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在宅介護で大変なことランキングは?介護者が直面する現実と対策を紹介

「みんなの介護」ニュース

中村 亜美

在宅介護で大変なこと:介護者の負担ランキングTOP5

在宅介護は、これまで過ごしてきた自宅で生活できる一方で、介護者にとっては負担となる可能性が高いことも事実です。

在宅介護において、介護者が感じる負担はさまざまですが、「全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果 〔概要版〕」のデータを基に、介護者が特に大変だと感じる項目をランキング形式で紹介します。

第1位:認知症状への対応

認知症状への対応は、介護者にとって最も大きな負担となっています。調査によると、要介護1・2の介護者では39.7%、要介護3以上の介護者では35.4%が認知症状への対応に不安を感じているという結果が出ています。

出典:『全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果 〔概要版〕』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を基に作成

認知症の症状は個人差が大きく、日によって変化することもあるため、介護者は常に柔軟な対応を求められます。例えば、同じことを何度も聞かれたり、突然怒り出したりする行動に対して、どう接すればよいか戸惑うことも多いでしょう。

また、認知症の方は自分の状況を正確に認識できないことがあるため、介護者との間に誤解や摩擦が生じやすくなります。このような状況が続くと、介護者は精神的に疲弊してしまう可能性があります。

認知症状への対応で重要なのは、本人の気持ちに寄り添うことです。認知症の方の言動には必ず理由があります。その理由を理解しようとする姿勢を持ち、穏やかに接することが大切です。また、介護者自身がストレスをため込まないよう、定期的に気分転換を図ることも重要です。

第2位:夜間の排泄介助

夜間の排泄介助は、介護者の睡眠を妨げる大きな要因となっています。同調査では、要介護3以上の高齢者の介護者の35.4%が夜間の排泄に不安を感じているという結果が出ています。

出典:『全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果 〔概要版〕』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を基に作成

夜間の排泄介助が必要な場合、介護者は深夜に何度も起きなければならなくなる可能性も。これにより、十分な睡眠時間を確保できず、日中の活動にも支障をきたす場合もあるのです。また、夜間の介助は転倒のリスクも高まるため、日中に比べてより注意深くなる必要があります。

睡眠不足は介護者の健康状態にも悪影響を及ぼし、長期的には介護の質の低下にもつながりかねません。そのため、夜間の排泄介助の負担を軽減する工夫が必要です。

例えば、ポータブルトイレを寝室に設置したり、おむつや尿取りパッドを使用したりすることで、トイレまでの移動を減らすことができます。また、水分不足に陥ることに注意をしながら、就寝前に過度な水分摂取を控えるなど、生活習慣の見直しも効果的です。

第3~5位:外出の付き添い・送迎、日中の排泄、入浴・洗身

第3位から第5位には、「外出の付き添い・送迎等」、「日中の排泄」、「入浴・洗身」が挙げられます。これらの介助は日常的に行われるものであり、介護者にとって身体的・精神的負担が大きいものです。

外出の付き添いや送迎は、要介護者の社会参加や通院に不可欠ですが、介護者にとっては時間的・体力的な負担となります。特に、車いすの利用者の場合、乗り降りの介助や段差の移動など、細心の注意が必要です。また、突然の体調変化にも対応できるよう、常に緊張感を強いられます。

日中の排泄介助も、夜間と同じく介護者にとって負担の一つです。頻繁なトイレ誘導や排泄物の処理は、身体的な負担だけでなく、精神的なストレスにもなります。特に、失禁がある場合は、衣類や寝具の交換など、追加の作業が発生し、介護者の負担はさらに増大します。

入浴・洗身の介助は、要介護者の清潔保持に欠かせませんが、同時に転倒や溺水のリスクも高い作業です。浴室内は滑りやすく、湿気も多いため、介護者自身の安全確保も重要です。また、湯温の調整や体を洗う際の細かい動作など、気を使う点が多くあります。

