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『世界の魔女伝説』上半身だけで飛ぶ女、痕跡を消して飛ぶ老婆、顔を見たら殴りかかる鬼婆

草の実堂

画像 : La Befana by Bartolomeo Pinelli (1821) public domain
画像 : 一般的な魔女のイメ―ジ illstAC cc0

魔女とは、神秘的な力を操る女性であり、古くから畏怖と憧れの対象であった。

日本では、箒にまたがって空を飛ぶ可憐な少女のイメージが一般的であり、アニメや童話の影響もあって親しみやすい存在として描かれることが多い。

しかし西洋の伝承において、魔女は必ずしも好意的な存在ではない。
悪魔と契約を交わし、呪術によって人々に災いをもたらす邪悪な者とされることが多く、恐怖の対象であった。

世界にはさまざまな魔女たちの伝承が残されており、そのどれもがユニークで興味深いものばかりである。

今回は、そうした多様な魔女たちを紐解いていきたい。

1. バーバ・ヤーガ

画像 : バーバ・ヤーガ public domain

バーバ・ヤーガ(Baba Yaga)は、スラヴ地方の民話に登場する魔女である。

森林を生息地とする恐ろしい老婆で、やせ細った体と、骨が剥き出しの脚が特徴であるという。
また、その歯は鉄でできているそうだ。

普段はニワトリの足を掘立柱(高床式倉庫などの柱)とした奇妙な家に住んでいるが、出かける際は臼に乗って移動する。
バーバ・ヤーガは右手に持った杵で臼を馬のように急かせると、臼はフワーッと浮かび上がり、底を引きずりながら動き出す。
そして左手に持った箒で掃いて、引きずった痕跡を消すのだという。

このため、彼女がいつどこに移動したかを特定することは、極めて困難であるといえる。

また、バーバ・ヤーガは子供を誘拐して食べるおぞましい怪物として描かれることが多く、古来より人々に恐れられてきた。
ただし、中には善良なバーバ・ヤーガも存在し、物語の主人公に助言を与えるキャラクターとして描かれる場合もある。

その起源は、キリスト教に征服される以前の、スラヴ土着の神話にあるとされる。

しかし、スラヴ神話はキリスト教徒の苛烈な教化により、徹底的には破壊し尽くされてしまったため、今日残る情報は極めて断片的である。

2. マナナンガル

画像 : マナナンガル 草の実堂作成(AI)

マナナンガル(Manananggal)は、フィリピンに伝わる魔女である。

普段、この魔女は人間のフリをし、日常生活に溶け込んでいるという。
だが夜になると、なんと自身の胴体を真っ二つに切り離し、上半身だけで空を飛ぶというから驚きだ。
そして眠っている人間の元へと忍び寄り、生き血を啜るといわれている。

とりわけ妊婦とその胎児を狙うとされ、死産や流産の原因とも結びつけられてきた。こうした背景から、マナナンガルはフィリピンの農村社会において深い恐怖の対象であった。

特徴的なのは、彼女の上半身が自在に空を飛びまわる一方で、切り離された下半身はその場に無防備に残される点である。
この弱点を突いて、下半身の断面に塩やニンニク、灰を塗り込むという風習が伝わっている。

何も知らずにフラフラと舞い戻ってきた上半身は、合体できないことに気づき、オロオロと慌てふためく。
そうしているうちに夜が明け、日の光を浴びたマナナンガルは、焼き尽くされて絶命するとされる。

3. アリオルムナス

画像 : アリオルムナス『地獄の辞典』より public domain

アリオルムナス(Aliorumnas)またはハリウルナス(Haliurunas)は、ヨーロッパに伝わる魔女である。

東ローマ帝国の歴史家・ヨルダネスの著した『ゲチカ』や、フランスの作家・コラン=ド=プランシー(1793~1881年)の『地獄の辞典』などにて、その存在が言及されている。

古代ドイツに実在した「ゴート族」出身の魔女であったが、悪しき存在と見なされ追放されたという。
しかし、アリオルムナスは砂漠で悪魔と性交し、遊牧民族である「フン族」を生み出したとされる。

フン族は、ゴート族や東ローマ帝国をことあるごとに襲撃し、蛮族として非常に忌み嫌われた。
特にフン族の王・アッティラ(406?~453年)は、「神の災い」と呼ばれるほどに恐れられていたという。

アリオルムナスはフン族の他にも、「アヴァール族」「ハンガリー族」などの、遊牧民族の生みの親でもあったとされる。

4. ベファーナ

画像 : La Befana by Bartolomeo Pinelli (1821) public domain

キリスト教には「公現祭」という祭日がある。

新約聖書に登場する「東方の三博士」は、イエス・キリストが誕生した際に、拝みに来た人物たちとして知られている。
この三博士訪問の記念日が公現祭とされ、毎年1月6日に行われている。

この公現祭、もしくは前日の1月5日に現れるとされているのが、イタリアに伝わる魔女・ベファーナ(Befana) である。

その姿は、煤けた顔・鋭利な舌・猫のような歯を持つ異形とも、全く歯のない醜い老婆ともいわれている。

夜になるとベファーナは、後ろ向きにした箒にまたがって飛ぶという、典型的な魔女の飛行方法で町にやって来る。
そしてサンタクロースのごとく、煙突から家屋へと侵入し、ベッドで眠る子供に近づく。

その子供が善良であるならば、靴下にお菓子や玩具などのプレゼントを入れるが、反対に悪童の靴下には、大量の石炭や棒切れを詰め込む。
また、ベファーナは顔を見られるのを大変嫌うため、もし顔を見られた場合、良い子だろうが悪い子だろうが箒でしばき倒すともいわれている。

伝承によれば、三博士がキリストの元へ向かう途中、一泊するため立ち寄った村の老婆がベファーナだったとされている。

三博士はベファーナに、一緒にキリスト誕生を祝いに行こうと誘うも、多忙だったベファーナはこれを断った。
だが、時が経つにつれ、次第に参拝への欲が増してきたベファーナは三博士の後を追ったが、結局キリストの元へはたどり着くことができず、そのまま未来永劫彷徨うこととなった。

参考 : 『地獄の辞典』『Baba Yaga:The greatest ‘wicked witch’ of all?』他
文 / 草の実堂編集部

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