映画『仮面ライダーガヴ お菓子の家の侵略者』知念英和さん×日野友輔さん×宮部のぞみさん×庄司浩平さんインタビュー|“辛い過去”を乗り越えていく仮面ライダーたち。このメンバーで『仮面ライダーガヴ』という作品を作ることができてよかった
2025年7月25日(金)より、映画『仮面ライダーガヴ お菓子の家の侵略者』が全国公開されます!(映画『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー 復活のテガソード』と同時上映)
TVシリーズもクライマックスに突入している『仮面ライダーガヴ』。映画ではショウマが“おカシ”な世界へ! タオリン(演:中島颯太)と呼ばれる謎の青年と出会ったショウマは、新たな敵との戦いに巻き込まれていきます。
アニメイトタイムズでは、映画公開を記念して、ショウマ/仮面ライダーガヴ役・知念英和さん、辛木田絆斗/仮面ライダーヴァレン役・日野友輔さん、甘根幸果役・宮部のぞみさん、ラキア・アマルガ/仮面ライダーヴラム役・庄司浩平さんらメインキャスト4名のインタビューをお届け!
今作の見どころはもちろん、『仮面ライダーガヴ』の撮影を通しての1年間の成長を語っていただきました。
【写真】映画『仮面ライダーガヴ』知念英和×日野友輔×宮部のぞみ×庄司浩平インタビュー
1年間の集大成となる映画に向けて
ーーいよいよ『仮面ライダーガヴ』の集大成となる映画が公開されます。映画の撮影にあたって、杉原輝昭監督と相談したことはありますか?
ショウマ/仮面ライダーガヴ役・知念英和さん(以下、知念):映画の撮影に入る前に、杉原監督と二人でご飯に行って、「お互い納得のいく作品にしよう」というお話をしました。
杉原監督は『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』を撮られた時、「すごく満足した」とおっしゃっていたんです。僕自身も『仮面ライダーゼロワン』が大好きで、思い入れのある映画だったので、それを超えるような作品にしたいと思いました。
個人的には、今回で劇場版は二回目の出演になります。『仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク』から、「遂に『仮面ライダーガヴ』の映画をやるんだな」って。今までにないくらい、台本を読み込みましたし初めて共演するFANTASTICSの皆さんについても、いっぱい下調べしました(笑)。夏映画はクランクインする前に、準備したことがたくさんありました。
ーーFANTASTICSの皆さんとの撮影はいかがでしたか?
知念 :実際にFANTASTICSの皆さんとお話させていただいたら、想像以上に優しくて気さくに話しかけて下さってすぐに馴染めました。先日、世界さん(FANTASTICS)の舞台も拝見したんですけど、役者としてもすごく存在感があって多彩な方なんです。一緒にいるだけで、色々な刺激をいただいた気がします。
辛木田絆斗/仮面ライダーヴァレン役・日野友輔さん(以下、日野):監督からは「本編とのギャップを提示したいから、カッコよくならないように」と言われていました。ただ思い返してみると、現場で他のキャストが「もっとカッコよく」と言われているのは目にしていたんですけど、「そう言えば、絆斗は1年間で一度も言われたことないな」と気づいて(笑)。
ラキア・アマルガ/仮面ライダーヴラム役・庄司浩平さん(以下、庄司):言わなくてもいいってことじゃない?(笑)
日野:素でカッコいいって?(笑)。冗談はさておき、僕自身「カッコよくしよう」と思って絆斗を演じたことがなくて。その飾らない感じは、自分と絆斗の共通点でもあると思ったんです。
絆斗を演じるうえでのセットポジションに気づくことで、どこまででも幅が広がると思っていたので、より一層楽しむ心を持って撮影に臨みました。
甘根幸果役・宮部のぞみ(以下、宮部):監督と相談した時に印象に残っているのは、衣装合わせの時に「うん、幸果は幸果だ!」とだけ言われたことです。
