俵万智、AIがつくる短歌、人がつくる短歌の違いを語る
大竹まことがパーソナリティを務める「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送・月曜日~金曜日13時~15時30分)、5月7日の放送に歌人の俵万智が出演。発売中の著書『生きる言葉』でも触れられている、短歌とAIの関係について語った。
大竹まこと「今回は『生きる言葉』(著・俵万智)という本を紹介しながら、いろいろと伺っていきます。きょう番組の冒頭で、AIの話が出てきて。AIの大竹まことがこんなことを言っている、と。俵さんの本にも、AIが歌をつくったと」
俵万智「はい。いま上の句というか最初の五(文字)を入れるとササササ、と数秒で百首ぐらいAIが歌をつくるんですよ。イヤになりますね(笑)」
大竹「それはどういう入力の仕方なんですか?」
俵「たとえば『花束を』と入れると、それに続く七五七七をつくってくれる。そういうのができていて。人間としてはどうしたものかと思いますけど、AIは言葉から言葉を紡ぐもの。私たちは心から言葉を紡ぐんだぞ、と。AIが100紡ぐ隣で私たちは0から1をつくりたい。そんな気持ちです」
大竹「AIとの違いみたいなものは出てきますか?」
俵「そうですね。冒頭で大竹さんが『人を励ますAI』とすごくいいことを言っていて。決して相手を否定せず、寄り添い、肯定して。あれってやっぱり、かつていろんな人がいろんな会話をする中で、悩んでいる人には否定せず、受け止めて寄り添うのが良かった、という知恵があるわけですよね」
大竹「なるほど」
俵「その知恵自体は人が考えたものです。知恵を学習したAIということだから、最初のいろいろな失敗はあったかもしれないけど、人の悩みを聴く中で思いついたことをAIに学習させている。最初の一歩は人間の力かな、と思いましたね」
水谷加奈「AIがつくったもので、本で紹介されているんですけど、病気であまり家から出られない。早く元気で自由になりたい、こんな自分に短歌をください、という方がいらっしゃって。その方に対するAIの短歌が『自由と呼ぶのは君が君のためにつくる小さなケージだけど』っていう歌をAIがつくってきた。それに対して俵さんがギョッとした、と。どういうことですか?」
俵「病気で外に出られないという人に対し、君の考えている自由というのは外に出ることなんだね、と。でもそれを自由だと思っている限り、それ以上の自由はないし、それって自分をケージに閉じ込めることになるんじゃない? と、AIは言っているんですよ。なんちゅうことを、と最初、思ったんですね」
水谷「はい」
俵「でもその人が外に出られないことを不自由と感じていることを、優しく否定してくれて。出られないことを不自由と思うんじゃなくて、家にいることの中にも自由があるんじゃない? ということをもしかしたら言っているのかな、とも読める。いろいろ読めるんですよ。ただAIはそういうつもりだったわけではない、と思うんですね。歌はそれをどう受け止めたか、ということで初めて人の心のものになる、というところがある。感傷の部分はやはり人のものなんですね」
水谷「AIも歌に関しては『まだ』という感じですか?」
俵「AIがすごい歌をつくる、ということはあると思います。ただその歌のすごさを理解したり、良さを味わって心の糧にしたり、ということは人間の心の働き、ということかな、と思います」