「札幌で、演劇を職業にする」本気のワークショップ開催中。アナウンサーが飛び込んで見えてきたもの【実践レポ①】
「プロを目指す人と出会いたい」
そんな“本気”の演劇ワークショップが、札幌で開かれています。
演劇に熱い思いを向ける人々の思いとは。演劇を学ぶことで、何が見えてくるのか。
HBC演劇エンタメ研究会(略してエンケン)の堰八紗也佳(せきはち・さやか)アナウンサーと、Sitakke編集部IKUがシリーズでお伝えします。
ワークショップに志願して参加!
エンケン会長で、HBCアナウンサーの堰八紗也佳です。
これまでSitakkeの記事で、札幌の劇団や劇場を紹介し、演劇界を応援してきました。
個人的に演劇やミュージカル鑑賞が大好きで、様々な演目を観に行っています。
私は小学生のころ頃からテレビドラマが大好きで、中学に入学する際「演劇部に入る!」と心に決めていたのですが、残念なことに、その中学校に演劇部は存在しませんでした。
そのまま演技を学ぶ機会がないまま今に至るのですが、思いがけず、HBCが2025年春に放送したオリジナルドラマ『三笠のキングと、あと数人』で、司会者役として出演!
これを機に、実は昔から密かに胸に抱いていた「劇場の舞台に立つ側の景色を見てみたい」という想いが湧き上がってきました。
そして、もしかするとその夢を実現できるかもしれないという挑戦の場に、いま私は、自ら志願して立っています。
なんと、あの倉本聰さんの愛弟子である納谷真大(なや・まさとも)さんが講師を務める演劇トレーニングワークショップに参加させてもらうことにしたのです!
ワークショップは、15歳~59歳までの“演劇を志す人”なら誰でも参加できるもので、経験は問いません。ジョブキタ北八劇場の芸術監督である納谷さんから演技を学べることはもちろん、オーディションも兼ねていて、合格した参加者は9月に公演予定の『天国への会談』に出演することができるのです!
未来を支える演劇人を育てるためのワークショップで、納谷さんは「自分がこの世界からいなくなってからも、プロフェッショナルが残るような礎を築いていきたい」と、気合い十分。
演劇界を応援するためにも、演劇を志す人の情熱や苦悩など、さまざまなものを私も身をもって体感し、知りたい。そして、声を生業とするアナウンサーとして、演劇界から少しでも表現力向上のヒントを得たい!
そんな気持ちもあって飛び込んだトレーニングワークショップ。私のガチンコ勝負が始まりました。もちろん、参加するからには、絶対に『天国への会談』出演の切符も勝ち取りたいと思っています!ワークショップは、2024年5月にJR札幌駅北側エリアに誕生した「ジョブキタ北八劇場」で開かれています。
初日の7月17日。まず驚いたのは、参加者の中に、すでに舞台で活躍している顔の知れた役者さんたちも紛れているということ。
私の大好きな、フリーの舞台俳優・五十嵐みのりさんや、納谷さんが代表を務める演劇ユニット「ELEVEN NINES(イレブンナイン)」の俳優・梅原たくとさんらが、普通にワークショップを受けているではありませんか!それだけレベルの高いワークショップの内容ということで、気が引き締まります。
メンバーに驚いている暇もなく、ワークショップがスタート!発声練習をするのかな~なんて思っていると、納谷さんがホワイトボードの前にたち、1時間の座学が始まりました。
内容は演劇の歴史や法則などで、聞いたこともないような演劇ワードが次々に飛び出し、頭の中はパンク寸前!
そして印象的だった納谷さんの言葉は「演劇は間違いなく体育会系!そして理系の頭!自信と不安を繰り返すことは間違いないので、それに耐えうる“強さ”が必要」ということ。
私は運動音痴。数字がとても苦手な、文系です。
しまった……甘く見ていた。
ちなみに、演劇がなぜ理系なのかということは、追々わかったので、また改めてお伝えしますね。
思いもよらず、自分自身の弱い部分と向き合うことになった私。
オーディションは8月中旬なので、この先どんな結果が待ち受けているのかは、今は自分でも想像がつきません。
ここに、体験記として、ワークショップのことを記していきますので、お付き合いよろしくお願いします!
どんな人たちが参加しているの?
