童謡に出てくる<ケラ>ってどんな虫? 泳ぐ・潜る・飛ぶ!スーパー昆虫
ある日、息子が学校で覚えてきた歌「手のひらを太陽に」を口ずさんでいました。
「ミミズだって、オケラだって、アメンボだって〜」という、あの有名なフレーズを聞いて、私はふと思いました。
今の子どもたちは、実際に「ケラ」を見たことがあるのだろうか?
ケラは、ミミズやアメンボのように身近で見かけることは少ないですが、実はとても多才で、興味深い特徴を持った水辺の昆虫です。
ケラとは? 出会える時期はいつ?
ケラはバッタ目・ケラ科に分類される昆虫で、体長3センチ程のコオロギに近い仲間です。
英語では「Mole cricket(モグラコオロギ)」と呼ばれており、モグラのように主に土の中で暮らしています。そのため、お目にかかることが比較的に少ない昆虫です。
コオロギのように羽をこすり合わせ、地上に聞こえるくらいの音で「ジージー」と鳴きます。そんなケラに出会いやすいのは春から初夏にかけて、田植え前の田んぼを「代かき(しろかき)」する時期です。
田んぼに水が入り、土がかき混ぜられると、土の中に潜んでいたケラが水面に浮かび上がってくるのです。
ケラの驚くべき運動能力
ケラは、歩く・潜る・泳ぐ・飛ぶのすべてができる、水陸空対応のスーパー昆虫。その万能な運動能力の秘密は、ケラの体を観察してみるとよくわかります。
ケラの体は水をはじく細かい体毛で覆われており、そのおかげで水に浮くことができます。
さらに、力強い前足を使って水をかきながら、器用に泳ぐことができるのです。
土に潜る姿はまるでモグラ
ケラの前脚は熊手のような形をしており、土を掘るのに最適です。
ケラを土の上に置くと、瞬時に前脚を動かし始め、地面に潜ります。手のひらにも乗せてみると、指の間に前足を差し込んで、掘ろうとする姿が見られますよ。
土を器用に掘り進む姿は、まるで“小さなモグラ”を見ているかのようです。
その動きは見ていてとても面白く、子どもも大人も夢中になって観察してしまいます。
さらに驚くことに、ケラは空を飛ぶこともできます。夜になると、背中の羽を使って飛び立ち、パートナーを探しに出かけます。
なんとも多才な生き物です。
近年、数が減少しているケラ
かつては田んぼや畑のあちこちで見られたケラですが、近年は田畑や湿地が減少し、その姿を見かけることが少なくなってきました。そのため、今の小学生たちは「歌では知ってるけど、実物を見たことがない」という子がほとんどでしょう。
それだけに、見つけたときの喜びはひとしおです。今日もどこかでケラは土の中を掘り進み、泳ぎ、飛び、力強く生きています。
そんな姿を想像すると、思わず「ミミズだって、オケラだって……♪」と、あの歌を口ずさみたくなってきます。
(サカナトライター:草間あやめ)