犬に絶対与えてはいけない『生もの』6選 誤食してしまったときの応急処置まで
犬に絶対与えてはいけない生ものは?
犬の健康を守るために、絶対に与えてはいけない生ものがいくつかあります。これらを犬に与えると、健康に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
生ものとは、加熱や塩蔵などの加工がされていない、生の食品のことを指します。一般的には、生の魚介類や肉を指すことが多いですが、広義では生の野菜や果物も含まれることがあります。
では、具体的にどのような生ものを犬に与えてはいけないのか、一緒に見ていきましょう。
1.生の魚介類
生の魚介類(魚、貝、イカ、タコ、カニ、エビなど)には、チアミナーゼという、ビタミンB1を分解する酵素が含まれています。そのため、生の魚介類を犬に日常的に与えたり大量に与えたりすると、ビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性があります。
ビタミンB1欠乏症は、ふらつきや痙攣、食欲不振、嘔吐などの症状をもたらし、重篤化すると死亡することもあります。チアミナーゼは加熱すると不活化しますが、イカやタコ、貝は消化が悪いため、加熱したものであっても犬に与えるのは避けるべきです。
また、サバ、カツオ、サンマ、サケ、アジ、イカなどには、アニサキスの幼虫が寄生していることがあります。アニサキスの幼虫が寄生した魚介類を生で食べると、食中毒(アニサキス症)を引き起こし、激しい腹痛や嘔吐に襲われる恐れがあります。
アニサキスは、-20℃で24時間以上冷凍するか、中心温度60℃で1分間以上加熱することで死滅します。愛犬の健康を考え、生の魚介類を与えるのは避けましょう。
2.生の豚肉と鶏肉
豚肉や鶏肉は、絶対に犬に生で与えてはいけません。生の豚肉や鶏肉を犬が食べると、サルモネラ属菌やカンピロバクターなどの細菌による食中毒を起こし、下痢や嘔吐などの症状に苦しむ可能性があります。
また、生の豚肉には、有鉤条虫や旋毛虫などの寄生虫や、E型肝炎ウイルスに感染するリスクもあります。
犬に豚肉や鶏肉を与える際は、中心部までしっかりと加熱しましょう。豚肉や鶏肉に潜む細菌や寄生虫、ウイルスは、中心温度75℃以上で1分間以上加熱することで死滅します。
3.生食用でない生肉
一般的に、生食用として人間用に販売されている牛肉や馬肉は、犬に与えても大丈夫とされています。
しかし、どの肉でも生食用でない生肉には細菌や寄生虫、ウイルスが潜んでいる可能性が高く、これを犬に与えるのは危険です。スーパーなどで販売されている生肉のほとんどが、生食用ではなく加熱用であるため注意しましょう。
また、ジビエ(鹿肉や猪肉など、天然の野生鳥獣の肉)は、さまざまな細菌や寄生虫、ウイルスを保有している可能性があります。
人が生のジビエを食べてE型肝炎ウイルスに感染し、重篤な症状を示した事例や死亡した事例があり、厚生労働省は人に対し、ジビエを生で食べるのは危険と注意喚起しています。犬に対しても、ジビエを生で与えないほうがいいでしょう。
4.生の卵白
生の卵白には、アビジンというタンパク質が含まれており、これがビオチン(ビタミンB群の一種)の吸収を妨げます。犬が生の卵白を日常的に大量に摂取すると、ビオチン欠乏症となり、皮膚炎や脱毛などを引き起こす可能性があります。
生の卵白に含まれるアビジンは加熱することによって変性し、ビオチンの吸収を妨げなくなります。そのため、加熱した卵白であれば犬に与えても大丈夫です。
また、卵黄にはビオチンが豊富に含まれているため、生の全卵であればビオチン欠乏症になるリスクは低いとされています。しかし、生卵はサルモネラ属菌に汚染されていることがあります。犬に卵を与える際は、十分に加熱したものを与えるほうが安全です。
5.ネギ類
タマネギや長ネギ、ニンニク、ニラなどのネギ類は、生でも加熱済みでも絶対に犬に与えてはいけません。ネギ類には有機チオ硫酸化合物という成分が含まれており、この成分が犬の赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こす恐れがあります。
ネギ類の摂取によって溶血性貧血を引き起こす中毒を『ネギ中毒』といい、下痢や嘔吐、血尿などの症状が表れます。
有機チオ硫酸化合物は加熱しても消失しないため、ハンバーグや餃子など、ねぎ類を材料にした食べ物を犬が口にしないよう、十分に注意しましょう。
6.ブドウ
ブドウも犬に中毒を引き起こすため、絶対に与えてはいけません。犬がブドウ中毒を起こすと、嘔吐や下痢、食欲不振、腹痛などの症状が表れ、重度になると急性腎不全を引き起こし、最悪の場合は命を落とします。
ブドウのどの成分が犬に中毒を引き起こすのかは、現在のところ分かっていません。ブドウを乾燥させたレーズン(干しブドウ)やブドウを使った食品全般(ワイン、ジュース、ジャムなど)も、犬に与えるのは厳禁です。
犬に絶対与えてはいけない生ものを愛犬が誤食してしまったときの応急処置は?
上記でご紹介した、犬に絶対与えてはいけない生ものを愛犬が誤って食べてしまった場合、飼い主にできる応急処置は基本的にありません。
インターネット上では犬の誤食の応急処置として、オキシドールや食塩を使って吐かせる方法が紹介されていますが、これは犬の状態を悪化させる可能性があり、危険です。飼い主の自己判断で行うのは避けましょう。
愛犬が誤食をした場合は、まず動物病院に連絡し、獣医師の指示を仰ぐことが大切です。連絡した際には、いつ、何を、どのくらい食べて、現在どのような症状があるのかを伝えましょう。
まとめ
今回は、犬に絶対与えてはいけない生ものとして、以下の6つをご紹介しました。
✔生の魚介類
✔生の豚肉と鶏肉
✔生食用でない生肉
✔生の卵白
✔ネギ類
✔ブドウ
これらの生ものを愛犬に与えると、健康を害し、最悪の場合は命に関わることもあるため、絶対に与えないようにしましょう。もし誤食してしまった場合は、動物病院に連絡し、獣医師の指示を仰いでください。
(獣医師監修:後藤マチ子)