【ギフテッドって⁉】❝特異な才能を持つ子ども❞といわれる「ギフテッド」の子どもの特徴とその子どもが抱える特有の悩みとは?[小児科専門医監修]
特定分野に特異な才能を持つ「ギフテッド」の子どもについて、最近広く認識されるようになり、学校現場でも単位の面などで特例を認めようという動きが出ています。今後さらに話題になることが考えられる「ギフテッド」について、小児科医の森博子先生にその特徴や課題についてお話を伺いました。
いっけん「ギフテッドって優秀でいいな」とうらやましく思われがちですが、それゆえの難しさがあるようです。
ギフテッドって?
ギフテッドとは、特定の分野で優れた才能を持つ人(子ども・大人を含む)を指す言葉で、明確な診断基準があるわけではなく、通称的に使われています。「授かった能力は神様からの贈り物(ギフト)」という意味で「ギフテッド」と呼ばれていますが、実際には“生きづらさ”を抱えるケースも少なくありません。
特に日本では、集団の中で“みんなと同じであること”が重視されがちなため、ギフテッドの子どもが持つ独特な思考や興味、感性が理解されにくく、環境や関わり方によっては「自分はおかしいのかも」と感じてしまうこともあるのです。
IQ130以上などの数値で測られることもありますが、それだけでなく芸術性や創造性など、数字では表しきれない部分で突出した力を持つ子どもも多くいます。
また、発達障害の特性とギフテッドの才能が重なる「2E(トゥーイー)」の子どもも一定数おり、特性が才能を隠したり、逆に才能が特性の困り感を見えにくくしてしまうこともあります。
ギフテッドは、大人・子どもを含めた全人口の約2%といわれており、子どもの場合は学校の1学級に1人いるかどうか、という感覚で捉えてよいでしょう。
また文部科学省の資料では、ギフテッドとされる子どものことを❝特異な才能のある子ども❞と表記し、該当する児童生徒に対して、より柔軟に適切な教育を促進できるよう、現在はさまざまな取り組みが行われはじめています※1。
※1:参考資料「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」文部科学省
小学生のギフテッド、特徴は?
実際には、どんな特徴があるのでしょうか。小学校に通うようになってギフテッドだと気づくポイントは以下のような特徴です。
●語い力が高い
低学年なのに大人が使うような難しい言葉(単語をはじめ、ことわざや慣用句、専門用語なども含む)をたくさん使えたり、大人と対等に会話ができたりする。
●論理的に話ができる
ディベートができ、討論すると大人をも論破するほどの思考力で論理的に話を展開できるなど、語いに加えて思考力も早熟。
●ずばぬけた暗記力・計算力・記憶力
地名や国旗などを膨大に覚えていたり、計算などを驚くほどすらすらできたり、一度見たものや聞いたものを忘れず細かく覚えている、など。
●好奇心旺盛で高い集中力をもつ
興味のある事に対して好奇心が人一倍旺盛で、いったん集中すると夢中になって取り組める力がある。たいていの子どもの集中が切れる時間がきても、集中が途切れずに没頭することができる。ときには大人が驚くような質問をして探究し続ける、など。
●創造性がとても豊か
すでに得た知識や経験をもとに、自ら考えた新しい方法や作品などを生み出すことができる。教科書に載っていない斬新なアイデアで問題を解いたり、周りが驚くような行動で成果を残す、など。
このように、実年齢でみられる発達・成長度合いよりもかなり早熟で、いずれかの能力を発揮する場合、ギフテッドに該当するでしょう。
ギフテッドの子どもによくある現象と抱える悩みは?
上記のように、「能力が高い=問題がない」と思われがちですが、ギフテッドの子どもたちは“できること”と“できないこと”の差が大きく、それが大きな葛藤や孤独につながることがあります。
【ギフテッドの子どもによくみられる現象】
●知識が豊富すぎて同年代の子どもと話が合わない
⇒周囲から変わり者扱いされて仲間はずれにされたり、いじめられたりすることも。
●学校の授業が簡単すぎてつまらなく感じる
⇒授業中に立ち歩いたり、他の本を読んだりするなど、授業と関係ない行動をとる。
●敏感な感性のため周囲に合わせようとして気を遣いすぎたり、または自分を突き通して敵を作りやすくなる
⇒精神的に疲れやすくなったり、孤独を感じやすくなったりするなど。
このように、本人の持つ才能と心の発達や周囲の環境がうまくかみ合わないことで、「わかってもらえないつらさ」「自分は変なのかもしれないという自己否定」を感じてしまう子もいます。特に、発達検査(ウィスクなど)で出る「得意と不得意の差」が大きい子は、表面上では“できる子”と見られても、実は“すごくしんどい”状態にあることが少なくありません。
我が子がギフテッドの場合、保護者はどうすればよい?
前述のようなことが繰り返され、場合によっては問題児扱いされるなどして、子ども自身が「理解されない」と感じると、次第に才能を隠してしまったり、不登校になってしまうケースもあります。
だからこそ、まずは保護者が「この子がどんな場面で困っているか」を具体的に見立て、どんなときも子どもの味方でいてあげることが大切です。
実はギフテッドの子どもには、診断名がつかないからこそ支援が届きにくいという現実があります。けれど本当に必要なのは、「診断」ではなく「理解」。“才能を伸ばす前に、まず守る”という視点が求められます。
たとえば、知的能力の高い子どもの感覚を大人に置き換えると、
●国語の授業1コマ(45分)かけて、ひらがなの「あ」を習う。
●算数の授業1コマ(45分)かけて、「1+1=2」ということを教わる。
そんな時間を毎日過ごしているかもしれません。
こうした違和感の蓄積が、授業への不適応や誤解につながることもあります。
だからこそ、お子さんの“困り感”と“力の出し方”を家庭の中で言語化し、必要に応じて学校の先生にも共有していくことが、これからの支援の形になっていくでしょう。
関われる相談先やできることは?
現在の日本の学校教育(公教育)では、決まったカリキュラムの中で集団指導が行われるため、ギフテッドの子は“浮きこぼれ”とされ、対応に苦慮されることがあります。
だからこそ、学校だけに頼るのではなく、その子の才能や関心を自由に伸ばせる外の世界とつながることも重要です。
たとえば、子どもの得意分野を見つけてくれる塾や習い事、年齢を超えて語り合える“オタク的仲間”との出会いは、自己肯定感を保ちながら才能を発揮できる貴重な機会になります。また、大学などでは専門分野に特化した公開授業などが行われていますので、参加してみることで子ども本人の感覚の変化や人とのつながりなど、世界が広がるかもしれません。
大切なのは、「この子が自分らしくいられる場所はどこか?」という視点で関わりの場を見つけること。
家庭の外にも“わかってくれる人”がいることで、ギフテッドの子どもたちは、安心して自分の力を信じられるようになるのです。
いかがでしたか? 今後、注目されることが予想される「ギフテッド」についてお伝えしました。もしお子さんにギフテッドの特徴が当てはまるようなら、本人の才能を守り、生かすためにも、保護者の方ができることを考えてみてはいかがでしょうか。