【鎌倉 ショップレポ】英国アンティーク博物館 BAM鎌倉 - 時を超えて出会う、シャーロックと英国アンティークの世界
19世紀末、ロンドンのベイカーストリートにひっそりと佇む探偵の下宿部屋。読者の誰もが一度は想像し、憧れを抱いた「シャーロック・ホームズの部屋」を忠実に再現した場所があります。
それが「英国アンティーク博物館 BAM鎌倉」。
展示だけに留まらない、まるで小説の世界へと迷い込んだような体験ができる特別な空間が広がっています。
また、シャーロック・ホームズが描かれたヴィクトリア時代、そしてその時代への変遷を語るうえで欠かせないジョージアン時代の貴重なアンティークたちと出会えるフロアも…!
妥協なく作り込まれたそれぞれのフロアの魅力を、たっぷりとご紹介していきます!
「シャーロック・ホームズの部屋」フロア
画像出典:英国アンティーク博物館 BAM鎌倉
数ある見どころの中でも、ひときわ印象的なのはリビングルーム。
暖炉の前に置かれた肘掛け椅子は、訪れた依頼人がまず最初に目にする光景。ホームズが事件解決への糸口を見出す象徴的な場所です。
ホームズがタバコの葉を隠したとされるペルシャスリッパや140年前の新聞、原作に”飾ってある”という描写があった写真や薬品瓶など、物語に登場する小物がずらり...!
シャーロキアン(シャーロック・ホームズ研究家)たちとも連携し、考察に基づいた「シャーロックが実際に生活している状態の部屋」になるよう作り込まれていきました。
訪れた人はまるで依頼人のように部屋へ入り、奥のホームズにじっと見つめられる——。
そんな小説のワンシーンを体験できる空間です。
この部屋を作るにあたり、館長・土橋さんが特にこだわったのは「シャーロック・ホームズが書かれた当時のアンティークで揃える」こと。
新聞から小物に至るまで、すべてがヴィクトリア時代に実際に使われたものばかり。生活品は基本的に捨てられるので、ベッドやトイレなどの生活アンティークは特に入手困難だったといいます。
シャーロックが書かれた時代のもの、そしてさらに物語に即したものという条件が付くことで、買い付けの難易度は一気に跳ね上がるそう。
それでも妥協せず、現地の博物館とも連携しながら30年以上の年月をかけて集め続けてきた土橋さん。
今では、写真に収めればロンドンのシャーロック・ホームズ博物館の展示と見分けがつかないほどの再現度なのだとか...!
小物ひとつに至るまで丁寧に作り込まれたこの部屋のリアルさは、そんな土橋さんの情熱と想いによって実現されました。
物語へと誘う貴重なコレクション
ホームズゆかりの品々が揃うこちらのフロアでは、アンティークディーラーの土橋さんが長年集めてきた貴重なコレクションと出会うことができます。
・ベイカーストリートの本物の看板や扉、ガス灯
画像出典:英国アンティーク博物館 BAM鎌倉
・『シャーロック・ホームズの冒険』初版本
・作者 アーサー・コナン・ドイル直筆の手紙
・ドイルが亡くなる2ヶ月前に録音された肉声のレコード
ほかにも、シャーロックのベッドルームには助手のワトソン先生の医療道具や、スコットランドヤードの手錠(レストレード警部がスコットランドヤード所属の設定だった)など、物語を象徴する小物がさりげなく置かれています。
シャーロックファンは思わず隅々まで探したくなるような、まさに物語の世界に入り込める空間...!
また、当時の流行が反映されたドレスや、製本するためのブックプレスも見どころのひとつ。
小説の世界だけではなく、その時代の暮らしの一端をも知ることができるフロアです。
「ヴィクトリア時代」フロア
シャーロック・ホームズの時代は、ヴィクトリア女王が治めた19世紀後半。産業革命で豊かさが広がり、家具や調度品も華やかさを増した時代です。
曲線的なキドニーデスクやパーラーキャビネット、英国王室御用達のジョン・ブロードウッド・アンド・サンズのピアノ、英国最高峰の巨大蓄音機など装飾美を感じる品々が並びます。
また、このフロアには日本を代表する建築家・隈研吾氏がデザインした茶室も。
茶室の窓から望む鶴岡八幡宮の鳥居や御神殿、裏山の景色はまるで掛け軸のよう…!