私自身は、今までの幸果と別の世界の幸果を演じることに対して、「どうしよう……」と思っていて。その時は「えー!それだけですか?」と思ったんですけど、よく考えてみたら幸果は本当にどこにいても幸果なんですよね。どんな状況に置かれても、明るくポジティブで、誰に対しても変わらないあの優しさを再確認できました。
庄司:僕はクランクインした日に、それぞれの世界でセリフの整合性が取れているかみたいな相談をしていました。「異世界ではこうなるから、いつもの世界はこうした方がいいですかね」とテクニカルな話をしようと思っていると、杉原さんが「あ、異世界は好きにやっていいよ」って。それで言われた通り、好きにしたんですけど、何故か反応があまり良くなくて……映画の公開が不安です(笑)。周りの子供たちの反応にヒヤヒヤしながら、僕も映画館に観に行きたいと思っています。
映像のポップさとビターなストーリー
ーー今作の脚本を読んだ際の印象をお聞かせください。
知念:今回の映画は、親子の物語でもあるんです。TVシリーズではショウマのお母さんが亡くなって、そこから物語がスタートするんですけど、異世界はお母さんが生きている世界線。脚本の香村純子先生が、TVシリーズでは描かれなかった親子愛やショウマの母親に対する感情をたくさん描いてくださいました。異世界であっても、ショウマにとっての救いになるシーンがたくさんあったんです。
日野:『仮面ライダーガヴ』は「お菓子」がモチーフの仮面ライダーで、ポップなイメージで見られますが、その一方で重たいストーリーを描いています。
映画の脚本を読んだ時、率直に「今回もかなりしんどい物語だな」と感じました。ただ、それを乗り越えていくのが、「仮面ライダー」としてのカッコよさなんです。FANTASTICSさんの出演も含め、TVシリーズに増して色々とパワーアップしているので、予想外な展開の連続を楽しんでいただきたいと思っています。
宮部:別の世界というものが、違う道を辿った世界線だからこそ、皆の性格も違っていて。逆に「本編での出来事が、彼らをこんなに変えたんだな」というのがすごく分かると思います。2つの世界の皆を見比べてみてほしいです。
庄司:友輔も話していましたけど、『仮面ライダーガヴ』はビターで重たいストーリーと変身後の色合いのポップさ、その対比が面白いと思っています。そういう意味で、今回の映画では戦うシーンだけでなく、全体的な映像のポップさも楽しめるポイントなのかなと。例えば、エキストラとして参加してくださったTTFC(東映特撮ファンクラブ)の皆さんも、すごくカラフルな服を着ていらっしゃいました。加えて、ショウマはお城などの本編では見たことのないロケ地にも行っていて。映画全体に『仮面ライダーガヴ』らしい、映像としてのカラフルさが反映されていると思います。
知念 :今回はロケーションにもこだわっていて、スケールがすごく大きいです。僕とタオリンのシーンで言えば、「こんな場所をどうやって見つけたの!?」と思うくらい、本当の楽園みたいなところで撮影したので、映像を見るだけでもすごく面白い気がします。
ーー今までにないロケ地が多かったんですね。
知念 :初めて行く場所だったんですけど、「いっそ飲み込まれてみるのもいいかな」と思って。もちろんショウマとしては地に足を着けて立っていますが、目の前の光景や流れに身を任せることも意識しました。
「知らないことを怖がらない」もう一つの世界の演じ分け
ーー別の世界の絆斗は配達員になっているようです。
絆斗 :「そんな服で配達するの!?」というくらいカラフルな衣装でした(笑)。ただ、 あの世界では「あれ?エキストラさん?」と呼ばれて、いじられるくらい馴染んでいましたね。本筋のストーリーとは別でスポットが当たるシーンもあるんですけど、そこでは特に「カッコよくならないでください」と言われていました。
庄司:他にカッコいい人がいるからね(笑)。
日野:全体的にどれだけ面白く情けなくできるか、みたいなオーダーが多かったので、とても楽しかったです!
ーー庄司さんは、二役の演じ分けで意識されたことはありますか?
