2日間では、下図のように、引き上げ線のあったスペースへの山手線外回りと京浜東北線南行の線路を2線同時に西側へ移設し、山手線外回り側のホームは拡幅、京浜東北線南行側のホームは一部撤去されます。
引き上げ線を撤去した後、その場所には新たな線路が既に設置されており、これは新しく山手線外回りの線路として使用されるということになります。(下図の緑色の事前作業が、既に終わっています)
線路の部分を整理すると、山手線外回りを既に敷設された新しい線路に接続できるように移動する事と、今まで山手線外回りとして使われていた線路を新しい京浜東北線南行線用として移動をする事、京浜東北線南行用に新たな線路を敷設する事が大きな線路切換の作業になります。(線路移動が720m、線路敷設が90mで、合わせて約810mの線路の作業になるそうです)
線路の敷設・移動以外にも、田町駅の北側にある雑魚場通路という線路の下を通る歩道の架道橋桁の移動や田町駅ホームの縮小(京浜東北線南行側)と拡幅(山手線外回り側)という土木工事、電車線(電線や設備)の付け替え、信号装置の改修などを行う事になります。
JR東日本からは、今回の工事で影響を受ける人数(影響人員)は、約54万6,000人と予想されています。この人数は、JR東日本管内の鉄道ストップしての工事の中で、歴代5番目という大規模な工事になるということです。(ちなみに影響人員のトップは、2021年10月に実施された渋谷駅の線路切り換え工事の3回目で、約81万6,000人に影響があったそうです)(画像:JR東日本)
工事現場の様子は?
では、田町駅のホーム上から撮影した写真で、この工事前がどうなっていたのかを見てみましょう。
下写真のように、田町駅のホームに立って京浜東北線南行の線路を見ると、現在は線路が、右側の柵に沿って、まっすぐに伸びて行っている様子が見えます。
今回の工事は、上写真で見えている2つの線路を、2つとも写真左側に、並行に動かすというイメージの工事になります。線路の右側(東側)には仮柵が設置されていて、その柵の向こう側・東側には、東海道線・上野東京ラインの線路が走っています。
次に下写真、隣の山手線外回りの線路を見ると、線路の左側(西側)には、まだ接続されていない新しい線路が敷設されているのが見えます。
敷設済みの新しい線路の上には、工事で使用するであろう資材などが大きな袋に入れられ置かれていますが、この線路が、今回の工事後には新しい山手線外回りの線路として使用されます。(上図の黄緑色部分です)
ホームからこの山手線外回りの線路をよく見ると、線路の下には何かが入った白い袋が敷き詰められています。
ホームの北側部分の山手線外回りに関しては、線路が最大幅で2.1mほど西側へ移動、ホームは最大1.3m拡幅されるようですので、そのための準備が既に行われているのだとわかります。
では、いよいよ工事の最中の様子をご紹介していきます。
4月19日(土)午前の工事現場の様子
工事は、日付が変わった深夜0時台、4月18日の終電の運行が終わってから、作業が開始されたということです。まずは、電車線などの電気系統と、信号設備の工事から始め、線路の移動には朝から取り掛かっていたようです。
4月9日土曜日の9:30の現場の様子(工事現場の西側から)です。
上写真は、田町駅北側の現場付近を、線路の西側から東を向いて撮影したものです。大勢の作業員で、線路の移動とその後の固定作業を行っています。柵の奥が新しい山手線外回りなので、その隣の新しい京浜東北線南行の線路の作業を行っているようです。約90mの区間で、最大1.3mの移動幅があるようです。
下写真で見ると、柵の直ぐ向こうの山手線外回りの線路は、既に新しい線路と、ほぼ連結されているようです。
下写真で田町駅のホームを見ると、作業員が線路を移動しているようです。ホーム北側は最大1.3m程西側に拡幅されるようですが、既に線路は、ホーム端よりも写真手前側(西側)に大きく動いてるように見えます。
現在行われている線路の移動という部分の作業は、4月19日の日中にはおおよそ終わる見込みとのことです、その後は、ホーム仮設設置や、電気や信号関係の工事が行われていく事になります。
今回の工事は、土木・軌道・電気などの各関係会社の作業員約1,000人が関わるという規模だということです。作業は、4月20日(日)の午前11時ごろまで、約35時間にわたって続けられる予定です。
今後の田町駅付近での今後の工事予定
今回の工事が無事に終了した後、田町駅付近での工事としては、まだ大きく2つの工程が残ります。
1つは、③東海道線上りを西側に移設して、上下線間に大きなスペースを空けるという事で、その後に ④羽田空港アクセス線の新設が行われることになります。
東海道線上りの西側移設に関しては、今回の工事で空いた京浜東北線南行のスペースが利用されることになります。
東海道線上り移設後には、東海道線上下線の間に新たなスペースができるため、「羽田空港アクセス線」へつなげるための単線の接続線を作ることになるのですが、スペースの関係でこれ以上の車両を配置する場所の確保が地上では難しいため、トンネルを利用して地下空間に接続線のスペースを作り出すということを行います。このトンネルを掘るための準備作業は、今回の京浜東北線南行の移設作業後から、東海道線上りの西側移設の準備と並行して進められるようです。
現在のところ、今後の東海道線移設工事の時期は未定ということです。
今回の工事に関して、初日となる4月19日(土)午前中時点での工事進捗などをお伝えしてきました。
4月20日(日)は、信号設備関係の作業が行われる予定のため、京浜東北線と山手線の内回り外回り共に、一部の区間で正午までの運休が予定されています。
今回の工事の終了後の様子などを含め、羽田空港アクセス線の全体像などに関しては、改めて別の記事でお伝えしようと思います。
写真・文:鎌田啓吾
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