【ショパール】ショイフレ親子が語る情熱と成功、そして次の一手
「アルパイン イーグル」誕生の裏には、ショイフレ家3代の物語があった。うちふたりの主人公が語る、コレクション誕生から未来へのストーリー。
textnorio takagi
photographytatsuya ozawa
「アルパイン イーグル」は、現共同社長であるカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏が生み出したアイコン「サンモリッツ」のリデザインである。進言したのは、カール-フリードリッヒ氏の息子カール-フリッツ・ショイフレ氏であった。しかし「アイコンは、壊してはならぬ」と拒否されたカール-フリッツ氏は、祖父カール・ショイフレ会長の助けを借り、秘かにプロトタイプを開発した。
「祖父に相談したとき、喜んでくれました。私が時計を話題にしたのが、初めてだったからです。祖父は、私が時計に興味がないんじゃないかと心配していたそうです」
カール-フリッツ氏は当時を振り返る。それを受け、カール-フリードリッヒ氏は語る。
「おそらく父(カール氏)は、サンモリッツのリローンチを望んでいたのだと思います。ユーザーからの要望も届いていましたしね。そして息子が本気でサンモリッツのリデザインに取り組んでいることがわかり、ゴーサインを出したのです」
開発は、ショイフレ家3代による合議制で進められたという。カール-フリッツ氏曰く「家族なので、半ば言い合いになったことも度々ありました(笑)」。ラグジュアリーウォッチ市場には、数多くのライバルがいる。
「だからジュエラーでもある強みを生かし、ブレスレットを自社製にしたのです。美しい外装と自社製ムーブメント、さらにリサイクル由来のルーセントスティール™などショパールならではコンビネーションで、差別化を図りました」(カール-フリッツ氏)
カール-フリードリッヒ氏はさらに言葉をつなぐ。
「サンモリッツという前身を持つアルパイン イーグルは、トレンドを追って生まれたのではなく、歴史の継承から誕生しました。特にブレスレットは、サンモリッツのデザインを強く受け継いでいます。そうした継続性が市場に評価されたのです」
量産型の自社製自動巻きを主力としたのは、「より多くのユーザーに、アルパインイーグルを届けるため」(カール-フリッツ氏)。そしてより上質を求めるファンに向け、手仕上げが行き渡るL.U.Cムーブメントを搭載したモデルも、2022年からラインナップに加わった。
「このコレクションは、汎用性が高い」というカール-フリードリッヒ氏に、「新たな複雑機構搭載の可能性は?」と尋ねた。
「パーペチュアルカレンダーを準備中です。それもアルパイン イーグルのケースに合わせられる、今までにない、少し変わった構造の設計になる予定です」
早ければ、2025年4月のウォッチズ&ワンダーズで発表予定。これは、楽しみである。
またメティエダールにも注力し、12月にニューヨークで開催されたチャリティオークション「TimeForArt 2024」のためにコレクション初のストローマルケトリダイヤルを備えたユニークピースが製作された。
ほかにも前出のジェムセットモデル「サミット」やチタンモデル、ハイビートモデルなど、「アルパイン イーグル」は、さまざまな可能性を模索している最中だ。
「会長には少し開発を抑えろと釘を刺されています(笑)」(カール-フリードリッヒ氏)
創造力を刺激する「アルパイン イーグル」の誕生のきっかけを生んだカール-フリッツ氏はこう語る。
「祖父母や両親は心配していましたが、私も時計にがぜん興味が湧いてきました。もともと一度好きになると、どんどんのめり込んでしまうタイプ。時計は学ぶべきことが非常に多くあり、興味は尽きません」
ショパールの未来を担う若き才能が、今まさに開花の時を迎えようとしている。
TimeForArt 2024
ストローマルケトリ細工をあしらったユニークピース
現代アートとアーティストを支援するチャリティー ウォッチ オークション「TimeForArt 2024」のために製作されたユニークピースは、ダイヤルをストローマルケトリ装飾で造作。その図柄は、オークションが開催されるニューヨークの摩天楼を飛翔するイーグルの視線を想起させる。マイクロローター式の自社製自動巻きCal.L.U.C 96.17-Lを搭載し、ケースとブレスレットには原料の80%以上をリサイクル由来とする独自のルーセントスティール™を用いた。美しいメティエダールダイヤルは自社製。着色した麦わらを図柄に合わせてひとつずつ手で切り出して寄せることで、唯一無二のダイヤルが生み出される。