夏休みは高波に注意!穏やかな天気でも海辺の散歩で気を付けたい、「土用波」の正体とは?
夏休みに、海水浴や海辺の散歩へ出かける予定を立てている人も多いのではないでしょうか? ですが、この時季は「土用波(どようなみ)」と呼ばれる、古くから夏の土用の頃にやってくる高波に注意が必要です。毎年のように海岸沿いなどで波にさらわれる事故が発生しています。特に台風が日本付近に接近しているときは最新の気象情報を確認するようにしましょう。
海水浴シーズンは「土用波」に要注意!
「土用波」とは、夏の土用の頃に発生する大きな波のことです。「土用」とは季節の変わり目である、立春、立夏、立秋、立冬の前の約18日間のことを指します。特に、「夏の土用」が有名です。猛暑を乗り切ろうとうなぎを食べる習慣のある「土用の丑の日」は、なじみ深いですよね。この時季は夏休みと重なり、海水浴に出かけるなど海辺を歩く機会が増えますが、土用波の影響を受けるリスクがあるため注意が必要です。
土用波が恐ろしいのは、自分たちがいる場所では穏やかな天気なのに、突然大きな波が押し寄せてくるところです。一般的に雨や風が強まる嵐のような天気のときは、海も荒れて波が高くなるイメージがあると思いますが、風が弱くても巨大な波が発生する場合があるのです。さらに、土用波は猛スピードで伝わるといわれ、時には時速50km以上に達することもあります。海岸の風が弱いと油断してしまいがちですが、釣りやサーフィンをしていたり、海岸沿いを歩いたりしていて土用波などの高波にさらわれるという事故が実際に毎年のように発生しているのです。
土用波の正体「うねり」とは?
土用波の正体とは「うねり」と呼ばれる現象で、遠く離れた場所にある台風や低気圧によって引き起こされます。通常、海上で風が吹くと、海面は動き出し波が発生します。この波は「風浪」と呼ばれ、風が強まるほど大きく発達し、風の吹く方向へと進んでいきます。
一方、うねりとは、風浪が徐々に風の影響を受けないところまで進んだ時に残った波のことです。うねりは風浪に比べると丸みを帯びて穏やかに見えるため、一見すると高波には見えないこともあります。しかし、うねりが水深の浅いところ(浜辺や防波堤など陸地に近いところ)に到達すると、海底の摩擦の影響でうねりの前方にブレーキがかかり、うねりの後方が追い付いて急激に波が高くなる性質があります。 このため、うねりによって波にさらわれる事故が起こりやすいのです。
台風がまだ遠くにあっても高波に警戒を
台風の接近時に高波に警戒することは当然ですが、うねりは先述の通り遠く離れたところにある台風や低気圧によってもたらされる現象です。台風などが発達しているときは、日本から離れた場所にある段階から注意が必要になります。
台風の影響はまず、海から現れるといわれており、台風が北緯20度のラインより北上してくると高波に警戒すべきだといわれます。たとえ青空が見えていても大きな波が一気に押し寄せることもあり、そうなるともう逃げ切れません。
また、波の高さは大小さまざまなものがあり、複数の波が重なることで思いがけない巨大な波になることがあります。100回に一度は平均的な波の1.5倍以上、1000回に一度は2倍以上の高波が出現して海岸に打ち寄せる恐れがあるのです。これは「一発大波」と呼ばれる現象です。
台風が離れていると晴れていることが多いため、海辺に出ても大丈夫ではないかと思ってしまいがちですが、波浪注意報や波浪警報が発表されているときは海の近くへ出ることは控えるようにしてください。日本の近くに台風があるときや、天気予報で波に関して「うねりを伴う」という表現が使われるときも要注意です。海辺の散歩や海水浴が楽しい季節ですが、特に台風が多いこの時季は、自分が今いる場所の天気予報だけでなく、最新の台風情報なども確認して安全に配慮しながら楽しむようにしましょう。
文・撮影=片山美紀 TOP画像=写真AC
参考:
気象庁「波浪の知識」 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/wave/comment/elmknwl.html
海上保安庁「宮崎海上保安部ー小型船事故防止のポイント」 https://www.kaiho.mlit.go.jp/10kanku/miyazaki/uminoanzen/kogatasen-point/date/tenpukuziko/kogatasen-point.htm#top
片山美紀
気象予報士
大阪府出身。大学卒業後、放送局での勤務を経て気象予報士、気象キャスターに。街歩きをしながらお天気ネタを探すのが趣味。空を眺めようと上を向きがちです。NHK総合「首都圏ネットワーク」などに出演中。