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【五輪の歴史にみられる変化】長い歴史で初めて参加選手の男女比が五分五分に!「共に」の精神が進む一方、懸念される「第2の五輪」とは?

アットエス

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「五輪の歴史にみられる変化」。先生役は静岡新聞の寺田拓馬運動部専任部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年7月25日放送)

(山田)今日の3時のドリルはやはりオリンピックの話題ですね。

(寺田)いよいよ始まりますね。静岡新聞はパリに記者2人を派遣し、現地に取材拠点となる臨時支局を開設しています。五輪期間中は特別紙面態勢を取り、五輪と一般スポーツの報道を充実させ、定期購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」でも特設ページを開設します。競技はもちろん、競技以外の現地ならではの情報も随時紹介していくので期待していただきたいです。

(山田)楽しみにしてもらいたいですね。

陸上、柔道、卓球、サッカー、自転車…。期待の静岡県勢が続々登場!

(寺田)山田さんは期待の静岡県勢というと誰になりますか。

(山田)ちょっとベタかもしれませんけど、陸上短距離の飯塚翔太選手ですね。

(寺田)先々週、陸上の話をさせていただきましたけど、楽しみですよね。他にも柔道男子に橋本壮市選手もいます。

(山田)橋本選手、すごいらしいですね。

(寺田)32歳なんですよ。五輪代表では日本男子柔道史上最年長になります。

(山田)しかも32歳で初出場なんですよね。

(寺田)そうなんです。同学年に五輪を連覇した大野将平さんがいたので、なかなか出られなかったんです。本当に最初で最後の五輪になるかもしれないので期待したいですよね。柔道は混合団体という種目もあります。ここでは主将を務めることになっているので、個人と団体の2冠を達成していただきたいなと思います。

(山田)頑張ってもらいたい。橋本選手は浜松出身ですよね。

(寺田)あと、卓球の平野美宇選手。リオデジャネイロ大会は補欠、前回の東京大会は団体要員でした。今回、ようやく掴んだシングルスの切符なんです。昨年の国際大会では世界ランク1位の中国選手を破っているんですよ。

(山田)平野美宇ちゃんは強い先輩と強い後輩に挟まれていたイメージがありますね。楽しみだな。

(寺田)もう1回、大舞台で中国選手を破って金メダルに輝くことを期待したいですね。ー

(山田)平野選手は沼津出身ですね。

(寺田)サッカーも競技が始まっていますけど、今回は23歳以上のオーバーエージを使わずに臨んでいます。日本代表としては4大会ぶりのことです。右サイドバックの関根大輝選手は静岡学園出身です。それと、御殿場市を拠点としていたJFAアカデミー福島出身のMF三戸舜介選手。早速、初戦のパラグアイ戦で2得点の活躍をしまして、今後も楽しみですよね。

さらに、ジュビロ磐田の鈴木海音選手も当初はバックアップメンバーだったんですが、けが人が出た関係で登録メンバー入りしたので、これから出番が回ってくるのではないかと思います。彼にも期待したいですよね。

女子のなでしこジャパンにもJFAアカデミー福島出身の4選手が入っていますので、活躍を期待したいです。あとは自転車にも静岡県勢がいます。

(山田)自転車にもたくさん出ているんですよね。

(寺田)静岡県東部は「自転車の街」になっているんですが、ここから13人が出場します。

(山田)13人も!

(寺田)東京大会のときは女子オムニアムで梶原悠未選手が銀メダルを獲得したんですが、自転車競技の県勢は6人でした。今回は出場選手が2倍以上になっています。

(山田)うわー。13人が静岡県にゆかりがあると。

(寺田)日本競輪選手会に所属して静岡県東部を拠点に活動している選手や三島市を本拠地とするブリヂストンサイクリングのメンバーになります。

(山田)全員応援できますね。

(寺田)そうなんですよ。本当に期待したいと思います。静岡県勢はいろいろと見どころがありますが、ここからは木曜日の3時のドリルとして、競技とは別にパリ五輪を考える二つの視点についてご紹介したいと思います。

五輪憲章のモットー実現へ男女混合種目が増加

(寺田)パリでの五輪開催は100年ぶり3度目ですが、長い五輪の歴史で今回が初めてというトピックがありますが、ご存じですか?

