おさんぽ気分でアート巡り♪ 国際芸術祭「あいち2025」で感性を刺激するひとときを【名古屋市・瀬戸市】
芸術祭と聞くと、「なんだか難しそう」「敷居が高そう」「初めてだから行きづらいかも…」、そんなイメージを持っている人にこそ、ぜひ訪れてほしいのが、11月30日(金)まで開催中の国際芸術祭「あいち2025」。
2010年から3年ごとに開催されてきたこの芸術祭は、国内最大規模を誇り、今回で6回目の開催となります。世界中からアーティストが集まり、ここでしか見られない作品・公演が多数登場!
美術館だけでなく、旧銭湯や閉校した小学校、商店街の店舗や工場までが会場に。まるで宝探しのようにアートを巡る体験は、初めての人でも気軽に楽しめます。
編集部では、3つの会場を実際に巡って、その魅力を4回にわたりお届け。第1回目では、芸術祭の全体像と楽しみ方を紹介します!
国内最大規模の国際芸術祭「あいち2025」とは?
©五十嵐大介
愛知県のまちのあちこちで見かけるこの印象的なイラスト。これは、漫画家・五十嵐大介さんが、芸術祭のテーマ「灰と薔薇のあいまに」をもとに描いた「あいち2025」のキービジュアルです。愛知芸術文化センター8階「ラーニングセンターへたち」では、10月19日まで原画を展示中です。
会場は名古屋市と瀬戸市に3カ所。
会場情報
場所/アクセス
①愛知芸術文化センター
地下鉄「栄駅」より徒歩で約3分、名鉄「栄町駅」より徒歩で約2分
②愛知県陶磁美術館
リニモ「陶磁資料館南駅」より徒歩で約15分
③瀬戸市のまちなか
名鉄「尾張瀬戸駅」周辺
国内外から多様なバックグラウンドを持つ62組のアーティストが参加し、「現代美術」「パフォーミングアーツ」「ラーニング」の3本柱で展開。ジャンルを横断する多様なアートが鑑賞できます。
芸術監督は、アラブ首長国連邦出身のフール・アル・カシミさん。国際的に注目されるフール・アル・カシミさんのキュレーションに期待が高まります!
芸術監督
フール・アル・カシミ
「あいち2025」は、バラエティに富んだ会場にぴたりとマッチする作品や公演が勢揃いし、アートだけではない楽しみにも満ちています。この芸術祭がみなさんに多彩な感情を湧き起こし、新たな息吹をもたらすことを期待しています。
最も多くの作品・プログラムを展開する会場「愛知芸術文化センター」
「愛知芸術文化センター」では、38組のアーティストが展示、公演を行っています。3つの会場の中で最も多くの作品が集まるので見応え満点です。
観賞するときのポイントは、5つのフロアに展示があるので、すみずみまで見逃さないこと。無料のガイドマップを片手に様々な表現の作品を堪能し、週末には多くのパフォーミングアーツ公演が行われるので、現代美術展の後に、公演を楽しむのもおすすめです。
安心して楽しめる鑑賞サポートも充実し、パフォーミングアーツ公演では、託児サービスや、鑑賞マナーをゆるくした公演日が設置されるなど、様々な人が楽しめる工夫がされています。
それでは、数ある作品の中から編集部の注目をピックアップ!
ムルヤナ
《海流と開花のあいだ》 2019-
10階の入り口すぐに、大規模なインスタレーションを制作したのが、インドネシアのアーティスト・ムルヤナさんです。工場の余剰分やリサイクルされた糸を使用し、かぎ針編みの手法で作られています。ムルヤナさんが思い描く理想の美しい海を色鮮やかな毛糸で、その向こう側にある白化した珊瑚や鯨の骨を真っ白な毛糸で表現。生と死をイメージした対照的な展示で、一気に惹きつけられました!
ダラ・ナセル
《ノアの墓》 2025
レバノン出身のダラ・ナセルさんは、多様な素材を用いて絵画・パフォーマンス・映画などのジャンルを横断した作品を手がけるアーティスト。トルコ・ヨルダン・レバノンに伝わる洪水神話「ノアの方舟」をモチーフにした大型作品を展示しています。版築や日本の藍染めなど、色々な技法が用いられているのもポイントです。
WRITER MATSUDA10階の愛知県美術館や8階の愛知県美術館ギャラリーだけでなく、地下2階のアートスペースや2階の旧レストランスペース、地下1階などにも作品を展示中です! 8階の「ラーニングセンターへたち」では、誰でも参加できるトークイベントやディスカッションなども実施しているので、気軽に立ち寄ってみてください♪様々な鑑賞ツアーの案内は公式サイトで要チェック!
