Yahoo! JAPAN

『介護うつ』とは?初めての介護で悩む方へ心と体のケアガイド

「みんなの介護」ニュース

藤野 雅一

毎日の介護で、心も体も疲れていませんか?

「今日もなんだか憂うつ…」「この気持ち、誰かわかってくれないかな」
介護をしている多くの方が、同じ思いを抱えています。

この記事では、介護での心と体の疲れについて、心が少し楽になる方法を解説していきます。

介護うつとは?知っておきたい初期症状

介護を続けていると、一時的に心や体が疲れてしまうことはよくあります。

しかし、疲れた状態が続くと、休んでも疲れが取れない、気持ちが沈んだまま無気力な心身状態になることがあります。そんな状態が続いた場合には、「介護うつ」のサインかもしれません。

介護うつは特別なものではなく、頑張りすぎてしまったときに誰でも起こり得るものです。

介護うつの原因と疲れのサイン

介護による疲れは、一般的な疲労とは大きく異なる性質を持っています。

普段の生活での疲れの場合、十分な睡眠や休養を取ることで回復することができます。しかし、介護による疲労は休んでも取れにくく、積み重なってしまいやすいものです。

介護うつの特徴は、その症状が徐々に生活全般へと広がっていく点にあります。

まず多くの場合、睡眠に変化が現れます。
夜になっても頭から介護のことが離れず、なかなか眠りにつけない…やっと眠れても、何度も目が覚める…。
睡眠が浅くなるため、日中は強い眠気に襲われ、集中力が保てない状態になっていきます。

食事の変化も見逃せないサインです。

これまで規則正しく取っていた食事の時間が不規則になったり、食べる量が極端に減ったり増えたりします。好きだった食べ物が美味しく感じられなくなることもあり、些細な動作にも疲労感が伴うようになります。

こうした身体的な変化と並行して、心の面でも少しずつ疲弊していきます。

よくある例としては、長年続けてきた趣味や娯楽が、いつの間にか負担に感じることが多くなります。
周囲の何気ない言葉を過剰に反応してしまったり、些細なことでイライラが募ったり、時には理由もなく涙が溢れてくることもあります。

こういった介護うつ症状を改善するには、まず原因が何なのかを見定める必要があります。
それでは、続けて具体的な介護うつの原因について見ていきましょう。

原因① 家族間の人間関係のストレス

介護をしていると、家族関係に悩むことが多くなります。

特に、介護の負担が家族の中で偏っていると、心が疲れてしまうことも少なくありません。毎日の介護に追われる中で「誰かに代わってほしい」「少しでも休みたい」という思いを抱えながら過ごされている方もいらっしゃいます。

親戚や兄弟といった、離れて暮らす家族と介護の大変さを共有できないことから、孤独感を感じて周囲に相談できない場合もあります。

原因② 毎日の介護による心身の疲れ

高齢者の介護は、想像以上に心身への負担が大きなものです。

夜間にもトイレへの付き添いなどで頻繁に目を覚ます必要がある場合、まとまった睡眠時間が取れないため、集中力が無くなっていきます。

急な体調変化や転倒など、予期せぬ出来事への備えも欠かせません。いつ何が起こるかわからない状況下での常時の緊張感は、大きな精神的負担となります。

さらに、自分の時間が持てないことも深刻な問題です。趣味の時間を取ることも難しく、友人との約束もキャンセルせざるを得ないことが増えていきます。
こうして自分の生活が制限されることで、心理的なストレスが蓄積していきます。

原因③ 仕事と介護の両立における課題

仕事と介護の両立。これは多くの方にとって、避けては通れないものです。
しかし、介護は予定通りに進まないことが多く、突然の通院や緊急対応に迫られることもあります。

職場での理解を得ることは、多くの介護者にとって大きな課題となっています。
介護休暇の取得や時短勤務の利用を検討しても、周囲の目が気になって踏み出せない。そんな思いを抱える方は少なくありません。

本来なら受けられるはずのサポートも、周りへの遠慮から断念してしまい、結果として一人で困難を抱え込んでしまう場合があります。

そして、介護のために働き方を調整していくうちに、新たな不安が芽生えてくることもあります。
残業ができない、急な休みが必要になる、会議に参加できない―。そんな状況が続くことで、「自分のキャリアはこのままでいいのだろうか」「将来の仕事はどうなるのか」と感じる方も多くいます。

このように、仕事と介護の両立には、時間のやりくりだけでなく、職場での人間関係や将来のキャリアなどの様々な課題が絡み合っています。
一つひとつの解決には時間がかかるかもしれませんが、まずは自分に合ったバランスを探っていくことから始めてみましょう。

