ミニストップの新商品「得々にぎり 12貫」が見た目もボリュームもいろいろ規格外 / ひたすら幸福になれるパック寿司
最近、何か買い物をしようとすると、たいてい行く先で物価高が立ちはだかる。どうにも抑圧されているように感じる。しかしそんな閉塞した日々の中で、たまに「羽目を外した」商品に出くわすことがある。どうやら抑圧されているのは「売る側」も同じらしい。
このたび2025年9月9日に発売された、ミニストップの新商品が良い例である。その名も「得々にぎり 12貫」。にぎり寿司が12貫入って税込645円という価格設定は、そこらのスーパーマーケットを寄せつけないどころか、1皿税込110円の回転寿司さえも追い抜かしている。
相当に鬱屈が溜まっていたのだろう。息の詰まるマーケティングやら何やらに嫌気が差して、「もうこりごりだ。たまには意味不明な値付けの商品を放出しなければやっていられない」と思い立ち、まるではしゃぎ回るかのように、ミニストップは寿司をばらまきだしたのだろう。
それならば、同店のヤンチャを受け止めてやるのが筋というものである。あるいは全くの見当違いだとしても、単純に大量の寿司を安く食べたい。
そういうわけで筆者は「得々にぎり」を購入したのだが、実物はなかなかに衝撃的な見た目をしていた。異常なまでに寿司がひしめき合い、かつ異常なまでに整然としている。「ミニストップは独自に寿司工学を研究している」と説明されない限り納得しがたい光景である。
少なくとも筆者は、このようなパック寿司を見たことがない。ミニストップから自宅まで、それなりに起伏のある道を自転車で帰ってきたのだが、寿司同士が緊密に支え合っているため全く崩れていない。「寿司同士が緊密に支え合う」という文言を今後使うかもわからない。
実はこの「得々にぎり」は昨年も販売されていたらしく、その際は恐ろしいことに14貫入りだったそうである。「2貫減ってしまったのか」という落胆を、「今年は少し冷静になってくれたのか」という安堵が上回るから不思議である。
ともあれ、公式サイトを参照しつつネタの種類を確認したところ、内訳は「とろサーモン・トラウトサーモン・焼サーモン・銀鮭・ボイルホタテ・カニカマが1貫ずつ、エビ・イカ・玉子が2貫ずつ」という具合だった。
マグロが入っていない残念さや、玉子2貫で数を稼がれている感は否めない一方、怒涛のサーモン攻勢の脇を固めるように、近頃もはや高級魚になってしまったイカなども充実しているのは嬉しい。
ボリュームや内訳は申し分ないが、肝心の味はどうか。付属の醤油とわさびを小皿に出し、まず最初にとろサーモンをつけて食べてみる。すると確かなクオリティをもって、ネタとシャリは軽々と及第点を飛び越えてくれた。
ほどよく含まれた脂が、柔らかな旨味と滑らかな口溶けを演出する。酢飯は酸味が控えめで食べやすい。いずれも新鮮さは保たれており、一切の違和感なく、すんなり寿司として美味しいと認識できる仕上がりだ。
次いで口をつけたイカも品質に抜かりなく、特有の弾力ある食感を十分に楽しめる。1貫約53円ほどのパック寿司に、このレベルのイカが存在することがつくづく驚きである。
続けざまにエビやその他のサーモンにも箸を伸ばしていき、安定して豊かな風味を素材ごとに堪能した。ほどなくパックの中身を全て空にするまで、箸の勢いが削がれるようなことはなかった。ひたすら幸福感を継ぎ足していって満腹になったような食事であった。
「羽目を外した商品」は、こちらの羽目も外してくれる。もし読者の皆さんの中にも閉塞感を覚えている方がいるなら、この「得々にぎり」に手を出してみることをお勧めする。一時的にせよ、抑圧から解放されるに違いない。
政治や経済など、難しいことはよくわからないが、筆者も皆さんも幸せでいられることを願う。たまにはこういうのどかなことを書いて放出しなければ、やっていられない。
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.