【中学受験伴走】冬期講習&直前期 「合格した子」の親がやっていたこと
2024年、中学受験の伴走を終えた教育ジャーナリスト・佐野倫子さんによる「中学受験伴走」連載。今回は冬期講習から入試直前期に「知っておきたい」親ができるサポートをお届けします。
中学受験 読んでおきたい作品リストとは?中学入試直前期の今、「本当に必要な親が子どもにできるサポートの情報」が集まりました!2024年に中学受験伴走を終えた、教育ジャーナリスト・佐野倫子です。6年生の12月。いよいよ最後の冬期講習や正月特訓。そして終わったと思えば、関西エリアや千葉・埼玉県では、年明けから一般入試がついにスタートします。
私も2024年の2月中学受験を終えましたが、去年のこの時期、焦る気持ちから無駄に右往左往していました……。そして約1年が経ち「これはあのとき知りたかった!」という情報が、伴走終了組や取材した塾の先生方から集まってきました。
「中学受験伴走」連載、今回は「入試直前期に親ができるサポート」についてお届けします。
佐野倫子(さの・みちこ)
東京生まれ、早稲田大学卒。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。おもな著書に『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。2人の男の子の母。
後期はミスに向き合い解き直す
いよいよ中学受験直前期! しかし多くの親御さんが「あと30日で本番!? まだまだやることが目白押しだし、理科と社会の暗記はまだ穴だらけだし……」と不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。かくいう私も、2023年の冬、仕事の合間に必死でスケジュールを立てたり準備をしたり、てんやわんやでした。
勉強は総仕上げの時期ですから、受験生の学力は「もう親があれこれ勉強を教えることはできない」というレベルに達しているはず。しかしそんな中でも保護者ができるサポートがたくさんあります。取材中、こぼれ話として伺った情報をシェアしたいと思います。
大手塾講師・理科担当:「6年生の後期に行われるいわゆる合格判定模試は、基本的に複数回で重要な単元を網羅できる仕様になっています。つい合格判定のパーセンテージに目を奪われがちですが、弱点をあぶりだすために非常に有効なテスト。ここで間違いが多かった単元を洗いだして、重点的に復習をしてください。それぞれの塾が膨大なデータを用いて作成した、いわば疑似入試問題です。使い倒す! という気概で、間違えた問題をコピーしてノートに貼ったり、短冊にて箱に入れたり、ファイリングしたりして、お子さんが思い立ったらすぐに、ストレスなく見直せるようにサポートをしてあげてください」
子どもは基本的に間違えた問題の解きなおしは好きではありません。しかし一度間違えた問題というのは、考え方の癖が出ているもの。これをピンポイントで復習しない手はありません。
過去の模試や授業で解いたばらばらのプリントをひっぱりだしてきて、ミスに向き合うという面倒な作業のハードルを可能な限り下げてあげましょう。直前期、とても有効な「穴を埋める勉強」になります。
直前期・苦手な単元の復習も塾に相談を
大手塾講師・算数担当:「小6の冬期講習は、カリキュラムのなかでもっとも難易度が高い問題まで扱います。対して1月になると、総点検に移行していくイメージです。それだけに、いかに授業で集中しきるかが重要になってきます。実戦形式で問題を解く時間も増えますから、お子さんに『家庭学習が短くて済むように、わからないこと、間違えた問題は授業中にどんどん質問したり印をつけたりすることで復習時間を短縮していこう』と声をかけてください」
6年生後期は、まさに時間との勝負。塾にいる時間も増えますから、そこで集中することがこれまで以上に重要です。
ときどき「直前期はもうほとんどの単元を習っているので、塾に行かずに独自で穴を埋めたほうがいいですか?」と相談を受けますが、個人で苦手な単元を埋めるにしても、塾に相談したほうがいいと私は考えます。
保護者の方が直前期に適切な計画を立てつつ、家庭のみでそれを遂行させるのはややハードルが高いでしょう。その場合でも、個別指導塾や家庭教師など、第三者の意見やペースが反映されたほうがいい結果につながるように感じました。
