財布を開かず資源が回る?無料で未来が回りだす期間限定“循環スポット”【福島県郡山市】
家庭で使われなくなった日用品などを無料で持ち寄り、希望者に無償で引き渡す「リユーススポット」が福島県郡山市内に開設されている。市民が不要品を譲り合うことで、ごみを減らし資源として循環させる取り組みだ。ごみ排出量が中核市で最も多いという課題を抱える中、市はこの試みを、誰もが参加できる減量策として期待している。
使わない物を無料で譲り合う「リユーススポット」
不要になった日用品や家具などを無料で持ち込み、希望者に無償で引き渡す郡山市の「リユーススポット」事業が、11月から富久山クリーンセンターで始まっている。昨年度の実証実験が好評だったことから、今年は年をまたいで1月23日まで常設として実施する。持ち込みや引き取りは無料で、市内家庭で使用された物に限る。引き取りのみの来場も可能だ。昨年度は、陶器や食器、CD、スポーツ用品、家具など 計4万9369点(約20トン) が集まり、その多くが再利用された。家具は特に人気が高く、ソファなど大型品も早期に引き取り手が見つかったという。引き取り手がつかない品も分別してリサイクルされ、廃棄物にならない仕組みが整っている。
ごみ排出量ワーストの課題に、参加型の解決策
郡山市では現在、全国の中核市の中で一人当たりのごみ排出量が最も多い。震災後にごみが増えた自治体は少なくないが、郡山市の場合は高止まりが続き、2023年度は最少の八王子市の約 1.6倍 にのぼる。市は2027年度までにごみを20%削減する目標を掲げ、一人当たり一日100グラムの減量を呼びかけている。学校での減量教室や啓発動画の配信と併せ、リユース事業を「市民が直接参加できる対策」として期待する。富久山クリーンセンターの会場には、食器などの日用品、本、子ども用品、タンス、飾り人形、スキー板などの季節用品など多彩な品が並び、小規模な雑貨店のような光景が広がっていた。筆者も訪れ、保存食作りに使える密閉瓶を2点、無料で譲り受けた。購入を検討していた品に偶然出会い、“掘り出し物”を見つけた感覚だった。
“使わずに眠る物”を手放すきっかけに
また、筆者はその際同時に、未使用のCD-ROM約20枚を持ち込んだ。「いつか使うかもしれない」という淡い期待を長らく持っていたが、これを機会に「誰かの役に立つかもしれない」という期待を寄せて手放すことにした。
ただの節約ではなく、資源を循環させる喜び
無料で必要な物を手にできる経済的利点だけでなく、自分の不要品が別の家庭で再び役立つ喜びもある。ごみの削減は行政だけで進むものではなく、一人ひとりの行動がまち全体を変えていく。年末年始の片付けを機に、「捨てる前に譲る」という選択が、循環型社会への一歩となりそうだ。
参考資料:広報こおりやま(2025年12月号)