岡田有希子「二人だけのセレモニー」竹内まりや3部作に続く尾崎亜美の新しい世界!
岡田有希子デビュー40周年!7インチシングル・コンプリートBOX 発売記念コラム vol.4
A面:二人だけのセレモニー
作詞:夏目純
作曲:尾崎亜美
編曲:松任谷正隆
B面:PRIVATE RED
作詞:売野雅勇
作曲:山川恵津子
編曲:大村雅朗
岡田有希子4枚目のシングル「二人だけのセレモニー 」
岡田有希子が1985年の年が明けて間もなくリリースした4枚目のシングルが「二人だけのセレモニー 」。前年9月、歌手としては育児休業中だった竹内まりやがデビュー曲「ファースト・デイト」「リトル プリンセス」と続けて書き下ろしたシングルA面3部作が「-Dreaming Girl- 恋、はじめまして」で一区切りとなり、早くもファーストアルバム『シンデレラ』がリリースされている。
しかも、シングルA面の既発2曲を除けばすべてオリジナルの新曲だった。なんというポテンシャルの高さだろう。それを可能にしたのはもちろん彼女自身の努力に他ならないわけだが、やはりねらいの確かな優秀なスタッフによるバックアップも大きい。
プロデューサーの渡辺有三とディレクターの國吉(当時:飯島)美織を中心とするスタッフの方針としては、シングルは基本的に(デビュー曲以外は)すべてアルバム用に録音した曲からセレクトしていたのだそうで、事実「二人だけのセレモニー」は2ヵ月後の3月にリリースされた彼女のセカンドアルバム『FAIRY』の中核をなす曲となっている(B面の「PRIVATE RED」はアルバム未収録)。
作曲は、後輩歌手への提供実績もある尾崎亜美
作曲は尾崎亜美にバトンタッチし、これはかなり順当な人選。同じキャニオン・レコード(現:ポニーキャニオン)所属のシンガーソングライターであり、金井夕子、岩崎良美と、キャニオン所属の後輩歌手への提供実績もある。もっとも、同時期(1984年)の尾崎によるアルバム『PLASTIC GARDEN』を聴くとニューウェイヴを経由したかなり実験的な作風で提供曲とはまったく対照的。
「二人だけのセレモニー」は歌い手が初々しい気持ちをたっぷり込められるよう想定されており、そこは見事な職人ぶりだ。松任谷正隆のアレンジの力もあって、結果的にはアルバム『FAIRY』の先行シングルとして、これまでの世界観を継承しながら新たな展開を期待させる仕上がりとなった(跳ねるような曲調は90年代に流行する元気系のハシリのようにも思えるが、どうだろうか)。
ちなみに、同じ1985年1月末には尾崎が初めて松田聖子にシングル曲を書き下ろした「天使のウィンク」もリリースされており、このあたりの時系列はなかなかにめまぐるしい。本作が作詞家デビューだという夏目純はあまり表に出ることのない方のようで情報が少ない。なんでも尾崎がパーソナリティを務めるラジオ番組に投稿してくるハガキ職人だったところを大抜擢されたのだそうで、ちょっと思い切りが良いというレベルをはるかに超えている人選だ。アイドル歌謡としてあまりにも完成度が高く、逆に当時ラジオでどんなネタを投稿をしていたのかが気になってしまう。
これまでの楽曲とは一転した文学的な世界観を見せる「PRIVATE RED」
B面の「PRIVATE RED」はやはり初参加となる作詞:売野雅勇、作曲:山川恵津子のコンビによる楽曲。山川は小泉今日子の「100%男女交際」でレコード大賞編曲賞を受賞する前の年で、同じコンビによる岩崎良美の「オシャレにKiss me」(1983年)と同じくアレンジは大村雅朗に託されている。売野はちょうど(やはり同じキャニオンの)チェッカーズのプロジェクトがノリにノっている頃。
このあと、岡田有希子とスタッフを同じくする堀ちえみの楽曲で多く起用されることになるため、彼女のために書かれた歌詞はこの1曲だけだという。これまでのウキウキした楽曲とは一転した文学的な世界観。飾らない日常を飛び出し、少女から大人へ喪失していく様子が徐々に俯瞰になって展開していくという実に高度な歌詞である。
大村のアレンジもその緊迫感を強調したもので、これは確かにアルバム『FAIRY』の本編には混ぜられない独特の雰囲気だ。しかしそれも彼女は堂々と歌いこなしてみせる。“どんな曲が来ても自分の色に変えて表現出来る力がある” とはディレクター・國吉の言葉。初期3枚のティーンエイジ・ポップス路線の世界にとどまらず、シングルのAB両面で異なる振り幅を出せるアーティストに成長していた。
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2024年8月22日発売
品番:PCKA-18
価格:¥19800(税込)
限定生産商品