冬のカヤックフィッシングの【防寒防水アイテム】を徹底解説 上下分割型ドライスーツがイチオシ
寒い時期にカヤックフィッシングに行く際、誰もが頭を悩ませるのがウェア類の防寒対策。今回は、足漕ぎカヤック『ホビー・アウトバック』に乗る筆者のコーディネートを紹介します。
寒い時期のカヤックフィッシング
足漕ぎカヤックのホビー・アウトバックに乗る筆者の、「濡れずに寒くない」を重視したコーディネートを紹介します。
カヤックフィッシングの寒さ対策に「絶対にコレ!」という正解はありませんが、寒い時期も元気に釣りに行くカヤックアングラーの一例として参考になれば幸いです。頭のてっぺんから、足の先まで解説しますので、ぜひ最後までお付き合いください!
釣行スタイル
まず前提として、筆者の釣行条件と、秋冬のカヤックフィッシング用ウェア選びの注意点をお伝えしておきます。
1.冬の朝でもそうそう氷点下まで気温が下がらない、東京湾・相模湾エリアをメインに釣行。
2.なるべく気温が高い晴れた日を選び、風が強いタイミングを避けて釣行。
3.出艇時に膝下まで水に浸かる以外、ほとんど水に濡れない足漕ぎカヤックを使用(足漕ぎカヤックは、パドルから腕を伝ってくる水などを気にしなくてよい)。
4.天候が良ければ、日の出から日没まで海に浮く長時間釣行。
冬のウェア選びの注意点
1.落水時に水を吸って重たくなる素材は着ないこと。
2.カヤック上での動作やロッド操作に支障が出ないよう、着ぶくれを避けること。
3.暖かいだけでなく、汗をかいても不快にならないものを選ぶこと。
4.一般的な釣り用ウェーダーは、落水した際に一気に水が侵入して泳げなくなる可能性が高いため、カヤックフィッシングには流用しないこと。
それでは、上に挙げた条件をふまえて、各部について見ていきましょう。
耳が隠れるツバ付き帽子
頭部の防寒については、それほど難しく考える必要はないでしょう。ニット帽など、暖かい素材の帽子をかぶればOKです。
ただし、日差しやアワセがすっぽ抜けて飛んできたルアーなどから目を守ることを考慮すると、ツバ付きの帽子の方がおすすめです。
意識しておきたいのは、頭部でもっとも寒さを感じやすい耳を隠すことです。あまりに寒いと、耳たぶが冷たいだけでなく、鼓膜まで痛くなってしまい釣りどころではありません。
そのため、耳を隠せるタイプの帽子を選ぶか、イヤーウォーマーを装着しましょう。
アンダーウェア(肌着)
「漕いで移動する」と「漕ぐのをやめて釣りをする」をくり返すカヤックフィッシングでは、保温性と速乾性を両立したアンダーウェアを選ぶことが肝心です。
風や潮にまかせてカヤックを流して釣りをしている時はポカポカ暖かく、移動のためカヤックを漕いで汗をかいてもサッと乾いて冷たくならない……そのような機能をもったアンダーウェアが理想的です。
そんな都合の良いウェアなんかあるの?と疑問に思う方もいるでしょうが、近年の機能性アンダーウェアは素晴らしい性能を備えたアイテムが数多く市販されていますよ。
ミズノ製ブレスサーモ
筆者が厳冬期に着用するのが、ミズノ製のブレスサーモシリーズ。暖かさが1〜5の5段階あるので、自分の釣りスタイルや釣りに行くエリアの寒さに応じて選択することが可能です。
優れた保温性と速乾性に加えて、汗をかくと発熱する機能のおかげで、真冬のカヤックフィッシングでも快適です。
ちなみに、筆者は2番目に暖かい「中厚 for Active」をセレクト。昼間に気温が10℃近くなる日は暑くなって、上着を1枚脱ぎたくなるくらいの暖かさです。
たくさん漕いで移動するアクティブなカヤックアングラーは、もう1段階暖かさレベルを落としても良いかもしれませんね。
普段着とは別モノと考えよう
普段の生活で着ることが多い綿のシャツは、カヤックフィッシングにはあまりおすすめできません。速乾性が低いため、汗をかいた後のヒンヤリした状態が続いて身体が冷えてしまうからです。
いわゆる「肌着」と考えると高価に感じてしまいますが、ロッドやリールと同じく釣りの必需品と考えて、高機能のアンダーウェアを着用してください。
ご紹介したミズノのブレスサーモ以外にも、ヒートテックや光電子、ワークマンの製品など様々な商品が販売されているので、自分に合ったアンダーウェアを見つけてみましょう。
アウターはドライorウェット?