また、直前期の塾では子どもたちのテンションも高まっていきますから、通塾することで周囲と一緒に団体戦のように緊張感を高めていけることもメリットです。
お弁当も予行演習のつもりで
正月特訓などはお弁当を持参する塾も多いと思います。その時間は子どもがほっとできるように、我が家では保温できるスープジャーやホットサンドメーカーなどを使ってお弁当を工夫していました。すばやく糖分を補給できるように、お弁当にミニ羊羹やラムネを入れてみたり。
入試本番でお弁当が必要な学校もあるので、当日の予行演習のつもりで、同じメニューを試してみるのもおすすめです。
サーモスのスープジャーは保温性抜群、汁もれも心配なし! スープや豚汁、カレールーをいれたり、大活躍しました。 画像提供:佐野倫子
体調管理は保護者ミッション! 睡眠時間はしっかりと
我が家の場合は受験生のころ、ちょうど成長期が重なり、いくら寝ても眠い、という状態に……。それなのにやることは目白押し、塾では授業のあと質問にいくなどして、就寝が23時近くになることも。
思い切って塾の先生に「授業中眠そうにしていませんか? 8時間は寝ていますが、もっと寝たほうがいいですか?」と相談。先生は「身長が伸びる時期ですね、8時間確保できているのであれば、最低限は足りています。でも授業で寝てしまうくらいなら思い切って15分昼寝をしたり、少し早めに就寝したりしましょう。眠くて集中できない、というのがもっとも非効率です」とアドバイスいただきました。
健康を害したり、授業で寝てしまったりするようであれば潔く眠る。直前期はそのくらいの気構えが必要ですね。
また、同じく我が家の例で恐縮ですが、例年花粉症が2月から始まるのでかかりつけの耳鼻科に通い、早めに眠くならない薬の処方をお願いしておきました。11月にはインフルエンザの予防接種を家族で打ち、手洗いうがいはこまめに。念のために秋に歯科検診も済ませました。できれば冬休みまでに、そういったことを済ませておけるといいですね。
直前期「暗記の黄金タイム」の具体的活用法とは
なんといっても直前期、一番「底上げ」ができるのが暗記分野。とはいえ、今から新しい暗記ノートを作ったり、参考書を買ったりするのは得策ではありません。
我が家では、過去のテキストのなかから、知識が効率よくまとまっている暗記に適したページを切り取って単元ごとにファイルし、持ち歩いて隙間時間に繰り返し見られるようにしていました。
たとえば社会なら地理、歴史、公民にわけ、さらに年号や白地図、公民の制度をまとめた図などは壁に貼ったり語呂合わせを書き込んだりも。このころになると隙間時間をいかにうまく使うか、いかに繰り返し目に触れさせるかの勝負。勉強自体を教えられなくても、保護者ができるサポートはたくさんあります。
SAPIX卒業生の伴走ママ:「抜けが気になる理科の不完全変態の昆虫リストは語呂合わせで『かっとばせ鈴子!』(カマキリ・トンボ・バッタ・セミ・スズムシ・コオロギ)と家族で唱えたり、トイレに分類表を貼ったり、もはや力業。たぶん1年後は覚えていないだろうなと思うこともあって複雑でしたが、直前期、暗記ができてぐっと伸びる子もいるのであきらめないで毎日繰り返しました。また社会の時事問題対策で、秋になると直近のニュースまでをまとめた冊子が書店に並ぶので、気分転換にそれを読み物として読んでいました」
もちろん勉強をするのは本人です。しかし暗記しなくてはならない分野は膨大なので、隙間時間や移動時間を上手に使えるようにサポートしてあげるのがいいですね。
写真は6年間、SAPIXのすべての教材を取っておいた中受伴走ママ友からの1枚。6年間の教材は子どもの身長の何倍にも。
───◆──◆───
直前期こそ保護者の腕の見せ所ともいえそうです。長い受験勉強のラストスパート。時間がないからこそ、お子さんが勉強に集中できるように家庭でサポートができれば鬼に金棒ですね。
すべての受験生が、悔いなくゴールテープを切れるように、心から応援しています。
取材・文/佐野倫子
『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)