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不滅のスタンダード!ジョン&ヨーコの名曲「ハッピー・クリスマス」には元ネタがあった?

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1971年12月01日 ジョン&ヨーコ&プラスティック・オノ・バンド・ウィズ・ザ・ハーレム・コミュニティ・クワイアのシングル「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」発売日(米国)

1971年にリリースされた「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」


ジョン・レノンの歌はテレビやラジオから1年中流れているが、12月に最も流れる曲といえば「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」だろう。ベトナム戦争への抗議楽曲として制作されて、オリジナルはジョン&ヨーコ&プラスティック・オノ・バンド・ウィズ・ザ・ハーレム・コミュニティ・クワイア名義で「ほら、聞いてごらん、雪が降っているよ」をカップリングに1971年12月1日にアメリカでリリースされた。

日本では、“ジョン&ヨーコ(プラスティック・オノ・バンド)” 名義で12月10日にリリースされ、本国のイギリスでは、作詞作曲のクレジットをジョン・レノンとオノ・ヨーコの共同名義としたことで、音楽出版社からソングライティング契約違反とのクレームを受けて揉めたため、約1年後の1972年11月発売になった。

もともとは、1969年12月15日にロンドンで行われたユニセフ主催の『ピース・フォー・クリスマス・コンサート』にジョン・レノンとオノ・ヨーコが招かれた際に、ポスター、ポストカード、看板を作成。ベトナム戦争に対する抗議でもあり、そこに書かれていたのが、“WAR IS OVER!IF YOU WANT IT” というメッセージだった。

1971年9月にジョン・レノンは、政治的なメッセージを含んだアルバム『イマジン』をリリース。各国でチャート第1位を獲得して、シングル「イマジン」もビルボードHOT100で最高位3位にランクインする大ヒットを記録。そこで、同じように政治的なメッセージを含みながらもポピュラリティのあるクリスマスソングを作ることになったようだ。

プロデューサーにフィル・スペクターを起用して、ニューヨークでレコーディング


1971年10月に、オノ・ヨーコと暮らしていたジョン・レノンはニューヨークのセントレジス・ホテルで、アコースティックギターによるデモを1971年10月に録音。早くも同月には、プロデューサーにフィル・スペクターを起用して、ニューヨークのレコード・プラント・スタジオでレコーディング。キーボードのニッキー・ホプキンス、ベースのクラウス・フォアマン、ドラムスのジム・ケルトナーなどが参加した。ギターのヒュー・マクラッケンやスチュアート・シャーフなどは、初参加となった。ニッキー・ホプキンスは、ピアノのほか、チューブラーベルやグロッケンシュピールもプレイしている。

アコースティックギターによるマンドリン風のリフはジョン・レノンの希望で、ジョージ・ハリスンとフィル・スペクターが作ったロニー・スペクターの「トライ・サム・バイ・サム」のようなサウンドを求めて、フィル・スペクターに相談して生まれたものだった。

元ネタがあった「「ハッピー・クリスマス」


さて、この「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」には、元ネタと言われる曲がある。ジョン・レノンがフィル・スペクターにデモを聞かせた際に、ザ・パリス・シスターズ「忘れたいのに」とリズム的に酷似していることを指摘され、レノンもそのことを認めているが、それ以上に似ているのが18世紀に生まれたトラディショナルなフォークソング「ステューボール」だ。

タイトルは1741年にアイルランドで生まれた競走馬の名前で、アイルランドのフォークソングとして歌われた。19世紀には、アメリカに渡り独自のメロディに発展。20世紀に入ると、ウディ・ガスリー、ザ・ウィーバーズ、そしてジョン・レノンが人生最初のアイドルとして称えていたロニー・ドネガンなどがレコーディングを行った。

ただし、この当時のメロディは「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」には似ておらず、元ネタといわれるのは1961年にジョン・ヘラルド&ザ・グリーンブライアー・ボーイズがリリースしたバージョンで、1964年にはピーター・ポール&マリーにカバーされて人気を博した。1966年にはザ・ビートルズと同時期に活躍していたザ・ホリーズもカバーしており、当時の英国ミュージシャンの間でも高い人気を得ていた楽曲だった。

▶ ピーター・ポール&マリー「ステューボール」のコード進行
Ⅰ→Ⅰ→Ⅱm→Ⅱm→Ⅴ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅳ・Ⅴ

▶ ジョン&ヨーコ「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」の前半8小節のコード進行
Ⅰ→Ⅰ→Ⅱm→Ⅱm→Ⅴ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅰ

ここに記したコード進行は、クリシェ部分やパッシング・コードを省いたコード進行で、キーが違うためコードネームではなく度数表記にしている。最後の1小節以外は全く同じコード進行。メロディも極似しているが、「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」は、最初の8小節はAメジャー・キーで、9小節目からは同様のコード進行ながら下属調のDメジャー・キーに転調。さらにその後にカウンター・メロディのコーラス・パートも加わり、オリジナリティを出している。

日本ではオリコンに4週に渡ってチャートイン


シングルは、まずアメリカでリリースされるもキャッシュボックスTOP100で最高36位に留まる。ビルボードHOT100ではクリスマスソングはチャートから除外される規定だったためランクイン無し。ただし、同誌のクリスマス・シングルチャートでは最高3位に達している。アメリカ以外の国で唯一1971年にリリースされた日本では、オリコンランキング最高30位で、4週に渡ってチャートイン。前シングル「イマジン」の最高14位からは順位を落とした。

クリスマスソングのスタンダードのひとつとなった現在からみると、アメリカ、日本とも、いささか地味な順位だが、発売日が12月に入ってからということもあり、クリスマス前のプロモーションが限られてしまったことが、大ヒットに結びつかなかった要因と思われる。ジョン・レノンものちに、“リリースの時期を誤った” と語っている。ただ、約1年後にリリースされたイギリスでは、2週連続第4位を記録。ジョンが急逝した1980年には、「イマジン」に次いで最高第2位を記録して、9週に渡ってチャートに留まった。

その後は、アンディ・ウィリアムズ、ニール・ダイアモンド、ダイアナ・ロス、セリーヌ・ディオン、サラ・マクラクラン、マルーン 5、マイリー・サイラス&マーク・ロンソン feat. ショーン・オノ・レノンなど、多数のカバーも生まれて、現在も歌い継がれている。今年もたっぷりと耳にすることだろう。

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