寒い時期に海に入るというと、サーフィンなどで着用するウエットスーツを真っ先にイメージする方が多いかもしれません。
しかし、ウエットスーツは水に浸かっている間は暖かいですが、外気にさらされると寒いという特徴があります。そのため、出艇と着岸時以外ほぼすべての時間を水の上ですごすカヤックフィッシングにはドライスーツをおすすめします。
ドライかウエットかの悩みが解消したとしても、その次に迷うのが上下一体型のフルドライスーツか上下分割型のセパレートタイプかという点です。それぞれの特徴を見てみましょう。
フルドライスーツ
カヤックフィッシングで常に想定しておくべき転覆に対して、もっとも安心できるのが上下一体型のフルドライスーツ。いわゆるツナギのような形です。
透湿防水素材であることに加えて、首もとや手首にピッタリと密着するラテックスゴム製の素材を採用しているので、落水してもウェア内への浸水がほとんどなく、身体が濡れないからです。
ただし、万全に思えるフルドライスーツにもデメリットはあります。それは、簡単に脱ぎ着できないため体温調整が難しいことや、高価格帯の商品であること。
ハードな使用条件に対応できる機能をもつ反面、多くのカヤックアングラーにとって少々ハードルが高いアイテムといえるでしょう。
セパレート型のドライスーツ
フルドライスーツと並ぶ、もう一つのスタイルが上下セパレート型のドライスーツ。上半身側は、ドライトップやパドリングジャケットなどと呼ばれ、フルドライスーツと同様に首もとや手首からの浸水を防ぐ設計のモデルが多いです。
下半身(ズボン)側は、ドライパンツやパドリングパンツなどと呼ばれます。ウエスト部のフィット感の高さと、ベルトを絞りこむことで落水後の浸水をある程度防ぐ構造が特徴。この点が、一般的な釣り用ウェーダーやレインウェアとのちがいです。
セパレート型は、フルドライスーツと相反するメリット・デメリットをもっています。フルドライスーツより落水時に浸水する割合が高めな点はデメリット、気温や運動量に応じて体温調整をしやすいことは大きなメリットといえるでしょう。
筆者はチェストハイタイプを選択
筆者のチョイスは、ズボン型より丈が長めのチェストハイタイプのドライパンツに、上着は防風・撥水・保温性能があるアウトドア用ジャケットを着用。寒ければジャケットの下に薄手のダウンベストを追加します。
足漕ぎのホビーカヤックということもあり、手漕ぎカヤックのアングラーよりも、小型ボートの釣り人などに近い比較的軽装なコーディネートといえますね。とはいえ、アンダーウェア・ベスト・ジャケットに機能性の高いウェアを選んでいるので、暖かさはしっかり確保できています。
チャック付きを強く推奨!