堰八アナが参加するワークショップの初回、私・Sitakke編集部IKUも、ワークショップを見学させていただきました。
幅広い年齢層の参加者が、少し緊張した面持ちで劇場に入ってきます。
開発唯貴(かいはつ・ゆいき)さんは15歳の高校1年生。
小学校の学習発表会が楽しかったことから、中学1年生から劇団に所属しています。
「劇団ごとに考え方が違うので、いろいろな芝居を学びたい」と、このワークショップに臨みました。ワークショップの先にある公演には日程の都合がつかないため、オーディションには参加できないそうですが、それでも「自分は一番下の世代。先輩たちの演技を見るのは勉強になる」という意欲で参加しています。
演劇経験がないという人も参加していました。森谷宏平(もりや・こうへい)さん・25歳。
ことしの5月から声優事務所に所属し、新たな挑戦をしていますが、周りには経験者が多く、自分も勉強したいと思い、演劇ワークショップへの参加を決めたといいます。
大川原歩(おおかわら・あゆみ)さんは、3月までは東京で芸能関係の仕事をしていました。今は地元・北海道に戻り、ボイストレーナーをしていますが、もともとローカルタレント志望。ですが、「40代になってから、テレビのローカルタレントになる難しさを感じていた」といいます。
「ジョブキタ北八劇場」アーティスティックコーディネーターの小島達子さんに相談したところ、「ローカルタレントになることは容易ではないかもしれないけれど、劇場にはメディアの方々が来てくださることも多いので、まずは出て、知ってもらうことが大事」というアドバイスをもらったことがきっかけで、演劇を学び始めました。
(初回からつい気になって大川原さんに声をかけてしまったHBC社員の私、まんまと…!)
すでに舞台で活躍している方も。「ELEVEN NINES」の俳優・内崎帆乃香(うちざき・ほのか)さんに、なぜ初心者も参加するワークショップに出ているのか聞くと、「演技は勉強しかない!いろいろな人の演技の仕方を見ると、引き出しが増える」と話していました。
内崎さんと、五十嵐みのりさんには、堰八アナの演技を見てどう思ったかも聞いてみました。
五十嵐さん「堰八さんの『人の好さ』が演技に出ているなと思いました。その人本来が持っているものって大事だと思います」
内崎さん「私も思った!普段からいい人なんだな~って」
…と、お褒めの言葉だけだったので、「アドバイスもください!!」と無理に頼んで考えてもらいました。
五十嵐さんは、「初めてなので、納谷さんから演出がついたときに、少し戸惑っている様子も見えました。これから伸び伸び演技ができるようになって、一緒に舞台に出られたら楽しみだなと思います」
内崎さんは、「アナウンサーってきっと声の表現が中心ですよね?体での表現が磨かれるとどうなるのかが楽しみ」と話してくれました。
すでに活躍している人も、それぞれの背景を持っている人も、みんなが「本気」で参加しているワークショップ。
初回から納谷さんが「演劇が職業になるのを目指しています。プロを目指す人と出会いたい」「俳優になるほうがつらいこともある。特殊な才能なので、なれる人・なれない人がいますから。ならないほうが幸せかもね」などと話していくうちに、楽しみと期待であふれていた堰八アナの顔がどんどん引き締まっていきました。
休憩中に思わず「すごくおもしろいけど、ちょっと後悔している」と話した堰八アナ。
「私も本気で参加しているつもりだった。でも、私はアナウンサーで、アナウンス技術に生かせればと思っての『本気』。まわりはプロの俳優を目指す人たちなんだって、甘かったな、参加してよかったのかなって思っちゃうくらい」
それでも、まわりが本気だからこそ、自分もなんとしても舞台に立ちたいと、気を引き締め直した堰八アナ。
ワークショップを通して、参加者たちが一緒に学び、何をつかむのか。
続きは次回の記事でお伝えします。
ジョブキタ北八劇場 トレーニングワークショップ#2
ワークショップ内でのオーディションに合格した参加者が、9月19日(金)〜9月21日(日)に上演される『天国への会談』に出演できます。
チケットご予約の際は、予約フォームにある注意事項をご確認ください。
◆HBC演劇エンタメ研究会
◆文:エンケン会長/HBCアナウンサー・堰八紗也佳、Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は記事執筆時(2025年7月)の情報に基づきます