(山田)今回が初めて?う〜ん、競技としてブレイキンが採用されたとかではなく?

(寺田)それもありますが、今回初めてというのは、参加選手の男女比が五分五分、つまり同数になるということなんです。

(山田)へぇー、そうなんですか。

(寺田)2021年の東京大会から加わった五輪憲章のモットー覚えてますか?以前ご紹介しましたが、「より速く、より高く、より強く」、そして?

(山田)「Together(共に)」でしたね。

(寺田)スポーツには多様な価値観があり、共生社会の礎をスポーツがつくるという考え方から、男女混合の種目が増えましたよね。東京大会では7競技で新設され、卓球では静岡県勢で共に磐田市出身の水谷隼選手、伊藤美誠選手が混合ダブルスで金メダルを取りましたよね。パリ五輪ではさらに男女混合種目が増えるんです。

(山田)そうなんですね。

(寺田)先日も話ししましたが、女性が主体だったアーティスティックスイミング、昔のシンクロですが、これも男子選手が団体に加わってきます。リフトの土台が男子選手になるなど、男性と女性の力を融合して独自の技を見せていくことになります。

(山田)そうか。男女が五分五分になったのは初めてなんですね。

(寺田)ちなみに100年前の五輪の女子選手の割合はどれぐらいだったと思いますか?

(山田)どれぐらいでしょう…。今回が五分五分でしょ。20%ぐらいかなぁ。

(寺田))実はわずか4%でした。

(山田)4%!ほぼ男子ですね。

(寺田)競技によって女子アスリートの環境はまだ整ってない種目もありますし、スポーツにおいて男女が全く対等とはまだ言えないと思いますが、「共に」という五輪憲章のモットーの下、男女平等を目指して100年掛かってここまで来たんですよね。

(山田)ようやくその「共に」が実現できるオリンピックですね。

(寺田)静岡県勢で言ったら、競歩の新種目、混合団体にも注目です。川野将虎選手(御殿場南高出)が出場し、男女がペアで42.195キロを交互に歩くんです。男子選手がまず11.195キロ、続いて女子選手が10キロを歩きます。そこから男子選手が再び11キロ、最後にまた女子選手が10キロと交互に歩いて競うという種目です。

(山田)リレーなわけですね。

(寺田)どんなドラマが生まれるか、楽しみですね。

国際大会から除外されたロシアが「第2の五輪」を開催?

(寺田)もう一つは暗い話になります。「第2の五輪」に警戒感が高まっているという話はご存知ですか?

(山田)「第2の五輪」への警戒感?どういうことですか?

(寺田)五輪は「平和の祭典」と呼ばれますよね。パリ大会開幕1週間前から国連が決議した「五輪休戦」期間に入りました。しかし、ロシアが侵攻したウクライナの戦火も、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザでの戦闘もやむ兆しはないですよね。戦争以外にも、世界各国でさまざまな「分断」が広がっています。

古代ギリシャの時代からずっと五輪期間中は「オリンピック停戦」を大部分は忠実に順守してきたし、1993年からはこの「聖なる停戦」の意義を現代に形あるモノとしてつなげようと、国連で五輪前年に満場一致で休戦を決議するのが慣例になりました。しかし、強制力はなく、ロシアは今回、最終的に国連での投票を棄権したんです。

(山田)そうなんですね。

(寺田)ロシアは過去にも2008年北京大会時にジョージアを攻め、2014年のソチ冬季大会時にもクリミア半島を併合し、これまで2度、休戦違反を犯しています。そんなロシアの選手がパリ五輪に出場できるのかどうかはご存知ですか?