ここで1つ重要なことをお伝えします。それは、「多少高くてもチャック付きを買う!」ということ。寒い時期はどうしてもトイレが近くなるので、チャックの有無で快適さに雲泥の差が生まれます。
とくに、筆者のような長時間釣行派には必須の装備です。同じメーカーのモデルでも、チャックが付くと1〜2万円ほど値段が高くなってしまう傾向がありますが、そこはケチらずにいきましょう。
身体の先端は寒さを感じやすい
気温が低い時、とくにツラさを感じるのが手足の指先など身体の先端部分。秋冬のカヤックフィッシングでも、手足の防寒はキモといえます。しっかり対策しないと、手足の感覚が無くなって釣りどころではありませんからね。
防水ブーツはクロロプレン製を
多くのドライパンツの足もとは、本体とソックス部分が一体になっており、ブーツは別に用意する必要があります。
カヤックを出艇する際は、どうしても膝下くらいまでは水に浸かってしまうもの。そのため、水が浸みてこない防水性のあるブーツが快適です。
ドライパンツのソックス部分が防水であるとはいえ、ブーツに水が浸み込んでいると気化熱によってとても冷たく感じてしまいますからね。
クロロプレン製ブーツがおすすめ
足漕ぎカヤックを使用するアングラーにおすすめなのは、柔らかくて防水性と保温性があるクロロプレン素材のブーツ。カヤック用やマリンアクティビティ用などが売られていますが、柔軟性があってペダルを漕ぐのを邪魔しないので足漕ぎカヤックに向いています。
ちなみに、クロロプレンと並んでよく耳にするネオプレン。実は、クロロプレンとネオプレンは同一素材で、ネオプレンはアメリカのデュポン社の商品名とのことですよ。
DRESSクロロプレンブーツ
筆者が最近手に入れて気に入った製品が、DRESSの新製品「クロロプレンブーツ」。膝下まである丈の長さと防水性の高さ、そして29cmまでのサイズ展開がお気に入りポイント。
カヤック用のブーツはシーズン前に欲しいサイズが売り切れてしまったり、マリン用ブーツはもともと大きめのサイズがラインナップされていなかったりします。
その点、大手釣具メーカーさんが販売してくれると、入手がしやすいので安心感がありますね。もともとカヤックフィッシング専用品ではありませんが、実際に使用してみたところ浸水もなく快適で、寒い時期のカヤックフィッシングにピッタリだと感じています。
ブーツを選ぶ際に一つだけ注意したいのは、1〜2サイズ大きいものを選ぶこと。なぜなら、ブーツが小さいとドライパンツのソックス部分と厚手のソックスが重なる足もとが窮屈になって不快だからです。普段26.5〜27cmのクツを履く筆者の場合、28〜29cmのブーツでちょうどいい感じです。
ソックスにもこだわる
寒い時期のカヤックフィッシングに向いているおすすめのソックスはメリノウール製のもの。「メリノウール」とは、メリノ種のヒツジの毛のことで、履いて暖かいだけでなく蒸れにくく、足のニオイをおさえる抗菌作用もある優れた天然素材です。
筆者は、リトルプレゼンツ製のメリノウールソックスを愛用していますが、最近ではいろいろなメーカーからも発売されているのでチェックしてみましょう。カヤックフィッシングだけでなく、秋冬のおかっぱりの釣りでも使えるので、1足もっておいて損はありませんよ。
グローブもクロロプレン製を
足もとと同様に、グローブも保温性に優れるクロロプレン製がおすすめです。さらに、クロロプレン素材にチタン合金をプラスして性能アップした、タイタニューム製グローブならば寒い日のカヤックフィッシングでもバッチリです。
筆者の場合、ラインの結びやすさとベイトタックルでのサミングのしやすさを重視して、3本指タイプのクロロプレングローブを使用しています。暖かさ最優先ならば5本指、操作性最優先ならばフィンガーレスという具合に、各人の好みやスタイルに合わせて選んでみましょう。
カイロに保温ボトルも
最後に、ウェア以外の寒さ対策もご紹介しましょう。
使い捨てカイロ
魚を蘇生してリリースしたり、血抜きをしたりする際は手が濡れてしまうことがあります。そんなときに冷えてしまった手を温めるには、やはりカイロがあると全然ちがいます。上着のポケットに入れておきましょう。
ただし、足先を温めようとして靴底に入れるタイプを使うのはNGです。足漕ぎカヤックの場合、ペダルを漕ぐのに邪魔なだけでなく袋が擦り切れて破けてしまい、とても面倒なことになってしまいます。
保温ボトルと暖かい飲み物
カヤック出艇前に自販機でホットドリンクを買っても、30分もすれば冷たくなってしまうのが秋冬の時期。
温かいコーヒーやスープなどを入れた保温ボトル(水筒)を持参すれば、カヤックの上でホッと一息つくことができます。熱湯を持ちこんでカップラーメンなども最高です。
砂漠の中のオアシスのように、寒いカヤックの上での温かい飲み物は身に染みるほどのありがたさを感じますよ。ただ、波に揺られて火傷しないように注意してくださいね。
冬もカヤックフィッシングへ!
今回はウェア類を中心にご紹介しましたが、せっかくそろえたウェアも使わなければ意味がありません。まずは寒くてもカヤックフィッシングに出かけることが大事。
「今日は寒いからやめておこう」と布団の中でゴロゴロして後悔するより、しっかり防寒対策してカヤックフィッシングに出かけてみてください。記憶に残る熱い1日が待っているかもしれませんよ!
<福永正博/TSURINEWSライター>