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追悼 須田寛さん 大阪万博の観客輸送、そしてシンデレラ・エクスプレスの誕生秘話(国鉄、JR東海)【コラム】

鉄道チャンネル

2022年の西武 001系 Laview ブルーリボン賞受賞式開催時に撮影(写真:鉄道チャンネル編集部)

JR東海の初代社長を務めた須田寛さんが旅立たれました。亡くなられたのは2024年12月13日で、享年93歳。京都府京都市出身。

国鉄時代は旅客畑が長く、「フルムーン夫婦グリーンパス」や「青春18きっぷ」といった企画きっぷのアイディアでヒットを当てました。JR東海でも、1992年の東海道新幹線「のぞみ」デビューなどで、会社を成長軌道に乗せました。

筆者は国鉄時代から約40年間にわたる記者生活で幾度となく須田さんを取材、懇意にさせていただきました。ここでは思い出のいくつかを披露し、追悼に代えたいと思います。

(須田さんのお人柄を知る者として、本コラムは「さん付け」とさせていただきます)

みんな笑顔だった大阪万博輸送

最初に思い出したのは、2014年秋に横浜市の原鉄道模型博物館で開かれた企画展「ありがとうSHINKANSEN展」。須田さんは、講演会「東海道新幹線50年の軌跡~進化を遂げた舞台裏」で興味深い話を聞かせてくれました。

1964年に開業した新幹線が実力を発揮したのが、1970年の万博輸送。「国鉄は本当は会場にパビリオンを出展したかったのですが、残念ながら国に認められませんでした」。

それなら輸送力で実力を示そうと、新幹線を目いっぱいに増発しました。「1時間当たりの運転本数は、片道最大『ひかり』3本、『こだま』6本。こだま3本は(臨時列車としての)波動輸送対応でしたが、会期終盤は全列車を増発してもすべて満席。それでも万博帰りのお客さまは皆さん笑顔にあふれ満足していました。思い返せば、本当にいい時代でした」と振り返りました。

実体験で「シンデレラ・エクスプレス」知る

JR東海になってからは、1987年と1992年のテレビCMで一世を風びした「シンデレラ・エクスプレス」。「新幹線の最終電車で別れる恋人たちが織りなす遠距離恋愛模様」がコンセプトで、鉄道会社の名作CMとして今に語り継がれます。

このCM、JR東海の若手社員の実体験がアイディアの元ですが、社長として話を聞いた須田さんは、「本当にそんなことがあるのか?」と疑問だったそう。

ところがある日、仕事の都合で最終新幹線に乗ると、近くの席に座っていた女性が東京から静岡近くまでずっと泣いていたそう。

須田さんはこの時、「このCMは当たる」と直感。しかし、ずっと女性を見ていると「自分が泣かせたと誤解を受けそうなので、視線をそらせました(笑)」。

鉄道友の会会長として

須田さんは2007年から2022年まで、鉄道友の会の会長として、鉄道会社とファンの交流促進に努めました。この時の余談も一つ。

2018年8月の国際鉄道模型コンベンション(JAM)。「『駅名』と『列車名』を考える」と題して講演しました。

2018年のJAMで講演する須田さん(筆者撮影)

駅名は地域名を付けるのが一般的ですが、一度決めると簡単には変えられません。中央線高尾駅、1961年までは浅川駅でしたが、「高尾山を駅名にして観光客を誘致したい」の要望を受けて駅名変更しました。

駅名は鉄道会社の商売道具

しかしこの時、国鉄は首都圏各駅で掲示を書き換えたため、多額の出費を強いられました。以来、地元請願による駅名変更の際には応分の負担を求めるようにしたということです。

須田さんは、「チケットレスできっぷを持たない旅行が当たり前になれば、駅名や列車名の必要性は薄れます。しかしイメージ効果を考えれば、希望者に駅名や列車名を印字して提供するなど、鉄道会社は〝商売道具〟として活用する姿勢が求められでしょう」と説きました。

友の会取材で最後の会話

須田さんと最後にお話しさせていただいたのは2021年初め。本サイトで鉄道友の会を紹介させていただいた際です。

取材のアポ取り後、友の会事務局から連絡があり、「須田さんがあなたと連絡を取りたがっている」。電話でお話をさせていただきました。

会話の最後に、「またいつかお目にかかりましょう」と申し上げたのですが、実現の機会はありませんでした。
須田さんは真偽は不明ながら、国鉄の全駅名を覚えていたそう。お仕事としてはもちろん、本当に鉄道を愛していた方でした。ご冥福をお祈りいたします。

記事:上里夏生

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