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大阪市「放出栄町商店街」周辺に住もう。シャッター街から再生を続ける異国情緒漂う商店街の魅力

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大阪市鶴見区、JR学研都市線・おおさか東線の放出駅近くにある放出栄町商店街は、以前は廃れたシャッター商店街でしたが、今では雰囲気が一変。おしゃれな店が多く集まり、魅力ある商店街へと進化を遂げています。今回は、そんな商店街をプロデュースする株式会社 piantiamoの藤井卓也さんへのインタビューや、商店街の魅力を知るお店への取材を通して、放出栄町商店街周辺に住むことの魅力について考えてみたいと思います。

放出栄町商店街の基本情報

放出栄町商店街の特徴

放出栄町商店街は、JR放出駅から徒歩2分ほどのところに位置する商店街です。駅北口を出て目の前にあるアーケードをくぐり、みゆき通り商店街の路地を曲がると、薄暗い道の先に放出栄町商店街が見えてきます。ここには、いわゆる地元密着型の商店街とは違う、海外映画の世界に迷い込んだかのような異国情緒漂う空間が広がっています。2025年8月時点で26店舗のテナントが入居。雑貨店やレザークラフト工房、パーソナルジム、花屋、イタリアン、家庭料理店、ドーナツ店、韓国料理店、バーなど、さまざまな業種のお店が集まる小さな街のようです。

放出栄町商店街の魅力

実際、商店街を訪れてみて感じたのは、まず立地が良いということ。ハブ駅である放出駅から徒歩5分圏内に個人店が業種が被ることなく集まっていたら、ちょっと立ち寄ってみたくなりませんか?乗り換え駅として利用する方にとっても、商店街近くに住んでいる方にとっても商店街の発展はうれしいことだと感じます。二つ目にここでしか体験できないことが叶うところです。というのも、商店街に入っているお店は、基本的に多店舗展開をしておらず、していたとしても関西にはお店がない、希少性が高いのが特徴です。このようにわざわざ行きたくなるお店がそろっているのも魅力の一つだと思いました。 そして最後に、同商店街の立ち上げと日々の運営を担う藤井さんの働きかけやそれぞれのお店との密なコミュニケーションが商店街全体のを風通しの良さにつながっていると感じました。

放出栄町商店街の運営に携わる藤井卓也さんにインタビュー

2022年からスタートした、放出栄町商店街の再生プロジェクト

―本日はよろしくお願いします。まずは放出栄町商店街の再生プロジェクトに藤井さんが携わるまでの経緯を教えてください。
藤井さん:僕は株式会社 piantiamoという会社を経営しています。その会社では、食品の卸、食品製造工場の運営、直営店の運営に加えて設計や施工の独立開業をお手伝いするコンサルティング事業にも取り組んでいました。ですが、コロナ禍に入り、独立しようとする人も現れず、事業全体が停滞してしまいました。そこで元々東大阪市にあった直営店を自宅近くの放出に移し、この場所を管理していた方とのご縁もあって2022年から商店街の開発に関わるようになったのです。

―放出栄町商店街は、当時どんな様子でしたか?
藤井さん:当時は本当に廃墟みたいな雰囲気で、僕のお店以外はシャッターが閉まっていました。だから逆に僕は手を加えやすかったです。せっかくイチからつくれるのだから、旧態依然とした商店街にしたくないという思いもあり、商店街全体が独自の空気感を出せるよう、まずは外壁のデザインを統一するところからスタートしました。そして2022年にはインフラを整え、お店の区画割りもして、テナント構成を考えながら募集に応募してくれた店舗と面談。今年で関わりはじめて3年半になりますが、商店街事務所、2階も含めて26店舗が商店街に入っている状況です。

―そもそもシャッター街だったところにお店をつくるのはかなり勇気のいることだったと思います。躊躇はしませんでしたか?
藤井さん:それは僕の性格やろうね。市場の最大公約数を狙うタイプじゃない、というか。 何もないところに新しい市場をつくりたいという仕事感があったので躊躇はなかったです。

―商店街のムードをつくるための工夫、テナント選びにおいて重視していることはありますか?
藤井さん:テナント選びでは、店主の人間性を大切にしていて、 商店街のコンセプトでもある「付加価値」を理解してくれる人を選んでいます。安いものを出すよりも、良いものを手間をかけてつくっているようなお店ですね。あと商店街内で業種のバッティングをしないようにもしています。放出栄町商店街は風がよく通るので、飲食店の臭いや音の問題も考えるポイントですよね。すべてのお店に気持ちよく営業してもらえるような店選びはかなり心がけています。当時、募集をした時は、応募がすぐにいっぱいになってしまいました。その理由はいくつもあると思いますが、一つは元々放出周辺に住んでいる人たちが自宅から近いという理由で物件を選んだから。そしてもう一つは、最近若い子たちが昭和のレトロ物件を探している傾向にあるのではないかということ。かえって古いものが新鮮に映るのかなあ?この商店街は1958(昭和33)年築で相当古いんですけど、そういうこともあって昔からあるものを極力残すようにしています。例えば、通報機も使わないけどあえて残したり、トタン屋根を汚れたままにしているのは夜に色っぽく映るから!あと景観維持のために、メニューボードは1店舗につき一つのみとしています。ファサードデザインも僕の許可が必要。このように一定のルールを設けていてそれは、サブリース形態といって僕が物件を一括で借りて、テナントの募集や契約、インフラの管理などを一貫して行なうことができるからこそ、商店街全体の統制を図りやすいです。