介護うつへの対処方法

対策① 家族関係の改善のために

家族関係の改善に向けて、いくつかの効果的な工夫をご紹介します。

まずは、定期的な家族会議の開催です。
例えば月に一度、家族全員が集まって話し合う時間を設けることで、介護の現状や課題を自然な形で共有することができます。特に、介護支援専門員(ケアマネジャー)に同席してもらうと、専門的な視点からのアドバイスも得られ、より建設的な話し合いが可能になります。

些細な困りごとや心配事も、定期的な機会があることで気軽に相談できることも大きなメリットです。

次に、介護ノートの活用をお勧めします。
日々の食事内容や薬の服用状況、体調の変化など、細かな記録を残していくことで、家族間での情報共有がよりスムーズになります。

離れて暮らす家族も、ノートを通じて日々の様子を具体的に理解することができ、介護の実態や大変さもより深く伝わっていきます。
デジタルツールを活用して、スマートフォンで共有する方法も効果的です。

そして、家庭内での役割分担の設定も有効です。
例えば、平日の夜は弟家族が担当し、週末は妹家族が中心となって介護を行うなど、明確なルールを決めることで、一部の家族への負担集中を防ぐことができます。

買い物や通院の付き添い、書類の管理など、それぞれの生活スタイルや得意分野に応じて役割を分担していくことで、継続的なサポート体制を築いていけるでしょう。

このように、コミュニケーションの工夫と具体的な役割分担を組み合わせることで、家族全体で支え合う介護の形が見えてきます。一度にすべてを変えることは難しくても、できることから少しずつ始めていくことで、きっと良い変化が生まれてくるはずです。

対策② 介護の負担軽減のために

介護保険サービスを使うと、負担が軽くなる可能性があります。

日中を施設で過ごすデイサービスでは、専門スタッフが寄り添いながら食事や入浴のサポート、そして季節の行事や趣味の活動など、様々なプログラムを提供しています。
利用される方はそれぞれのペースで活動に参加でき、新しい出会いや交流を楽しむ機会にもなっています。

また、介護を受けるご本人だけでなく、ご家族にとっても大切な時間となります。利用の頻度や時間は柔軟に設定できるので、ご家族の生活リズムに合わせて無理なく取り入れていくことができます。

一方で、介護サービスの利用を提案すると、被介護者の方から「知らない人に世話をされるのは嫌だ」「家族に余計な出費をさせたくない」と言われることもあります。
そんなときには無理に説得しようとせず、まずはその気持ちをゆっくりと聞いてみましょう。

デイサービスなら、最初は見学から始めてみるのが良いかもしれません。
実際の様子を見てみると、同じ年代の方々が楽しそうに過ごしている姿に、安心される方も多いようです。少しずつ慣れていくことで、自然とサービスを受け入れてもらえることがあります。

また、ショートステイも介護する方の休息に役立ちます。月に一度くらい利用すると、しっかりと休める時間が取れます。デイサービスに慣れてから、ショートステイを提案すると、スムーズに利用を始められることが多いようです。

どのサービスを使うか迷ったら、ケアマネジャーさんに相談してみましょう。状況に合わせて、使いやすいサービスを提案してくれます。あわてずゆっくりと、お年寄りの方の気持ちに寄り添いながら進めていくことが、長く介護を続けるコツです。

対策③ 仕事と介護を両立させるために

仕事と介護の両立は、職場の制度と地域の支援サービスを上手に組み合わせることで、より実現可能なものとなっていきます。まずは、活用できる選択肢を幅広く見てみましょう。

多くの職場では、介護のための休業制度や休暇制度が定められています。制度の詳細や利用方法は職場ごとに異なるため、自社の制度について人事部門に確認することから始めましょう。

定期的な通院の付き添いには介護休業制度を利用したり、日々の介護時間を確保するために短時間勤務を選択したり、あるいは時差出勤で柔軟な働き方を実現したり、一人ひとりの状況に合わせて、働き方を調整できる可能性があります。
相談してみれば意外と周囲の理解を得られ、新たな働き方の選択肢が見えてくるかもしれません。

また、地域の支援も大きな力となります。

特に地域包括支援センターは、介護に関する様々な相談に対応してくれる心強い味方です。
センターを訪れると、介護保険サービスの具体的な活用方法から、仕事との両立に役立つ地域独自のサービスまで、幅広い情報を得ることができます。

専門のスタッフが親身になって相談に乗ってくれるので、自分に合ったサービスの組み合わせ方が見えてくるはずです。
このように、職場の制度、地域の支援を組み合わせることで、無理のない両立の形が見えてきます。

