東北の競技人口、レベルアップ着々 釜石オープンウオータースイミング 根浜舞台に熱戦
第8回釜石オープンウオータースイミング(OWS)2024根浜(実行委主催)は4日、釜石市鵜住居町の根浜海岸特設会場で開かれた。海などの自然水域で長距離泳を競う同競技は、2016年の岩手国体で初めて正式種目に採用され、同海岸が競技会場となった。その国体レガシーを受け継ぐ釜石OWSは、日本水泳連盟(日水連)認定大会(国内サーキットシリーズ)の一つとして定着。東北の競技人口拡大、競技力向上にも貢献している。今年も幅広い年代のスイマーが参加し、熱戦を繰り広げた。
今大会は日水連サーキットシリーズ第8戦として行われた。小学3年以上が対象のOWS5級検定の集団泳を含め、6種目に267人がエントリー。競技は500メートル(小学4~6年)、1キロ(小学4年以上)、3キロ(中学生以上)、5キロ一般(同)、男女上位3人に日本選手権出場権が与えられる5キロトライアル(同)で行われた。
海上に設置したブイで周回コースを設定。種目ごとに時間をずらしてスタートした。選手らは目標タイムや制限時間内の完泳を目指し、日ごろの練習成果を発揮。競技を終えて戻ると、家族や仲間、大会関係者から拍手で迎えられた。競技、年齢カテゴリー別に男女各1~3位までを表彰した。
実力者がそろう日本選手権トライアル(5キロ)男子で優勝したのは、青森県から出場した八戸工業大第一高3年の黒瀧巧翔さん。釜石大会3回目の参加で初の頂点に立った。「すごくうれしいし、支えてくれた青森県チームの皆さんや家族に感謝したい」。OWSは中学3年から始めた。「波とか潮の流れの変化に対応しながら泳いでいく、自然相手の面白さがある」と話す。県代表で出場した昨年の鹿児島国体では13位、高校生選手の中では2位に入るなど成長著しい選手。競泳(長距離種目)も続けていて、「将来はOWSと競泳、両方で五輪出場を目指したい」と高い目標へまい進する。
青森県水泳連盟OWS強化チームの八戸博子監督(59)は16年の岩手国体時から毎年、選手を連れて来釜。東日本大震災で甚大な被害を受けた根浜の復興も目の当たりにしてきた。「最初は復興工事の真っただ中で、来るたびに様子が変わっていった。本当に劇的」と今の姿に驚きと感動を覚える。釜石の大会を「地元の協力体制が素晴らしい。楽しく温かい雰囲気とともに、安全管理やレース運営もしっかりしている。この大会があるからこそ東北のOWSは活性化された」と称賛。同県は2026年の国民スポーツ大会(国スポ)開催地となっていて、本年9月1日には初の日水連認定大会「青森あさむし温泉オープンウオータースイミング大会」を実施予定。八戸監督は「釜石を手本に指導を仰ぎながら準備を進め、やっと大会が実現する」と関係者に感謝した。
今大会には安全管理の一翼を担う釜石ライフセービングクラブから小中学生メンバーも出場した。盛岡市の岩手大教育学部附属小5年の佐藤向さんと、姉で同中1年の佐藤花さんだ。500メートルに出場した向さんは3回目の大会。「海藻が足にからまったりして泳ぎづらかったけど、頑張って速く泳げた。海での練習の成果を発揮できた」と満足げ。学校で海の危険を学び、ライフセービングに興味を持った。小学生なので本格救助の訓練はこれからだが、基礎泳力を身に付けながら、ライフセーバーの父の背中を追う。
花さんは1キロの競技を終えた後、ビーチパトロールを行う看護師の母佐英子さん(42)と競技の監視にもあたった。今年6月、ライフセーバーに必要な「BLS(ベーシックライフサポート)」と「ウオーターセーフティ」の2資格を取得した花さん。「難しいとは思ったが、溺れてしまうかもしれない人たちのためになる勉強をしていると思うとやりがいがある」と話す。今夏は根浜海岸で、海水浴客を危険から守るための監視業務も行っている。将来はライフセーバーの資格取得はもちろん、医者になる目標も掲げ、「救急車が到着するまでの適切な処置をできる人になりたい」と夢を描く。
今大会の順位や記録は大会ホームページ(https://kamaishi-ows.com)で確認できる。