庄司:ラキアが知り得る部分以外は知りたくなかったので、ショウマが出ているシーンをあまり読まないようにしていました。すると、全然状況がわからないんですよ。「俺は何でここにいるんだろう?」みたいな。でも、多分それでいいんですよね。知らないことを怖がらなくていい。
やっぱり1年間やっていると色々な情報が溢れていて、時代的にはSNSの声も結構入ってきちゃうんですよ。意識していなくても自然とそっちに寄っていくことがあります。
そんな中で、別の世界の皆はフラットに情報がなくて、「あなた方は何も知りません」というところに立たせてもらえる面白さがありました。だからこそ、「知らないことを楽しもう!」という気持ちで撮影に臨んでいた気がします。
ーー実際に別の世界のラキアを演じてみていかがでしたか。
庄司: 衣装がやたらとカッコいいんです。ビジュアルが異様に良いこと以外、別の世界のラキアはあまり良いところがないので(笑)、とにかくビジュアルを見てください。
知念:あのギャップはすごかったね(笑)。
宮部:別の世界の幸果もショウマと出会っていないだけで、いつも通りの誰にでも分け隔てなく優しく接する、みんなを見守る存在です。
幸果の良いところは別の世界でも変わってない。個人的にはそれがすごく良いなと思っているので、安心して見ていただきたいです。
ーー別の世界の幸果は、タオリンとの絡みも多いですよね。
宮部:本編でのショウマと幸果みたいに、別の世界ではタオリンと幸果が「はぴぱれで仲良く過ごしてきた」という設定なんです。撮影前は「ここまでやってきたショウマと同じくらい仲良くお芝居できるかな?」とちょっと不安だったんです。
でも、中島さん自身が明るくて、すごく面白い方なので、すぐ心を開いて気軽に話せるようになって。あまり苦労はなかったんですけど、タオリンと幸果が一緒にいる世界にショウマがやってくるシーンでは、ショウマが「自分の居場所がタオリンに変わっている」という戸惑いや切なさを感じるんですね。なので、撮影が終わった後に「ショウマごめんね」って申し訳ない気持ちになっていました。その切り替えはちょっと難しかったです。
ーーショウマにとっては切ないシーンですね。
知念:寂しかったです。段取りの時に杉原監督から「お前の居場所にはタオリンがいて、今の「はぴぱれ」に居場所はないんだぞ」と言われて。その悲しい気持ちを大切に演じようと思いました。台本には書かれていない描写でしたが、杉原監督が寂しさを感じるように演出したかった部分でもあるのかなと感じました。
宮部:立っているだけなのに、すごく寂しさが伝わってきて。そのおかげで意識せずとも新鮮な気持ちで演じられた気がします。
ーーショウマとタオリンの関係性にも注目ですね。
知念 :ショウマとタオリンの二人三脚で物語が進んでいきます。いろいろ撮影した中でも、特にタオリンが決意を固めるシーンは中島さんとたくさん話し合って作り上げたシーンでもあります。タオリンの決意の表情は、僕もすごくグッときたので、ぜひ皆さんにも注目していただきたいです。
クライマックスに向けて、進化する仮面ライダーたち
ーーTVシリーズでは、ストーリーの盛り上がりと共に仮面ライダー達もパワーアップを遂げていきました。ご自身の仮面ライダーの気に入っている部分や思い入れを教えてください。
知念:ガヴのフォームはそれぞれ長所と短所がある中で、最強フォームと謳われている「オーバーモード」「マスターモード」も、ただ最強なだけじゃないんです。
フォームが更新されるごとにどんどんパワーのインフレが起きるからこそ、「それ以前のフォームを使わなくていい」みたいな状態になることもあると思います。でも、ガヴでは新しい力を手に入れても使いこなす努力が必要で、変身したら終わりじゃないところを描いているのがすごく好きです。
「オーバーモード」はコントロールが難しいけど、パワーはすごく強い。「マスターモード」はスピードが速いけど火力はオーバーには劣る。ショウマもふたつを使い分けて戦っていますけど、そういう完璧じゃない部分に男心をくすぐられますね。全体的にパワーバランスが取れているのがすごくいいなと。
ーー「お菓子の家」をモチーフにした映画限定フォーム「仮面ライダーガヴ ヘクセンハイム」の活躍も楽しみです。
知念:デザインを見た時「こうきたか!」と思いました。というのも、「お菓子の家」というワードからは想像できないようなカラーリングとデザインなんです。CGや演出が加わった時に、「どんな風になるんだろう?」とすごく楽しみにしています。
これまでにも色々なフォームが出てきましたけど、毎回秀逸なデザインじゃないですか。今回も皆さんに気に入っていただけるようなデザインになっていると思います。個人的にはメロンみたいな網っぽいデザインが新鮮で、すごく気に入っている部分です。
ーー第28話より登場している「仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム」は、ショウマとの友情も感じられるフォームだと思います。
日野:やっぱり「フラッペカスタム」になるまでの経緯に全てが詰まっているというか。「フラッペ一郎・二郎」の二つに分かれるゴチゾウも初めてだったので、新鮮でした。
知念:生み出した俺もビックリだよ。まさかあんなに喋るとは(笑)。
日野:関西弁だし(笑)。ショウマが絆斗を思って産んだゴチゾウだからこそ、ヴァレンのマークが浮かび上がっているところは気に入っています。「フラッペカスタム」にパワーアップした時に、時間制限でアイスが溶けちゃうというのも面白いですね。
ーーヴラムは「仮面ライダーヴラム アラモードモード」にパワーアップしました。
庄司:今までは「ヴラムブレイカー」を使っていたので、アラモードでは「もっとデカい武器になるかな?」と思ったら、盾を手にする。
ラキアが誰かを守るために仮面ライダーになったんだと改めて感じましたね。加えて、投げて戦ったりとか、戦い方の幅も広がりましたし、最強フォームで仮面ライダー3人が揃ったら壮観だろうなと。色合いもすごくいいんですよね。ガヴはオレンジと紫、ヴァレンは金、ヴラムはシルバーのベースカラーになっていますから、横並びもすごく綺麗だと思います。
ーー仮面ライダーたちは幸果さんとゴチゾウのサポートで何度もピンチを乗り越えてきました。宮部さんが気に入っているゴチゾウはいますか?