画像出典:英国アンティーク博物館 BAM鎌倉
実は鶴岡八幡宮の裏山は1960年代に宅地化される予定でしたが、地域の人々の努力で守られた歴史があるのだとか。
茶室の壁の模様にも800年前の木が使われており、「自然の大切さやアンティークの技術、文化を次世代に伝えていきたい」という土橋さんの想いが込められた場所です。
「ジョージアン時代」フロア
ヴィクトリア時代より前、現在のイギリス文化の多くを形作ってきたジョージアン時代。
このフロアには、ジョージアン時代を象徴するデザインの家具や、当時のアフタヌーンティー文化を知ることができる貴重なアンティークシルバーが展示されています。
細部まで施された装飾が美しいティーケトルは、上流階級のティーパーティーでは欠かせない存在。
下にアルコールバーナーを置き、いつでも温かい紅茶をいただくことができるのだとか。
また、焼き菓子を保温する時に使うビスケットウォーマーや、イギリスの伝統的なアフタヌーンティースタイルであるスリーティアーズ(3段スタンド)など、ケトルとともにティータイムを彩った銀食器たちが輝く光景は圧巻!
ほかにも、時代の変遷を感じられる壁一面に並ぶティーポットや、当時高価だった茶葉を保管しておくためのティーキャディ、王侯貴族の象徴でもあった200年前のハープ...
その荘厳たる美しさに魅了されるとともに、イギリスの文化史や時代背景も肌で感じることができる場所です。
成長し続ける博物館、BAM鎌倉
すべてのフロアを、妥協なく丁寧に作り込んできた館長・土橋さん。そのアンティークへの情熱と想いは、学生時代に訪れた英国での経験が原点となっています。
当時、ご縁があり連れて行ってもらった現地のジェントルマンズクラブ(会員制の大人の社交場)。そこで出会ったアンティークに心を奪われ、「こんな部屋で暮らしてみたい!」と思ったことがきっかけになったそう。
1993年から集め続け、今年で32年目。鎌倉にアンティークショップやティールームを開きながら、アンティークの魅力を伝えてきました。
次第に「より多くの方々にこの奥深い魅力や歴史を知ってもらうためには、博物館の方が適しているのでは?」と感じるように。数々の希少なアンティークに誰もが出会える空間、BAM鎌倉の設立へと踏み出しました。
「この博物館は、まだまだ成長中なんです」と土橋さん。現状に満足することなく、定期的にイギリスで買い付けを行い、少しずつ新たなアンティークを迎えているそうです。
そんなアンティークの魅力は「経年美化」にあるといいます。時代を超えて塗り重ねられてきたワックスが、深みある光沢となる「パティナ(古いつや)」はまさにその象徴なのだとか。
受け継いできた一人ひとりの手が加わり、色が積み重なって趣となる。
人から人へと受け継がれていく過程で作られたその層には、当時の技術や人々の想いも一緒に重なっている...
その「時代を重ねて生まれた美しさ」に、土橋さんはアンティークならではの魅力を感じているそうです。
美と物語が息づくヴィクトリア時代の旅へ
現在、博物館ではナイトミュージアムやセミナーなどのイベントを通して、アンティークをより深く学べる企画も展開中。
ただコレクションするのではなく、そのコレクションがどのように人間の幸せに関わるのか。
どんなものを持って、どんな生き方をするのが自分の幸せに繋がっていくのか——。
そんな「自分の好きなものに囲まれた生き方」を伝えていくことも、土橋さんの活動の原動力になっているといいます。
訪れる度にうれしい発見と感動に出会うことができる、英国アンティーク博物館 BAM鎌倉。
いつもの日常からタイムトリップして、煌びやかな英国アンティークの世界をお楽しみください!
英国アンティーク博物館 BAM鎌倉
営業時間
10:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日
無休
※ 都合によりお休みする場合は、ホームページやSNSでお知らせいたします。
電話番号
0467-84-8689
入場料
大人 1,300円
中高生 1,000円
小学生 500円
※ 1階のミュージアムショップは入場無料
支払い方法
現金、カード、電子マネー、QR決済
アクセス
JR鎌倉駅より徒歩7分
住所:〒248-0005 神奈川県鎌倉市雪ノ下1-11-4-1
駐車場:なし