バリアフリー改修に使える補助金や制度|工事内容や費用相場も解説
自宅のバリアフリー改修を行う際、活用できる補助金があります。
現在または将来のバリアフリー改修を考えるにあたって、気になるのは「どんな工事」で「いくらかかるのか」ではないでしょうか。
この記事では知っておくと心強い、バリアフリー改修で活用できる補助金や減税制度について、工事内容や費用の目安とともに解説します。
バリアフリー改修で安心・安全に暮らせる自宅環境をつくるために、ぜひ参考にしてみてください。
バリアフリー改修とは|目的とタイミング
自分や親世代の高齢化にともない、安心・安全に暮らすために必要となるのが住まいのバリアフリー化です。
まずはバリアフリー改修の目的と、改修はいつ・どんなタイミングで行うかを押さえておきましょう。
h3:バリアフリー改修の目的
バリアフリー改修の目的は、安全で快適に暮らせる環境整備のために、自宅をリフォーム工事でバリアフリー化することです。
医療機関から消費者庁に寄せられた事故情報によると、令和3年3月末までの6年間で発生した高齢者(65歳以上)の転倒事故のうち、約半数が住宅で起こっています。
出典「毎日が転倒予防の日~できることから転倒予防の取り組みを行いましょう~」|消費者庁
こうした現状を踏まえ、予防と対策の観点から住宅のバリアフリー改修が推奨されています。
バリアフリー改修のタイミング
バリアフリー改修はけが・病気などで必要に迫られて行うケースと、本格的な改修の準備として行うケースがあります。家全体や水回りのリフォームの際にバリアフリー化に向けて点検や準備を行っておくと、いざというときに工事がスムーズです。
備えることは大事ですが、実際の工事は利用者の状況に応じてプランを立てるため、先走って多くの手すりを設置したり高額な設備を導入したりして後悔するケースもあります。
先を見据えてバリアフリー化に取り組む場合は、手すりを設置しやすいよう壁に下地を入れておく、ドアを変更しやすいよう間口を広げておくなどの準備をしておくとよいでしょう。
また、バリアフリー改修は情報収集や検討に十分な時間を取れないと後悔するケースも多く見られます。費用や活用できる制度、業者などの情報収集は早めに取り組むのがおすすめです。
バリアフリー改修工事の内容と費用の目安
自宅をバリアフリー化する改修工事の種類や費用の目安をご紹介します。
手すりの設置
玄関や廊下、トイレや浴室などに手すりを設置すると、移動や立ち座りの動作がラクになったり、転倒を防いだりすることができます。
手すりは使用する人の身長や動き方に合わせて手すりの太さや形状、設置する位置や高さを決めることが大事です。住宅改修の中では比較的簡単な工事で済みますが、使用者の状態や設置する壁・柱の強度などを確認しながら進める必要があります。
費用は場所や本数にもよりますが、材料費と工事費で数万円で済むことがほとんどです。ただし設置場所に下地が入っていない場合は補強プレートをつけるなどの対応が必要になり、費用も加算されます。
段差の解消
部屋と部屋の間、廊下から各部屋の入り口などの段差をなくして転倒のリスクを防いだり、歩行や車いすでの移動をスムーズにしたりするためのリフォームです。
段差部分にスロープを設置するだけの簡易なものから、レールを撤去する、敷居を低くする、浴室の床をかさ上げするなど、段差の実態に応じたさまざまな工事があります。
費用は段差の程度や場所などにもよりますが、室内間の段差であれば3~15万円程度で解消できるでしょう。
ドアの変更
開き戸を引き戸に変更することで転倒リスクを防ぎ、開閉や通行をスムーズにすることができます。間取りによっては変更が難しいケースもありますが、その場合も開閉しやすいようドアの材質やドアノブを変更することが可能です。
工事内容や材質は工事場所によって異なり、場合によっては間口や壁の工事が必要になることもあります。そのため工事費用も幅がありますが、5~60万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
床の変更
床材を滑りにくい材質やクッション性の高いものに交換し、転倒リスクを防ぐための改修リフォームです。また、畳をフローリングに変更して車いすで走行できるようにするケースもあります。
工事費用は、トイレや廊下など限られたスペースの場合は5~10万円程度です。ただし床材によって金額は変わります。室内など広いスペースの場合は見積もりを取って検討しましょう。