―藤井さんが感じられる放出の街の魅力について教えてください。
藤井さん:正直僕もまだ探している最中なんだけど…。だって放出は有名な場所があるわけでも有名なローカルフードがあるわけでもない。強いて言うなら駅近の立地に手つかずの廃墟があった、ということが僕にとっての一番の魅力かな。放出駅から来ると、みゆき通りはほぼシャッター街。でも1本入ったら全然雰囲気の違う小さな街が広がっている。そういう異質な空間を今後もつくっていきたいと思っています。

―では最後に今後の商店街再生計画を教えてください。
藤井さん:現在は1〜5棟を管理しているんですが、今後はもう少しお店を増やしていきたいです。引き続きバッティングしない業種を選ぶのでまだない業種として民泊を考えています。放出駅は降りる理由はないけども乗り換える需要がめちゃくちゃ高いんです。おおさか東線で新大阪、梅田(大阪駅)まで行くこともできるし、奈良まで直通で行ける。また学研都市線を使ったら、松井山手から京橋、北新地、尼崎や宝塚にも行けますし、もう少し足を延ばせば神戸にも行くことができる。インバウンド客であれば、街のイメージは宿泊にあまり関係ないじゃないですか。 だからこそ民泊をつくってみたいなと思っています。

お店に聞く!放出栄町商店街の魅力

商店街内で2店舗目を任せたいお店[bar cent]

沖縄・宮古島にある「晩酌屋しーた」「島おでんトナリノ」、放出栄町商店街内にある「南国酒場PORCO」の系列店「bar cent」が9月上旬にオープン。4店舗をまとめる店主の野崎直哉さんは、「お酒と一緒にゆっくりとした時間を過ごしてほしい」という思いから、バーでありながらカウンターだけでなくソファ席を設けたり、古道具を配したりして、カントリーなムードをつくり出す。そんな店内では、20種以上のテキーラや国内外から仕入れたウイスキーなど幅広いラインアップを取りそろえる一方、野崎さんの出身地でもある沖縄のローカルフード・タコスも楽しめる。2025年から放出栄町商店街にお店を構え、はや9ヶ月(取材は8月末)。「はじめてこの商店街を見た時、映画セットみたいでかっこいいなと思い、入居を決めました」と野崎さんは当時を振り返ります。

沖縄から仕入れる生地を使い、沖縄流のもっちりタコスを再現。タコスには、定番のトマトチリソースや爽やかなサルサソースが添えられ、さまざまな食べ方が楽しめるのもうれしい。注文は、タコス1個450円から注文可能!

店名:bar cent(バー セント)
住所:大阪市鶴見区放出東3-22

ここのドーナツはおいしいんですっ!

ケーキ店や焼き菓子店での勤務、東大阪市の有名ドーナツ店「sonnet」(ソネット)での修業を経て独立した藤田万理さんのお店。藤田さん自身がお気に入りの手ごねドーナツは、プレーンやシナモンシュガー、チョコなどレギュラー5種以上が並び、ドーナツだけでなく随時焼き上げるクッキー、マフィン、タルトなどの焼き菓子もバラエティー豊富にスタンバイ!また2階のイートイン席ではドリンクと一緒に楽しめるのもうれしい。同店は、2022年の商店街再生プロジェクトの開始時から入居。藤田さんは、現在に至るまでの商店街の変化に驚きつつ、今後の商店街がどんな風に変化していくのか、楽しみだと話てくれました。

2階にはテーブル席が設けられ、自然光の入る心地よい空間
大きな木臼で材料を手でこね上げ、空気を含んだ状態のままショートニング(固形油)で揚げると、ザクザク食べ応えのある食感に仕上がるという。写真は手ごねプレーンドーナツとホットコーヒで合計580円。コーヒーは、山口県のコーヒー専門店から仕入れる「徳山コーヒーボーイ」の豆を使用。大阪でこのコーヒーを仕入れているのは同店のみ!

