最高傑作が60年ぶりに東京へ! 特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」が11月30日まで、上野『東京国立博物館』本館特別5室で開催中
鎌倉復興当時の興福寺北円堂内陣の再現を試みる奇跡的な企画、特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」が2025年11月30日(日)まで、上野『東京国立博物館』本館特別5室で開催されている。TOP画像=国宝 弥勒如来坐像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置 撮影=佐々木香輔。
運慶による至高の空間がよみがえる
運慶の仏像が安置される空間をそのまま伝える貴重な例とされる北円堂。その修理完成を記念して、弥勒如来坐像の約60年ぶりの寺外公開が決定した。弥勒如来坐像、無著・世親菩薩立像に加えて、かつて北円堂に安置されていた可能性の高い四天王立像を合わせた7軀の国宝仏が一堂に展示され、鎌倉復興当時の北円堂内陣の再現を試みる。
東京国立博物館 学芸研究部保存科学課保存修復室長の児島大輔さんは、「興福寺北円堂は平家の南都焼き討ちにより全焼しますが、その復興を手掛けたのがおそらく日本でもっとも著名な仏師、運慶でした。本展では、北円堂に残る弥勒如来坐像、無著・世親菩薩立像とともに、いまは中金堂に安置される四天王立像が一堂に会し、鎌倉復興期北円堂を再現します。これは境内をお散歩しても見ることのできない本展だけの企画。運慶による国宝仏7軀による至高の空間を体感できるまたとない機会をお見逃しなく」と見どころを語る。
世界遺産・興福寺北円堂が東京に現る
藤原不比等の一周忌にあたる養老5年(721)8月に元明(げんめい)・元正(げんしょう)天皇が、長屋王に命じて建立させたと伝えられる興福寺北円堂。しかし度重なる災禍に遭い、治承4年(1180)の南都焼き討ち後、承元4年(1210)頃に再建された。現存する興福寺の堂宇の中で最古の建物で、国宝に指定されている。
八角形の円堂である北円堂の内陣には同じ八角形の須弥壇(しゅみだん)があり、本尊・弥勒如来坐像をはじめとする9軀の仏像が安置されている。奈良時代の建築の特徴を残した和様建築の傑作とされ、日本に現存する八角円堂で最も優美な建築と賞賛されている。
また、このときの北円堂の四天王立像は長い間失われたとされていたが、現在中金堂に安置されている四天王立像がそれにあたるという説が支持を集めている。にぎやかな装飾や激しい表情をした四天王立像は、弥勒如来像、無著・世親像とは雰囲気は異なるものの、天平彫刻を基調とした優れた造形から運慶一門の作とも考えられている。
北円堂の弥勒如来像と無著・世親像、中金堂の四天王立像を組み合わせて展示することで再現された本展を通して、運慶一門が生み出した空間を体感したい。
開催概要
特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
開催期間:2025年9月9日(火)~11月30日(日)
開催時間:9:30~17:00(金・土および9月14日〈日〉、10月12日〈日〉、11月2日〈日〉、11月23日〈日〉は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:9月29日(月)・10月6日(月)・14日(火)・20日(月)・27日(月)・11月4日(火)・10日(月)・17日(月)・25日(火)
会場:東京国立博物館 本館特別5室(東京都台東区上野公園13-9)
アクセス:JR上野駅から徒歩10分、JR鶯谷駅から徒歩10分、地下鉄銀座線・日比谷線上野駅から徒歩15分
入場料:一般1700円、大学生900円、高校生600円
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://tsumugu.yomiuri.co.jp/unkei2025/events.html
取材・文=前田真紀 ※画像は主催者提供
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。