住宅設備の入れ替え
浴室やトイレ、キッチンなどの設備をより安全なものに変更することで、事故やけがのリスクを軽減できます。
以下は住宅設備入れ替えの例です。
・在来工法の浴室から高さが低くヒートショックも起こりにくいユニットバスに交換・和式便器を洋式に交換・タンク付きトイレから空間を広く使えるタンクレストイレに交換・座ったままでも洗い物がしやすい浅型シンクに交換・高齢者が使いやすい高さのシステムキッチンに交換
金額は工事内容や導入する設備によって異なりますが、トイレは10~40万円前後、キッチンは100~150万円前後、浴室は50~150万円前後が目安です。
間取りの変更
車いすでも生活しやすいよう廊下やトイレ、居室を間取りから変更する工事です。生活動線を短くしたり、スペースを広くしたりすることで、スムーズで事故の少ない空間を実現できます。
住宅の構造などによって工事に制限がかかることもあるため、事前に調査が必要です。工事金額の目安は規模によって5~300万前後と幅があります。
バリアフリー改修で活用できる補助金や減税制度
少子高齢化が進み、バリアフリー改修の必要性や需要が高まる中、国や自治体は施設向けの助成制度や住宅向けの補助金制度を設けています。
ここでは自宅のバリアフリー改修で活用できる補助金制度や減税制度をご紹介します。
国の補助金|介護保険の「住宅改修支援制度」
バリアフリー改修で活用できる補助金の一つ目は国の「住宅改修支援制度」です。介護保険制度の要支援・要介護認定を受けている人およびその家族が行うバリアフリー改修に対して、費用の7~9割が支給されます。支給限度基準額は20万円です。
補助金の対象となる工事は以下の通り定められています。
1.手すりの取付け2.段差の解消3.滑りの防止および移動の円滑化などのための床または通路面の材料の変更4.引き戸などへの扉の取替え5.洋式便器などへの便器の取替え6.その他1,2,3,4,5の工事に付帯して必要となる工事
ただし、希望する工事が対象となるとは限りません。事前にケアマネージャーを通して相談・申請して、必要性が認められたものに限られます。
自治体の補助金
自治体もそれぞれの名称でバリアフリー改修を対象とした補助金を設けています。
介護認定を受けていない高齢者も対象となる可能性や、介護保険制度では対象とならない工事にも適用される可能性もあるため、情報を集めてみるとよいでしょう。
ただし、自治体ごとに申請の時期や方法も異なり、予算の上限に達すると終了となることもあるため、早めに相談するようにしましょう。
バリアフリー改修の減税制度
バリアフリー改修工事を対象としたリフォーム減税について、所得税と固定資産税に分けてご紹介します。
なお、減税を受けるには確定申告の手続きを忘れないようにしましょう。
投資型減税
投資型減税とは、「標準的な工事費相当額の10%」と「実額の5%」が所得税から1年間のみ控除される制度で、住宅ローンの利用有無にかかわらず利用できます。以前は「ローン型減税」という制度もありましたが、2022年の税制改正で投資型に統合されました。
高齢者や要介護者本人、またはそれらの人と同居する人が自宅をバリアフリー改修する際に控除対象となります。
対象となる工事や要件は国土交通省の告示などで定められており、介護保険法のバリアフリー改修とは異なるため、注意が必要です。
補助金の交付を受ける場合は、上記の工事費用から交付金額を引いた額が控除の対象となります。
バリアフリー改修に係る所得税額の特別控除|国土交通省
固定資産税の減額
バリアフリー改修工事が完了した翌年分の家屋にかかる固定資産税の3分の1が減額される制度もあります。
適用となるリフォームの工事完了日は、令和8(2026)年3月31日までです。
バリアフリー改修に係る固定資産税の減額措置|国土交通省
バリアフリー改修実績豊富な業者に依頼すると、補助金や減税制度についての情報提供や手続きのサポートも行ってもらえるでしょう。
まとめ:バリアフリー改修の補助金や減税制度を知って、安心・安全な環境づくりに活用しよう
この記事では、自宅のバリアフリー改修に活用できる国や自治体の補助金や減税制度について、工事内容や費用の目安とともに解説しました。
ただし、制度によって要件や対象となる工事、支給額や限度額などが異なるため注意が必要です。いざというときに慌てないよう、補助金や業者の情報収集は早めに行いましょう