責任を果たすことと人を頼ることは両立する
大竹まことがパーソナリティを務める「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送・月曜日~金曜日13時~15時30分)、10月2日の放送に立命館大学大学院の准教授で哲学者、戸谷洋志が出演(リモート形式)。8月に新刊『生きることは頼ること 「自己責任」から「弱い責任」へ』を発売した戸谷が、タイトルにもある「生きる」ことと「頼る」ことの両立について語った。
大竹まこと「今回の御本です、『生きることは頼ること 「自己責任」から「弱い責任」へ』。最初に、ひとりで仕事をして全部のことをして暇もなくて。それでも子供をもうけたことや、そういうことに責任がある。すべて自分でこなしていかなくてはいけない、という人の話が出てきます。全部やってしまうと、能力も体力もないこともわかってくる。誰かに手伝ってもらう、人に頼っていくことが必要、というふうにおっしゃっています」
戸谷洋志「はい。そういう人っていま多いんじゃないかなと思って。仕事、育児、家事、こういうものを抱え込んでしまう。人に頼ることができず、なんとか自分で回そうとする。それを続けていると自分の体が壊れて、かえって仕事も育児もできなくなって、子供への責任を果たせなくなってしまうわけです」
大竹「はい」
戸谷「そうだとしたらむしろ他者を頼って自分の責任をまっとうしていく。この場合だったら自分の子供に対する責任を果たしていくほうが、よりよく果たせていけるのであって、そう考えていくと他者を頼るということは責任を果たすことと完全に両立するわけです」
大竹「なるほど」
戸谷「頼ることと責任を果たすことを同時に含みこんだ責任の考え方を提示したいなと思っています」
大竹「少し前までは町や村に子供がいたとして『きょう預かってよ』といったコミュニティみたいなものが、子供たちも含めて社会を形成していた過去がありますね」
戸谷「申し上げたような状況って現代社会特有だと思っていて。おっしゃるとおり、かつては町の人たちと連帯して行われるようなものだったし、もっと遡るなら、そもそも核家族化が起きていなかった。家に祖父母がいて、両親が仕事に出ている間、祖父母が面倒を見て、ということが普通に行われていたと思うんです。でも現代社会、特に都市部では難しくなっている。ひとりで抱えて壊れる危機に直面している人も増えているのかな、と」
大竹「『自分の子なんだから面倒見なさいよ』という自己責任論が、特に都市部で有効になってきている、と私も思います」