(山田)確かドーピングのときと同じようにロシアとしては出られないんじゃないかな。

(寺田)国としては出られません。国際オリンピック委員会(IOC)はロシアのウクライナ侵攻直後、ロシアとベラルーシを国際大会から除外することを決めたんですが、選手個人に関しては①戦争を支持しない②軍や治安機関のクラブに所属しない、支援も受けないというアスリートには「中立選手(AIN)」として五輪予選への参加を認めました。IOCの審査を経てロシア人選手は15人がパリにエントリーできました。

一方、IOCはパレスチナ問題には介入しない姿勢なんです。これには意見が分かれるでしょうが、基本的なスタンスとして選手個々について審査し、戦争に賛成しない選手には五輪出場の道を開くという考えは公平ではないかと思います。

選手にとって五輪は一生に何度もチャンスがあるわけではない大舞台なので、一定の理解を得られるのではないかと思います。もちろん侵攻を受けているウクライナの人たちは複雑かもしれないないですが。ただ、ロシアがどう考えているかがポイントです。

(山田)ロジア自体がですか。

(寺田)ロシアはいま説明したような一連の処置を政治的だと反発し、柔道やレスリングの国内連盟は五輪不参加を打ち出しています。さらに、プーチン大統領は友好国の選手を招き、五輪に替わる国際大会「フレンドシップ・ゲームズ」を開くと言っているんです。

(山田)自分たちで違う五輪をやろうということですか。

(寺田)これが「第2の五輪」になったら、世界のスポーツ界は「パリ」と「ロシア」に二分されてしまいます。

(山田)IOCの措置がどこが悪いのか僕にはわからないんですが。ロシアの中立選手たちには個人としてきちんと機会を与えてるのに。

(寺田)ロシアにすれば、五輪は国威発揚のための機会だと捉えているので、国として参加できないというのは全く賛成できないという立場なんです。

(山田)へぇー。これが「第2の五輪」問題ですか。

五輪観戦で「平和」に思い巡らせよう!

(寺田)一つ目の視点で申し上げた男女平等という面では、国際社会は確実に進展していると思います。でも、「平和」という面で人類は古代から何も進化していない。むしろ今、核兵器の使用が取り沙汰されるなど、大きな危機を迎えていると言ってもいいと思います。

世界の若者が一堂に集まり、競技を通して相互の理解と友情を育み、結果的に平和を招く。これが五輪の理想像だと思うんですが、今回のパリ五輪は戦争と"同居する"平和の祭典と言わざるを得ないんですよね。

(山田)スポーツは何が楽しいかというと、ルールがあるからだと思うんですよね。寺田さんもこのコーナーでよく話してくれますけど、ルールの中でやるものですよね。五輪のルールを守れない国が出たときに、僕は「それは参加できないでしょう」と思ったりするんですけどね。

(寺田)そうなんですよね。そういうことで中立選手という基準が作られたんですが、ロシアのプーチン大統領は「それだったらいいよ。もう最初から参加しないよ。別に第2の五輪をつくってやるからいいよ」という感じになってしまっているんですよね。

スポーツ自体に戦争を止める力はないかもしれないですが、理想と現実のはざまで「より速く、より高く、より強く、そして、Together(共に)」という五輪憲章のモットーに則って、パリで活躍するアスリートに声援を送りながら私たち一人一人が平和の実現を改めて願うことで、あらゆる分断を乗り越えるきっかけをつくれたらと思います。

(山田)そうですね。今回の寺田さんの話を聞いたうえでパリ五輪に注目すると、何かまた違った目線で興味深く見ることができるかもしれませんね。

(寺田)アスリートの姿から感動をもらいながら、平和への思いを皆さんに考えていただけたらなと思います。やはり平和でないとスポーツはできないので。

(山田)そういうことですね。にわかでもいいと思うので、僕は「頑張れニッポン」とみんなで応援して、平和を噛み締めたいですね。

(寺田)そういう機会にしていただきたいと思います。

(山田)まずは楽しんで観戦していきたいと思います。今日の勉強はこれでおしまい!

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