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20年以上前から知られていたピグミーシーホースに標準和名提唱!木霊に因み<コダマタツ>と命名される

サカナト

コダマタツと思われる魚(提供:PhotoAC)

タツノオトシゴ属の魚たちは、その独特な姿から魚の中でも非常に人気の高いグループです。本属の魚は意外にも種類が多く、これまでに13種が知られています。

そんなタツノオトシゴ属の中でも、特に「ピグミーシーホース」と呼ばれる通常体長が30ミリ未満の小型種たちは近年、新種や日本初記録種が見つかっている注目の魚たちです。

これまで、日本のピグミーシーホースはこれまでに4種が知られており、そのうち3種には標準和名がついています。しかし、残りの1種Hippocampus bargibantiは20年以上前から存在が知られているものの、標準和名はまだありませんでした。

そうした中、神奈川県立生命の星・地球博物館、高知大学、鹿児島大学総合研究博物館の研究チームは、2010年から2023年にかけて得られた11個体のタツノオトシゴ属をHippocampus bargibantiと同定し報告。標準和名「コダマタツ」を提唱しました。

この研究成果は『Ichthy, Natural History of Fishes of Japan』に公開されています(論文タイトル:ヨウジウオ科タツノオトシゴ属Hippocampus bargibanti Whitley, 1970コダマタツ(新称)の日本国内における分布状況)。

タツノオトシゴ属は日本で13種

タツノオトシゴ属はヨウジウオ科に属するグループで、英語では“Seahorse”とも呼ばれています。

タツノオトシゴ(提供:PhotoAC)

現在、日本のタツノオトシゴ属は13種が知られており、比較的大型になる種としてオオウミウオ、代表的な種ではタツノオトシゴが有名です。大型のオオウミウマでも大きさは25センチ程とタツノオトシゴ属は小型種のグループですが、その中でもさらに小さな魚たちも存在します。

タツノオトシゴ属の中でも小さいピグミーシーホース

「ピグミーシーホース」と呼ばれる魚たちはタツノオトシゴ属の中でも小さく、既知の標準体長が通常30mm未満とされています。現在、世界で8種のピグミーシーホースが知られており、このうち日本では Hippocampus denise、Hippocampus pontohi、Hippocampus japapigu、Hippocampus bargibanti の4種が標本に基づいて記録されてきました。

これら4種のうち、Hippocampus denise、Hippocampus pontohi は2020年に出版された「沖永良部島の魚類目録」で和名が提唱され、それぞれカクレタツノコユリタツノコと命名されました。

ハチジョウタツ(提供:PhotoAC)

Hippocampus japapigu はジャパニーズピグミーシーホース(通称:ジャパピグ)とも呼ばれていた種で、2018年に伊豆諸島の八丈島から得られた標本をもとに新種記載。種小名には愛称であるジャパピグが用いられ、標準和名は八丈島に因みハチジョウタツ、英名はJapanese Pygmy Seahorseが提唱されました。

20年以上前から知られていた魚

今回、新たに和名が提唱されたHippocampus bargibanti は日本で20年以上も前から知られており、ダイバーにより多くの水中写真が撮られていました。また、標本に基づく記録では2012年、2022年、2023年に報告がありますが、いずれも標準和名は提唱されていませんでした。

加えて、これまで Hippocampus bargibanti にはピグミーシーホースのほか、ヒメサンゴタツやバーギバントシーホースなどの和名が使用されてきましたが、いずれも日本魚類学会の魚類の標準和名の命名ガイドラインを満たすものではありませんでした。

木霊に因んでコダマタツ

そうした中、神奈川県立生命の星・地球博物館、高知大学、鹿児島大学総合研究博物館の研究チームは、2010年から2023年にかけて八丈島、高知県、鹿児島県、沖縄県から得られた11個体のタツノオトシゴ属を Hippocampus bargibanti  と同定。

8月4日に出版された論文でコダマタツの新称が与えられました。コダマタツという名は、本種がウミウチワ属やアカザヤギ属の枝の間で暮らす様子が木霊を彷彿とさせることに因んでいるようです。

コダマタツと思われる魚(提供:PhotoAC)

コダマタツの分布は、台湾やフィリピン、ソロモン諸島、バヌアツ、パラオ、オーストラリアなどから知られるほか、日本国内においては八丈島を北限とし、高知県、鹿児島県、沖縄県の水深15~40メートルから標本に基づく記録があります。これ以外の産地からも水中写真でコダマタツが知られているので、実際の分布はもっと広いと考えられているようです。

形態的では吻が非常に短く、眼根状の棘を多数持つことが特徴であるほか色彩は変異があり、いくつかのカラーバリエーションが知られています。

標準和名がない魚たち

今回の研究により、長年存在が知られつつも標準和名がなかったHippocampus bargibantiにコダマタツという素晴らしい名が提唱されました。

本種以外にも存在自体知られているものの、研究が進まず標準和名がない魚は存在します。今後の研究で、それらの魚にも標準和名が付けられていくのでしょう。一体どのような名前が命名されるのか楽しみですね。

(サカナト編集部)

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