「“人”をみる診療」を目指して本音に寄り添う整形外科へ|産婦人科も併設する佐賀県佐賀市・兵庫整形外科に迫る
スポーツで盛り上がりを見せる佐賀県で、地域に寄り添う医療に取り組む兵庫整形外科 本多弘一院長(以下、本多)。
エコー(超音波)を活用した丁寧な診療や、婦人科医である妻の本多加珠美さんとの連携による『女性アスリート外来』などを通じて、“人”を診る診療を目指しています。
「何かあったときの頼れる場所になれたら」ーーそのような想いから生まれる、地域に寄り添う新たな整形外科の形とは?
「何かあっても大丈夫」という安心を
ーー本多先生が医師としてスポーツに関わるようになったきっかけについて教えてください。
本多)私自身、学生時代はラグビーをしていたので、先輩医師がラグビーチームに帯同している姿を見て、自分も医師として現場に関わりたいと思うようになったのが医師としてのスポーツとの関わりのきっかけです。
最初の頃は自信もなかったせいか、現場に出るたびに「どうか怪我をしないでくれ」と祈るような気持ちでいっぱいでした。
ーーたしかに、ラグビーの試合での怪我は多くありますよね。
本多)しかし、いつからか前向きな気持ちに変わっていきました。それは、技術的な自信がついたということだけでなく、気持ちの部分で「何が起きても自分がなんとかしよう」と思えるようになったことが大きいと感じています。もちろん、怪我がないに越したことはありませんが、選手たちが「怪我したらどうしよう」ではなく、「なにがあっても本多先生がいるから大丈夫」と信頼してもらい、思い切りプレーできることが一番うれしいことですよね。
ーー2024年に佐賀県で開催された国スポでは、本多先生もメディカルサポートとして関わられたと伺いました。
本多)国スポでは、中心的な世代である高校生や中学生の頑張っている姿が印象的でしたが、それだけでなく高齢の方にも非常によい影響があったと感じています。開会式でのパフォーマンスに出るために、あるいはグラウンドゴルフ出場に向けて来院される方も多くいらっしゃいました。「提灯を持って歩くだけの出番だけど、膝が痛くて・・・でも出たい!」という80代の方もいらっしゃいました。こうした“参加する機会”があることで、身体を動かす機会が生まれたり、整形外科に相談しようと思ってもらえるのは、すごく価値がありますね。
兵庫整形外科 本多弘一院長
ケガ、病気だけでなく“人”をみる診療
ーー現在は、院長として地域の医療に携わられていますが、兵庫整形外科で大切にされていることを教えてください。
本多)以前は大きな病院で、紹介を受けて来院する患者さんの手術を中心に行っていましたが、今は高齢者から学生まで地域の方々と直接関わる機会が増えました。その中で私が大切にしているのは、けがや病気だけでなく、“人”をみることです。
人はそれぞれ、生活環境や性格、立場などが異なるので、一人ひとりに合った治療を選択できるよう、丁寧なコミュニケーションを心がけています。この姿勢は地域に寄り添う病院であるために、何よりも大切にしたいですね。
ーー兵庫整形外科の強みはどのようなところですか?
本多)とくに力を入れているのがエコー(超音波検査)です。整形外科においてエコーを使用することで、筋肉や靭帯の動きをリアルタイムで見ながら、診察やリハビリを行うことができます。最近ではレントゲンだけでなくエコーを導入する整形外科も増えてきましたが私自身この病院に来る以前から注目し、勉強してきました。
スポーツ選手だと、筋肉の張りなどのちょっとした違和感でパフォーマンスを落としたりすることがあります。骨を見るためのレントゲンとは異なり、エコーなら「ここに出血がある」「この筋が張ってる」といった微細な情報まで見ることができるため、「どれくらい休めばいいか」「何を意識すれば再発を防げるか」というより細かなアプローチができることが大きな特徴です。
ーー診察・処置だけでなく、再発予防に向けても細かなアドバイスがいただけることは、患者さんにとってもありがたいことですね。
本多)怪我をして、一度よくなったとしても、体の使い方や柔軟性、筋肉の硬さなどを見直さずにまた同じ動きをすれば、すぐに再発してしまいます。そのため、ストレッチやフォーム修正まで含めて、再発予防にはしっかりと関われるようにしたいと思っています。そのためにエコーはとても大事なツールですし、もっと多くの人に「エコーで正確に診断して、正しく対処することができれば、早期回復やパフォーマンス向上にもつながる」ということを知っていただきたいです。
「整形外科は、大きな怪我がないと行ってはいけない」と思っている方にも、「ちょっと気になるから見てもらおう」と気軽に来ていただけるような場所になれれば嬉しいですね。
整形外科×婦人科の新たな女性アスリート外来
ーー新たに『女性アスリート外来』をスタートさせると伺いました。
本多)婦人科医である妻と連携し、女性アスリート外来に力を入れていきたいと考えています。
ーー奥様が婦人科医として、“女性アスリート”、あるいは整形外科の分野に関わるようになったきっかけは何ですか?
