【高知家の後継者募集】地元と共に歩んだコンビニを引き継ぐ!清流吉野川を望む高知県本山町の「Yショップ本山店」
高知県の中央部を流れる吉野川の上流に沿って広がる本山町は、山と川と人とが寄り添うように暮らす場所だ。
晩秋の朝。谷を包む霧が少しずつ晴れていくと、川面がきらめき、遠くの山々が一枚ずつ幕を開けるように姿を見せる。
午後には、町全体がやわらかな黄金色に包まれ、遠くの山は赤や橙に染まり、吉野川の水面はその彩りを鏡のように映す。
風が吹くたび、落葉が舞い上がり、空へと吸い込まれていくようショップ
「Yショップ本山店」は、その吉野川の畔に立つ。
店の前を国道439号が走り、対岸には帰全山公園が広がる。
公園北側には「モンベル アウトドアヴィレッジ本山」が立地している。
「昔は多くのお客さんが来店して、それはもう忙しかったですよ」
店主の畠山和義さん(78)が往時を振り返る。
父・茂雄さんの酒屋を継いで、平成10年にYショップをオープンさせた。周辺では唯一のコンビニに、地域の老若男女が大勢来店した。
最も忙しかった思い出はクリスマスケーキ。24日には予約のケーキを配達するのにてんてこ舞いだったそうだ。
店独自の商品も開発した。食材を調達して店舗内で作る「オリジナルハンバーガー」。付近の学生をはじめ、県外客にまで評判となり、毎日すぐに完売する大人気商品だった。「若いころ、Yショップのハンバーガーをよく食べた」という地元住民は数多いという。
ピーク時には年商が1億円を超えていたそうだが、酒類の規制緩和や競合店舗の出店などが響いて、最近は売上高が減少。「高齢に加えて、病気で体調もすぐれない。誰かに後を任せたい」として、広く後継者を募ることを決断した。
店舗のある敷地は吉野川の河畔にあり約300坪と広い。約40坪の店舗は敷地に下駄をはかせて国道に面した造りになっている。階段を店舗下に降りると、吉野川の雄大な景色が一望できる。今の店舗は川が見えない形状になっているが、川側に窓を開けると、その情景も楽しめそうだ。
「この立地条件を生かせば、色んな可能性が広がると思う。自由な発想で、今の商売をリノベーションして、新たな商店に生まれ変わらせてほしい」
店舗下から見える吉野川を見つめながら、畠山さんが力を込めた。
本山の自然は、けっして派手ではない。しかし、静かで、深くて、心に沁みる。
山々や川が織りなす大自然そのものが、住民の暮らしを見守ってきたことを物語る。
地域と共に歩み、人々の生活に寄り添ってきたYショップも、そんな存在だったのではないだろうか。
この店舗に新たな息吹を芽生えさせ、次の世代に繋げるような、素晴らしい出会いに期待したい。
店舗情報
Yショップ本山店
住所:高知県長岡郡本山町本山525-3
経営は上手く行っているのに、後継者がいないために廃業せざるを得ない――そんな悩みを持つ企業が全国的に激増し、大きな社会問題になっている。
高齢化先進県である高知県は全国に輪をかけて、事業承継の課題が山積している。
「県内での事業承継を少しでも増やしたい」。このコーナーは、事業を譲りたい人と受け継ぎたい人を繋ぐ連載です。
高知県事業承継・引継ぎ支援センター
電話:088-802-6002
メール:kochi-center@kochi-hikitsugi.go.jp
担当:横山、野本