店名:mitswa(ミツワ)
住所:大阪市鶴見区放出東3-22-10
電話番号:06-6180-9328
営業時間:11:30~18:00
定休日:月・火不定
SNS:@mitsuwa_doughnut

目掛けて行きたくなるフラワーショップ

店主・オクダトモコさんが営むフラワーショップ兼アトリエでは、ひまわりやカーネーションなど、定番のラインアップに加え、ベッセラやアマランサスといった珍しいお花も取りそろえる。店内には、そんな花々が空間を縦横目いっぱいに使ってディスプレイされ、2階からドライフラワーが飾られていたり、窓際には観葉植物が吊り下げられていたり…とどこを見ても美しく飾られる。そんなお店づくりは、ブライダルのディスプレイや百貨店のポップアップを手がけてきたオクダさんならではのテクニックだ。またお花や植物の販売だけでなく、定期的に開催されるフラワー教室も人気で遠方から同店を目掛けて訪れる人も多いとか。

2階に吊るされたディスプレイ用のドライフラワー。ドライにする方法や手入れの仕方も教えてくれる

店名:Hanayag(ハナヤグ)
住所:大阪府大阪市鶴見区放出東3-22-12
電話番号:080-4568-8789
営業時間:10:00〜18:00(日曜は〜16時)
定休日:木曜
SNS:IG@ hanayag_by_tommyworks

放出栄町商店街のイベント・お祭り

放出ビアフェス

商店街内で行われる「放出ビアフェス」は、全国のクラフトビールメーカーが集い、自慢のビールが楽しめるイベントです。商店街内の一部飲食店や販売店では、そんな種類豊富なビールに合うようおつまみやフードも準備され、さらにはDJを迎えた音楽ライブも人気のイベント!年に複数回行われるビール好きにはたまらないイベントとなっています。

アクセスと周辺スポット

乗り換えに便利な放出駅

放出駅は、大阪市と東大阪市の境に位置する、JRおおさか東線と学研都市線の駅です。おおさか東線は、大阪駅と久宝寺駅をつなぐ路線で、新大阪駅まで約16分。学研都市線はJR東西線に直通しており、北新地駅まで約12分でアクセスが可能です。

放出栄町商店街周辺の注目スポット

駅周辺に集まる、中規模な公園群

放出駅周辺には、いくつかの公園があります。駅の南にあるのは放出駅南公園と放出駅南第二公園。北側には、放出小公園、放出西三公園、放出公園、西放出公園などが点在しています。また車を走らせると、大阪城公園や鶴見緑地公園が15分圏内にあるので、週末にお子さんを連れて出かけたい方やランニングやテニスなどを楽しみたい方には打ってつけの環境と言えます。

子育てをサポートする、子ども・子育てプラザ

大阪市鶴見区では、子育てへのサポートが充実しています。その一例に、「子ども・子育てプラザ」の存在があります。子ども・子育てプラザは、子どもの成長と子育てする親へのサポートを主軸においており、サークルやサロンを通した子育てに必要な情報提供や、子どもが遊ぶ場所の開放、イベントや各種教室の行事を実施。子育て支援講座や講演会、セミナーなどの開催など、子どもにも親にもうれしいサポートもあるようです。

放出栄町商店街周辺に住む魅力

放出栄町商店街周辺にはどんな人が住んでいる?

放出駅周辺は、主要都市へのアクセスがいい上に、比較的家賃が安いことからファミリー層だけでなく、一人暮らしをしたい方にもおすすめです。

街との接点が広がるチャンス!?

前述の通り、放出栄町商店街には26のお店が入居しています。業種がさまざまだからこそ、シチュエーションに合わせた商店街の利用方法が想定できます。例えば、友人へのプレゼントとしてお花屋へ行ったり、ちょっと夜ご飯づくりを休みたい時には発酵惣菜店でおかずを買ったり、おやつにドーナツを買って帰るのもいいかもしれません。また各店、親しみを持って接してくださる店主さんが多く、お店間のコミュニケーションも盛んです。今後商店街を利用する機会が増えれば増えるほど、街や人との接点が増えていくかもしれませんね。

放出駅周辺の家賃相場・不動産価格相場

放出駅周辺の家賃相場は、ワンルーム6.27万円、1K5.76万円、1DK5.87万円、1LDK7.88万円、2LDK13.18万円、3DK11.80万円、3LDK13.91万円となっています。1DKの相場を周辺駅と比較してみると、京橋駅は6.67万円、鴫野駅は6.05万円、徳庵駅は5.62万円、鴻池新田駅は4.72万円となっています。

<放出駅周辺の家賃相場>
ワンルーム:6.27万円
1K:5.76万円
1DK:5.87万円
1LDK:7.88万円
2LDK:13.18万円
3DK:11.80万円
3LDK:13.91万円

< 放出駅周辺の不動産価格相場>
中古マンション:2,382万円(専有面積70m2の場合)
中古一戸建て:3,094万円(建物面積100m2の場合)

取材・文/葭谷うらら(インセクツ)、撮影/三宅愛子、大丸大樹(Hanayag)

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