加珠美)主人が整形外科医、私が婦人科医ということもあり、以前から「何か連携できることがあるのではないか」と話していました。私はもともと積極的にスポーツをしてきたわけではありませんが、女性として生理に関する悩みは常に抱えていましたし、病院でも同じような悩みを持つ患者さんを多く診てきました。そうした状態で運動を続けることは、本当に大変なことだと感じています。
しかし、生理などの悩みがあっても、婦人科を受診することにハードルの高さを感じる方は多いです。だからこそ、「整形外科で怪我の診断のついでに相談できる」「婦人科の女性医師も同じ場所にいる」という環境があれば、少しでも相談しやすくなるのではないかと考えています。実際、悩んでいる方はたくさんいらっしゃると思うので、気軽に立ち寄れる窓口のような存在になれたらと思っています。
本多加珠美先生
ーー婦人科医の先生がいて、相談できる環境というのはとても貴重ですね。
本多)女性アスリートが抱える生理不順などの問題は、疲労骨折のリスクを高める可能性があるといわれており、整形外科医としても無視できない問題です。しかし、男性である私が中学生・高校生のアスリートと生理についてオープンなコミュニケーションを取ることはなかなか難しく、もどかしさを感じてきました。
それもあって、「この分野には自分より適任の人がいる」と思い、産婦人科医である妻に協力をお願いするようになりました。妻は現在も大学病院に勤務しており、更年期や月経に関する悩みを幅広く診ています。また、整形外科への理解も深く、連携しながら診療できる非常に心強い存在です。整形外科医である私と、婦人科医である妻が連携することで、患者さんの“本音”に寄り添える医療を提供できればと考えています。
地域に寄り添う病院を目指して
ーー最後に、兵庫整形外科をどのような病院にしていきたいか、院長としての想いをお聞かせください。
本多)地域に寄り添うことを大切にしたいです。整形外科は、どうしても“怪我をした人が行くところ”というイメージがあると思いますが、実際にはもっと日常に寄り添える存在でいいのではないかと思っています。スポーツをしている人はもちろん、そうでない人にとっても、「最近ちょっと身体が重いな」とか、「これって放っておいて大丈夫かな?」みたいな、ちょっとした不安があるときにふらっと立ち寄れるような場所になれたら嬉しいです。
そのためにも、私たちは“人”をみる診察を大切にしていて、コミュニケーションを何より重視しています。小さな不調を早めに見つけ、的確にアプローチするための“エコー”もそうですし、怪我だけでなく女性特有の悩みにもっと幅広く応えられるように、婦人科医である妻とも連携し、整形と婦人科、両方の視点からサポートできる体制づくりを進めています。
悩みをひとりで抱え込まずに、ちょっとでも気軽に話してもらえる。そんな「何かあったときの“頼れる場所”」をこれからも目指していきたいと思っています。
ーーありがとうございました!
佐賀バルーナーズの試合観戦時の本多先生。「待合室や診察室で患者さんと「昨日の試合どうだった」とか「負けちゃいましたね」というような会話もよくします。観戦に行っても本当にお客さんが多いですし、人気を感じます。ユニフォームを着て来院する子もいて、そういう話題で盛り上がれるのはすごく嬉しいですね。病院として、佐賀バルーナーズのスポンサーをさせていただいているので、試合会場ではそういう繋がりを感じる場面もありますし、自然と話に出ることもあります。(本多)」