一度にすべてを整えることは難しくても、できることから少しずつ始めていけば、きっと自分らしい両立の道が開けていくはずです。

介護うつを乗り越えた方々の体験談

ここからは、実際に介護うつを経験し、乗り越えてこられた方々の体験をご紹介します。
一人ひとり状況は違えど、きっと共感できる部分があるはずです。

「最初は何もわからなくて…」主婦のAさん(54歳)の場合

介護を始めた当初のAさんは、すべてを自分でこなさなければならないと思い込んでいたそうです。

朝は和食中心の手作り料理を欠かさず、毎日の入浴介助、部屋の清掃と消毒など、完璧な介護を目指して奮闘する日々。
しかし、そんな緊張感の高い生活が続くうちに、徐々に心身の不調が表れ始めました。

夜眠れない日が増え、食事もなかなか進まなくなっていったのです。

転機となったのは、担当ケアマネジャーからの一言でした。
「完璧な介護はないんですよ」というその言葉が、肩に力が入りすぎていた自分に気付かせてくれたといいます。

まず始めたのが宅配食サービスの利用です。
最初は「手作りじゃないと申し訳ない」という思いもありましたが、栄養バランスの取れた食事が定時に届くようになり、食事の準備の負担が大きく軽減されました。母も「お店のお食事みたいで楽しい」と喜んでくれたそうです。

次に週3回のデイサービスを始めました。当初は母の反応を心配していましたが、体操やレクリエーションを楽しみ、新しい友人もできて、予想以上に良い反応だったそうです。
Aさんも火曜・木曜の午前中は友人とカフェでお茶を楽しみ、自分の時間を持てるようになりました。

また、近所に住む妹さんにも週1回、母の話し相手になってもらう時間を作ることで、Aさんは買い物や美容院に行くなど、自分のための時間を確保できるようになりました。

このように、介護サービスの利用と家族の協力を組み合わせることで、Aさんと母、双方にとってより良い生活リズムが整っていきました。
完璧を目指すのではなく、助けを借りながら無理のない範囲で行う。そんな介護のスタイルを見つけることができたそうです。

「仕事と介護の両立に悩んで」会社員のBさん(48歳)の場合

パート勤務をしながら認知症の母を介護するBさん。

母から同じ質問を何度も繰り返され、思わずきつい言葉を投げかけてしまう日々が続いていました。
そのたびに後悔の念に苛まれ、自分を責め続ける悪循環に陥っていきました。次第に気持ちが沈み、介護に対する自信も失われていきました。

転機となったのは、地域の家族会の存在を知ったことでした。家族会での交流を通じて、様々な対応方法を学ぶことができました。

例えば、同じ質問が繰り返されるときは「そうね、もうすぐお昼ね」と、その都度初めて聞いたように受け止めたり、イライラしたときは一度その場を離れて深呼吸をしたりすることで、気持ちを落ち着けるようになったそうです。

地域の家族会を通して、Bさんは母の言動を否定せず寄り添うことの大切さに気づいたのです。
今では、母との会話にもゆとりが生まれ、穏やかな時間を過ごせることが増えてきています。

まとめ

最初から理想的な介護の形を見つけることは難しいかもしれません。
まずは小さな一歩として、介護サービスを試してみたり、地域の集まりに参加してみたりすることで、解決の糸口が見つかるかもしれません。

「これなら続けられそう」「こんな方法もあったんだ」という気づきが、肩の力を抜いた介護の形につながっていくのです。

あなたらしい介護の形を、ゆっくり見つけていきましょう。

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. お花見気分を盛り上げるランチ&ディナービュッフェ

    東京バーゲンマニア
  2. 1400mまでの勝利しかないサトノカルナバルが連対できる可能性は!?【共同通信杯】競馬初心者講座講師:長谷川雄啓の過去10年データ分析!

    ラブすぽ
  3. 大変身しますよ。ぜひやってみてほしい「玉ねぎ」のめちゃめちゃウマい食べ方

    4MEEE
  4. 犬に絶対やってはいけない『薬の飲ませ方』5選 簡単にできる上手な与え方とは?

    わんちゃんホンポ
  5. 【東京ディズニーシー】行く前に要確認!現地で撮りたい「ダッフィー激かわフォトスポット」まとめ♪

    ウレぴあ総研
  6. キティちゃんやシナモン、ばつ丸の超優秀「トラベルトートバッグ」でるよ!全7キャラ♪

    ウレぴあ総研
  7. スタミナパン、「バイトが苦じゃない」のが悩み?

    文化放送
  8. とても大切な高額療養費制度、負担増への対策は?

    文化放送
  9. 不朽の名作「ベルサイユのばら」の世界観をアフタヌーンティーで楽しもう♡

    東京バーゲンマニア
  10. 神戸市が、山中の樹林を墓標とする『樹林葬墓地』を北区に整備するみたい。50年後に「自然に還る」仕組み

    神戸ジャーナル