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あしたの箱

湘南人

真鶴で暮らすひとの生活の中心になっているのは、駅周辺ではなく坂を下り切った港の方。そこから半島の先端に向かって歩いていくと、お林(おはやし)と呼ばれる保安林があり、その手前の海岸沿いに、カレー屋さん「あしたの箱」があります。

2024年8月に真鶴にオープンした「あしたの箱」ですが、前は東京・恵比寿にあった人気チキンカレー専門店。お店を営む店主の松平さんは、お店に育児にと目まぐるしい東京生活を送っていましたが、2018年に真鶴に移住してからは、港町の豊かな食材と環境に触れながら、この土地での新しいカレー作りを模索していったようです。場所を持たない出張式のカレー営業を経て、真鶴に店舗を持つためにクラウドファウンディングを実施し、集まった資金で「あしたの箱」を作りました。

取材の前日からクラウドファウンディングのページを熟読していたわたしは、そのドラマチックなお店の経歴にわくわくし、一体どんなひとが、どんなカレーを作っているのだろうと思いながら真鶴へ向かいました。

海を見晴らせるカレー屋さん

真鶴駅から路線バスに乗り、揺られること7分。琴ヶ浜という海水浴場の前で降りると、すぐに水色の建物「あしたの箱」が目に入りました。海に向きあうように建てられたお店の真隣は昔ながらの干物屋さんで、元はそのオーナーさんが営んでいた食堂を改装したのだそうです。

お店のアイコンが刻まれたガラス戸をあけると、店主の松平さんがにこやかに迎えてくださいました。店内は外から見るよりも広く感じ、海を一望できる窓際のカウンター席や、キッチンに対面したカウンター席、6人がけのテーブル席がありました。

異国の雰囲気のある水色で統一された店内は、元々建物にあったというみどり色の床に絶妙にマッチ。おしゃれだけど昔の建物の風合いも感じられて、落ち着く空間になっています。

スパイスの魔法

今回わたしが注文したのはカレーの2種盛り(1,580円/税込)です。

黒板に書かれたカレーの中から、恵比寿時代からの定番「オリジナルチキンカレー」と「真鶴産アジと冬瓜のカレー」の2つを選び、ごはん少なめでお願いしました。

カウンターに座ると、キッチンの中で立ち動く松平さんの姿がよく見えます。

コンロに着火するところから、熱したフライパンでパパド(インドなどで食べられる豆せんべい)をふくらませるところまでなんでも見えるので、まるで仲の良い友だちの家でご飯をごちそうになる時の気持ちのよう。

松平さんは、棚にずらりと並んだスパイス瓶を手に取り「魔法みたいでしょ」と言いながら、次々と鍋の中に加えていきます。その手つきと広がるスパイスの香りは本当にキッチンの魔法みたいで、思わず目が引きつけられます。

チキンカレー&アジと冬瓜のカレー

出来上がった一皿からは湯気が立ち上がり、ちょっとびっくりするぐらい生命力に溢れた色合いです。松平さんが手で指し示しながら料理の説明をしてくれました。

銀の器の手前が「アジと冬瓜のカレー」、奥側が「チキンカレー」。黄色のバスマティライスを彩るのは、手前から「新生姜を豆の粉で揚げたもの」「ゴーヤの付け合わせ」「ズッキーニのライタ(ヨーグルト和え)」。真ん中のおせんべいが「パパド」。

少し辛いです、と言われていたチキンカレーは、確かに辛いけれど美味しいスパイス辛さ。市販のカレーだと中辛が限界のわたしでも美味しくいただけました。チキンは柔らかくほろほろしていて、ごはんによく合います。

特に美味しかったのが「アジと冬瓜のカレー」です。アジと冬瓜って合うのかな、と思っていたけれど、油とトマトがうまくふたつを繋いで、出汁の効いた滋味深いスープになっていました。真鶴産のアジの身はしっとり、食感を残した冬瓜はしゃくしゃくしていて、このカレーだけでもう一皿食べたい気持ちです。

ゴーヤの苦味、ライタのまったり感、生玉ねぎの食感、新生姜の揚げ物のお楽しみ感……。ご飯の上の副菜を崩しながら、カレーもご飯に混ぜながら食べていると、さまざまな風味の余韻が口の中で響き合って、食べ終わりに向かって味が盛り上がっていくように感じます。

夏バテ気味で「ごはん少なめ」でお願いしたわたしでしたが、フレッシュな野菜とスパイスの勢いでぺろりと完食してしまいました。

真鶴に移住して変化した時間の質

食後に熱々の「本日のチャイ・ミニサイズ(400円/税込)」をいただきながら、真鶴に移住してからの生活をうかがいました。

「東京から真鶴に越してきて、忙しくなくなったかと聞かれたら、忙しさは変わらない。やりたいことがいつもあるから。真鶴には材料が無限にあって、なにを作ろうかなとか、この場所でなにをしようかなとか、やりたいことがたくさん出てきた。変わらず忙しいけれど、真鶴に来てからは働いている時の時間の質が高くなったと思う。」

「あしたの箱」は2025年8月で1周年です。

取材している間も、地元から他方からたくさんのお客さんが訪れていました。「ここを目的にして高知から来てくれたお客さんもいた」と松平さんは話します。

遠方から来るお客さんが絶えないのもうなずけるほど「あしたの箱」はいろいろな種類の豊かさが詰まった宝箱のような場所でした。ここでしか味わえないカレー、チャーミングな松平さん、すばらしい海の眺めのために、わたしもまた訪れたいです。

最寄り駅
JR東海道本線, 真鶴駅

住所
〒259-0201 神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1164

駅徒歩
伊豆箱根バス停「里地」から徒歩1分

営業日
木曜日, 金曜日, 土曜日, 日曜日

営業時間
11:30〜17:00

定休日
月曜日, 火曜日, 水曜日

予約
不明(店舗にお問い合わせください)

受付開始
登録なし

受付終了
登録なし

予算(下限)
1000

予算(上限)
2000

支払い方法
現金

席数
14席

席の種類
テーブル席, カウンター席

席の種類詳細
カウンター3席 テーブル席 窓際カウンター5席

個室
無し

貸切
不明(店舗にお問い合わせください)

喫煙可否

駐車場
有り

最大駐車台数
3台

設備・サービス

コース内容

ドリンクメニュー

利用シーン

アクセス

サービス

お子様連れ
可能

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