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「不安は“未来の俺”にどうにかしてもらう」LINEヤフーのエンジニアが実践する、成長機会を逃さないための自己暗示

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「不安は“未来の俺”にどうにかしてもらう」LINEヤフーのエンジニアが実践する、成長機会を逃さないための自己暗示

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「まずはやってみる」とはよく言われるものの、新しいことに踏み出すのは簡単なことではない。

そんな「新たな一歩」を踏み出すためのヒントとなり得る体験談を聞かせてくれたのが、LINEヤフーのモバイル・ディベロッパーエクスペリエンス開発チームで働く秋勇紀さん 。書籍『Good Code, Bad Code ~持続可能な開発のためのソフトウェアエンジニア的思考』(秀和システム)の翻訳者としてご存じの読者も多いだろう。

今回は、秋さんが書籍翻訳を手掛けた際のエピソードから、成長の機会を逃さないための心掛けを探った。

LINEヤフー
秋 勇紀さん

2019年、九州工業大学情報工学部を卒業後、LINE Fukuokaに新卒入社。「LINEスタンプメーカー」の開発などに携わった後、22年にLINE (現LINEヤフー)に転籍。現在は開発体験向上に注力するモバイル・ディベロッパーエクスペリエンス開発チームに在籍。共訳書に『Good Code, Bad Code ~持続可能な開発のためのソフトウェアエンジニア的思考』『セキュアなソフトウェアの設計と開発』『クリエイティブプログラマー』『ストリートコーダー』(いずれも秀和システム)がある

「つながり」が最大の成長エンジン

エンジニアとしての秋さん自身の成長について、彼が一番のポイントとして挙げたもの。それは「つながり」だ。

その意図を、『Good Code, Bad Code』の翻訳に携わった当時を振り返りながら、こう語った。

秋さん:書籍の翻訳に携わるようになったきっかけは、昔アルバイトをしていた会社の方に誘われたことです。ただ、「本の翻訳に興味ない?」と声をかけていただいたものの、実は最初は断ったんですよ。「興味はあるけど、大変そうなので」って。

だけど冷静になって考えてみたら「やってみたら、自分の名刺になるかも」と思い、挑戦させていただくことにしたんです。

結果的に、翻訳への参加は秋さんにとって貴重な成長のきっかけになった。だが、そもそもなぜ秋さんに声が掛かったのか。それは秋さんの技術力と英語力への信頼が厚かったことはもちろんだが、秋さんがずっと人との「つながり」を大切にしてきたからに他ならない。

秋さんは、人とのつながりとエンジニアとしての成長の関係性に対して、次のように持論を述べた。

秋さん:アルバイト時代からさまざまなエンジニアの人とつながってきましたし、カンファレンスにも積極的に登壇してスピーカーの皆さんと接点を持つようにしています。

近年では、僕自身がそういう場を作ることもあります。「この人とこの人が話すと良さそう」とか、「後輩をあのスピーカーの方に紹介しよう」とか。

秋さん:皆さんの成長の機会になったらいいなという思いもありますし、その方々が別のカンファレンスに登壇したり、記事を書いたりといったアウトプットをするようになったら、それを通じて僕自身の成長にもつながりますしね。

「つながり」という良い循環の中で、これからも成長していけたらと思っています。

行動力の源泉は「未来の俺」への期待

人とのつながりを大切にし、良いつながりを生むためには意欲的に行動する。書籍翻訳への挑戦を決めた際のエピソードからもうかがえる通り、秋さんはまさに「まずはやってみる」を体現しているエンジニアだ。

しかし、秋さん自身は決して積極的な性格ではないと明かす。

秋さん:もともとは外交的な人間ではなくて、今もその点は変わりません。しゃべりにも自信はないですし、壇上では常にカンペが手放せないタイプです。

というのも、僕は「先のこと」が怖いんです。

本の翻訳に携わったらさまざまな批判を受けるだろうし、「この本はだめだ」と酷評されるかもしれない。そう考えると、つい躊躇してしまうんですよね。

ではなぜ、秋さんは「やってみる」という選択がとれるのだろうか。聞くと、笑いながらこう答えた。

秋さん:怖いという気持ちは消せないですが、「まあ、将来の俺が何とかしてくれるだろう」と思うようにしたんです。苦労するかもしれないけど、最終的に得をするのも、楽しむのも、未来の自分なのだから「まずはやってみるか」って。

秋さん:だから最近は、恐怖心があっても「これは今考えるべきことじゃない」と割り切るようにしています。精神論に近いかもしれませんが、おかげで気持ちがずいぶんと楽になりました。常に前向きな気持ちでいられますし、大抵のことは乗り越えられるようになりましたね。

とはいえ、「やってみるか」で始めた結果、後悔することもある。「翻訳作業も『一体いつになったら終わるんだ』と途方に暮れた」と苦笑を見せる。

秋さん:一度辛い経験をすると、「あれは二度とやりたくない」という考えに陥りますよね。だから最初のうちは、成功体験を得られそうかどうか見極めつつ挑戦することが重要です。小さい成功体験を重ねながら、少しずつステップアップしていくのが良いでしょう。

多くの人が、未知なるものには恐怖心を抱く。その「未知」を未来の自分に委ねることで恐怖を克服するのが、秋さんのテクニックだ。

秋さん:「未来の俺」に託しはするものの、決して投げやりになるわけではありません。仕事を引き受けて、後戻りできない状況にして覚悟する。そんなイメージですね。

※本記事は聴くエンジニアtypeオリジナルPodcast『聴くエンジニアtype』#90をもとに執筆・編集しております

文・編集/秋元 祐香里(編集部)

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