ミュージアムはもちろん、“まちなか”も会場となる瀬戸市
やきものの産地として知られる瀬戸市では、「愛知県陶磁美術館」のほか、名鉄「尾張瀬戸駅」周辺の“まちなか”が会場となっているのが特徴です。
「愛知県陶磁美術館」では、本館だけでなく敷地内の芝生広場やレストランも活用して展示。やきもので表現した作品も数多く発表されています。
観賞のポイントは美術館を丸ごと、ゆっくり楽しむこと。なんと、4つの建物に加えて屋外にも作品が展示されています。オリジナルメニューがそろうカフェや、茶室で週末限定の喫茶メニューを味わうのもよさそう。緑豊かな丘陵地という自然に囲まれた環境で、プチ旅行気分も堪能できます。
シモーヌ・リー
国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
撮影:怡土鉄夫
“黒人女性の主観性”をテーマに多彩な作品を展開するシモーヌ・リーさん。今回は、アフリカで採取した素材を用いた陶の作品をはじめ3点を発表しています。
永沢碧衣
《背負う者》 2018
秋田県出身の永沢碧衣さんは、東北の狩猟・マタギ文化に関わり、自らも狩猟免許を持つアーティストです。素材としてもモチーフとしても、自然の山に向き合ってきたからこそ描ける作品を制作しています。
そして“瀬戸市のまちなか”会場では、「瀬戸市美術館」「瀬戸市新世紀工芸館」のほか、旧銭湯や閉校した小学校、工場なども会場となっていて、まち歩きを楽しみながら様々な作品と出合うことができます。
やきもののまちらしい景色を眺めながら、ロケーションを生かした展示を鑑賞。瀬戸観光とともに1日中楽しめる会場で、フリーパスを購入して何度も訪れたくなる魅力も◎。細い路地も多く、まちの中心地のため、車に気を付けながら歩きやすい格好で巡ってみてください。
ロバート・アンドリュー
《内に潜むもの》 2025
ロバート・アンドリュー
《ブルの言葉》 2025
オーストラリア出身で先住民族ヤウル族の末裔であるロバート・アンドリューさんは、普段は一般公開されていない「株式会社 加仙鉱山」に2つの作品を展示。どちらも瀬戸の土と版築技術を用いていて、最終的に開幕直後とは異なる形態となるのだとか。そのプロセスも作品として楽しむことができます。
佐々木類
国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
《忘れじのあわい》2025
©︎ 国際芸術祭「あいち」組織委員会
撮影:城戸保
石川県を拠点として活動する佐々木類さんは、かつての銭湯「旧日本鉱泉」でガラスや地域の植物を使ったインスタレーションを制作。没入型の展示を堪能することができます。
WRITER MATSUDAやきもので表現された作品など、この地ならではの展示が楽しめる瀬戸市。美術館は気後れして行きにくい…という人も、まちなか会場なら気軽に足を運べますよ。旧銭湯や閉校した小学校など、普段は入れない場所で作品が見られる貴重な機会です!
順次上演される「パフォーミングアーツ」や「ラーニング・プログラム」も見逃せない!
オル太
©OLTA
公演日/10月10日(金)~10月19日(日)※14日(火)は休館
演劇やダンス、舞台などの舞台芸術作品の「パフォーミングアーツ」は、国内アーティスト4作品・海外アーティスト5作品の計9作品が順次上演されています。
“女性”や“労働”をキーワードにした新作『Eternal Labor』を発表するオル太は、2009年に結成されたアーティスト・コレクティブです。九州北岸、対馬海峡、朝鮮半島での滞在を経て、劇場空間をダイナミックかつ遊戯的に活用した内容となります。
マユンキキ+
© Namine Doi
公演日/10月3日(金)~10月5日(日)、10月12日(日)、10月13日(月)
奥三河の天竜川流域や北海道石狩川上流域でのリサーチを重ねて完成した『クㇱテ』。日本の鉄道敷設史上最大の難所の一つと言われた奥三河の三信鉄道の開通に大きな功績を残した測量士であるマユンキキさんの祖父で、旭川アイヌのリーダーである川村カ子トさんの軌跡をたぐり寄せながら創作しています。
「愛知芸術文化センター」では、パフォーミングアーツを毎週末上演するので、見たい作品は事前にチェックして前売券を購入しておくと安心です。「愛知陶磁美術館」で行われるクォン・ビョンジュンの公演は現代美術展チケットで鑑賞できます。
▼パフォーミングアーツチケット情報はこちら
https://aichitriennale.jp/tickets/pa.html
そして、「ラーニング・プログラム」は、5人のラーニングチームによって運営され、“誰もが安心して楽しめる環境づくり”を目指して様々なプログラムを展開しています。拠点のラーニングセンターは、「愛知芸術文化センター」8階と、瀬戸市のまちなかの「旧小川陶器店」にあります。
ラーニングセンターでは、週末に「鑑賞をふかぼる」会がボランティアによって実施されます。様々な視点で芸術祭を楽しむことができるので、興味のある人はぜひ参加してみてください。
ハイブ・アース
国際芸術祭「あいち2025」 展示風景
《瀬戸の版築プロジェクト「凸と凹」》2025
©国際芸術祭「あいち」組織委員会
撮影:怡土鉄夫
さらに、「愛知県陶磁美術館」の「つくるとこ!陶芸館」、芝生広場では、アートとデザイン、そして環境に配慮した建築の融合に取り組むスタジオ「ハイブ・アース」とコラボレーション!土を叩いて固める「版築」という技術を用いて、版築と土をテーマにしたプロジェクトを実施します。
WRITER MATSUDA「愛知芸術文化センター」では公演が、現代美術展と一緒に楽しめるのも魅力。「愛知県陶磁美術館」は「版築」という技術を用いた建築をはじめ、世界的にも著名なアーティストの見応えのある作品が並びます。そして、瀬戸市のまちなかでは、まち歩きをしながら楽しめるなど、会場ごとに異なる楽しみ方ができるのもうれしいポイントです。次回は会場を絞って詳しく紹介します♪
国際芸術祭「あいち2025」
会期
2025年9月13日(土)~11月30日(日)
会場
愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか
時間
各会場によって異なる
チケット料金(一般)
フリーパス/3500円
1DAYパス/2100円
※中学生以下は無料
※パフォーミングアーツについては別途チケットが必要
https://aichitriennale.jp/tickets/pa.html
公式サイト
https://aichitriennale.jp
Instagram
@aichi_triennale
アクセス
詳しくは公式サイトを要確認(各会場シャトルバスの運行はなし)
撮影/竹内恵美 取材・文/松田支信
※掲載内容は2025年10月時点の情報です
※価格はすべて税込みです