宮部:色々な人に言っているんですけど、私は「ドーマルゴチゾウ」が好きです。
日野:何で好きなの?
宮部:開いた時の「わあ!」みたいなびっくり顔がすごく刺さっちゃって。ドーマルのグッズが出るのをずっと待っています(笑)。
あとは、みたらし団子の「みたらもっちゴチゾウ」も好きです。開いたら三兄弟になるのが可愛いですよね。
ーーTVシリーズ放送開始後は、ゴチソウたちが大人気になりました。そういった反響をどのように受け止めていますか?
知念:本当に嬉しい限りです。僕たちにとってのゴチゾウは放送前からずっと共にしてきた仲間というか。SNSで「変身した後、天国に行っちゃうのがすごく悲しい」というコメントを見て、びっくりしたんです。「ゴチゾウたちに感情移入して見てくれてるんだ!」って。それは僕たちの中にはない、放送後に初めて知った感覚でした。
座長・知念英和。1年間の成長
ーー1年間の撮影の中で、知念さんが座長として成長したと思うことをお聞かせください。
庄司:やっぱり身長じゃない?
日野:まだオレの方が高いって言いたいけど(笑)。
知念 :もっとあるでしょ!?(笑)
宮部:私は撮影が始まる前から、監督やスタッフさんに見てもらいつつ、台本の一部を二人で練習していました。その時の私たちは「セリフを覚えていっている」という感じだったんです。監督もちょっと苦笑いするくらい...…(苦笑)。
でもこの夏映画では、何も言っていなくても、伝わってくる感情があって。すごく感動したし、私自身も助けられました。
日野:初期のヒデ(知念さん)との時間は本当に濃かったですね。彼のすごいところは、僕が一番知っていると思います。
最初はフォローに回ることも多かったんですけど、この前のコメント録りの時は、自然とヒデに任せている自分がいました。ヒデが先に喋ってくれるから、僕はその後ろについていくだけでいいというか。
厚かましいかもしれませんが、一年一緒にやってきた仲間としては、そういう明らかな成長を見せられると嬉しく思います。去年の放送前の取材の時とは、明らかに違いますよね。取材していただく方々もすごく驚いていて、本当に頼もしくなったなと感じます。
庄司:月並みな表現ですけど、スポンジのような子なんですよ。あらゆることを吸収して、自分で一度絞り出してみる。日野友輔から盗んだものもあるだろうし、宮部のぞみから学んだこともあるだろうし、もしかしたら僕から参考にしたものもあるかもしれません。
彼は主人公だから、きっとキャストの誰よりも色んな人とお芝居をしてきた。その人たちから参考にできるものをたくさん得て「これが合う、合わない」ということをやってきたんだと思います。現段階の「知念英和」という役者がいる場所では、有効になるものとそうではないものがきっとあって、常にトライアンドエラーを繰り返しているなと。そのうえで、質問を投げてくれる瞬間や自分の意見や方針とかを伝えてくれる時、「一歩一歩進んでいるんだな」と感じられました。
知念自身の行動や芝居に対する向き合い方から、僕自身も「まだまだ、学べることはたくさんあるな」と思えたので、すごくリスペクトしています。
ーー知念さん自身は、この1年間を振り返ってみていかがですか?
知念 :思い返せば、泣いて帰った日もあったり、本当に色々なことがありました。
その中で、三人に助けられた瞬間は多かったです。ずっと座長として撮影現場にどう立つのかに悩んできたけど、周りの皆さんは「そのままの知念でいいよ」と言ってくださって。
空振りすることもありましたけど、少しずつ少しずつ前に進んでいけました。1年間、伸び伸びやらせていただけたのは皆のおかげです。このメンバーで『仮面ライダーガヴ』という大好きな作品を一緒に作ることができてよかった。もっと活躍して、少しでも作品に還元したいですし、また皆で集まって成長した姿を見せられたらいいなと思っています。
[インタビュー/田畑勇樹 撮影・編集/小川いなり]