【第48回静岡県高校演劇研究大会 講評など】 「地区大会を踏まえた稽古の成果が出せた」
静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は11月23~24日に菊川市の菊川文化会館アエルで行われた2024年度静岡県高等学校総合文化祭演劇部門・第48回静岡県高等学校演劇研究大会で関東高校演劇研究大会出場を決めた伊豆伊東、韮山の2校の代表生徒の声をお届けする。講師を務めた高橋美沙さん(劇団文化座、富士宮市出身)、久野由美さん(劇団たんぽぽ=浜松市=事務局長)、稲葉智己さん(埼玉県立芸術総合高校演劇部顧問)のコメントも一部紹介する。(文・写真=論説委員・橋爪充)
最優秀賞の伊豆伊東は2023年に3校が統合して以降、関東大会初出場。高校演劇の有名脚本というプレッシャーをはねのけ、テンポのいいせりふのやりとりを貫徹した。クライマックスの漫才まで高いテンションが切れ目なく続いた。校庭の片隅を表現したセットも高い評価を受けた。
▽黒崎希役を務めた飯田紗妃さん(2年)の話
「(出番が)3番目だったのが初めてで、みんなドキドキしていました。私自身は黒崎希といういう役の力を一番出せて、やってやったぞという気持ちでした。今までやってきた稽古の成果も出ていました。地区大会で指摘されたところ(課題)も私たちなりの解釈で変えたりしていて、そこも全力でできたと思います。(関東大会では)勝ちたいという気持ちは強いですが、お客さんを楽しませることが一番。最高の劇にできたらいいと思っています」
▽講師コメント
【高橋さん】舞台の使い方が上手だった。会話に緩急、テンポがあった。早口過ぎたような気もしたが、長ぜりふも最後までエネルギーがあった。1時間があっという間だった
【久野さん】漫才の稽古をしているのが中庭、という設定が面白かった。その装置も完璧で、空の色が変わるのが視覚的にすてきだと思った。会話のテンポで引っ張る芝居に引き込まれた
【稲葉さん】この座組みでこの台本を選んだのが良かった。特に(主役の2人を支える)「本山遥」が話を進める役割としてうまく機能していた。登場人物の豹変ぶりも物語に花を添えていた
韮山は2年連続11回目の出場。高校のミステリ研究部を舞台にした「昔話をしようじゃないか」で優秀賞に選ばれ、優秀賞4校の中から関東大会出場の推薦を受けた。凝った「謎解き」を足がかりに、姉と妹の気持ちが徐々に束ねられていく手際が見事だった。
▽舞台監督を務めた寺西紗良さん(2年)の話
「本当にうれしいです。2年連続で行けるとは思っていませんでした。先輩、親といった日ごろサポートをしてくれる人たちに感謝を伝えたいです。今日の出来は、演技はものすごく良かったが、私自身はプロジェクターのトラブルがあって、みんなに迷惑をかけました。本当に、みんなのおかげ、部員のおかげです。(関東大会に向けて)稽古を積み重ねることはもちろんですが、なれが生じないように注意したいです。新鮮な気持ちを保ったまま関東大会の舞台に立てるよう、演出の精度も含め、全てにおいてレベルアップさせます」
▽講師コメント
【高橋さん】(ミステリ研究部の)4人が生きている感じがした。役として生活しているからそんな空気が出る。そういうところがちゃんと作られていた
【久野さん】始まりの部分が良かった。タイトルに「昔話」とあるが、内容はそれほど「昔」ではない。すごくすてきなお話として受け止めた
【稲葉さん】先生が登場して(4人組の1人の)お姉さんの話をする場面が秀逸だった。妹がどれだけ「嫌」な気持ちになっているかがよく伝わった。演劇的に優れたところがたくさんあった
◆今後の日程
関東(南)大会
開催期間:2025年1月12、13日
会場:神奈川県立青少年センター紅葉坂ホール(横浜市西区)