これらの日常的な介助を継続して行うことで、介護者自身の体調不良や慢性的な疲労につながる可能性があります。そのため、適切な介助方法を学んだり、福祉用具を活用したりすることで、身体的負担を軽減することが重要です。 例えば、排泄介助では簡易トイレやポータブルトイレを活用する、入浴介助ではシャワーチェアや入浴用リフトを使用するなどの工夫が可能です。

また、介護保険サービスを利用して、専門のヘルパーに一部の介助を任せることも有効な方法の一つです。通所介護(デイサービス)や訪問入浴サービスなどを利用することで、介護者の負担を軽減しつつ、要介護者に適切なケアを提供することができます。

在宅介護のつらさと無理が生じる原因:介護者の声から見える現実

在宅介護の現場では、介護者がさまざまな困難に直面しています。ここでは、実際の介護現場で見られる課題と、それによって生じる介護者の負担について詳しく見ていきます。

24時間365日の緊張感:休む暇のない介護生活の実態

在宅介護の最大の特徴は、24時間365日の対応が求められることです。これは介護者にとって大きな精神的プレッシャーとなります。

特に認知症の方を介護する場合、夜間の徘徊や不規則な生活リズムに対応に迫られることがあります。十分な睡眠が取れないことで、日中の活動にも支障をきたし、慢性的な疲労状態に陥りやすくなります。

また、急な体調変化や緊急事態に備えて、常に待機状態にあることも介護者のストレス要因となるでしょう。外出時でさえ、どこかで気がかりになって早く帰宅しなければという焦りや不安を抱えることもあります。

このような継続的な緊張状態は、介護者の心身に大きな負担をかけます。趣味や友人との交流など、介護者自身のリフレッシュの機会が減少することで、ストレスが蓄積されやすくなります。

仕事との両立の難しさ:介護離職リスクと経済的不安

仕事と介護の両立は、多くの介護者が直面する大きな課題です。厚生労働省の調査によると、介護を理由に離職や転職をした方が一定数存在することが分かっています。

介護者は、突然の呼び出しや通院の付き添いなどで、頻繁に仕事を休まざるを得ない状況に置かれることがあります。これにより、職場での立場が不安定になったり、昇進の機会を逃したりするケースも少なくありません。

一方で、介護のために仕事を辞めてしまうと、現在の生活費だけでなく、将来の年金にも影響が及ぶため、経済的な不安を抱えることになります。このように、仕事を続けることの難しさと経済的な必要性の間で板挟みになり、大きなストレスを感じる介護者も多いのが現状です。

介護サービス利用の壁:家族の理解不足と本人の拒否

介護保険サービスは在宅介護の大きな支えとなりますが、その利用にあたっても障壁は存在します。特に多いのが、家族の理解不足と要介護者本人の拒否です。

家族の中には「介護は家族がすべきもの」という考えを持つ人もおり、外部サービスの利用に抵抗を感じる場合があります。また、要介護者本人が「他人の世話になりたくない」という思いから、サービス利用を拒否するケースも少なくありません。

特に認知症の場合、本人が自身の状況を正確に理解できていないことも多く、サービス利用の説明や説得が困難になります。このような状況下だと、主たる介護者が一人で介護の負担を抱え込んでしまうことがあります。

さらに、地域によってはサービスの選択肢が限られていたり、希望するサービスの利用に長期の待機が必要だったりすることも、適切なサービス利用を妨げる要因となっています。

これらの要因が重なり、介護者は必要なサポートを受けられないまま、過度の負担を強いられる状況に陥ることがあります。結果として、介護者の心身の疲労が蓄積され、介護の質の低下や、最悪の場合は虐待などの問題につながるリスクも存在します。

在宅介護の継続には、これらの課題に対する適切な対応と、介護者自身のケアが不可欠です。

在宅介護の大変さを軽減する対策

介護保険サービスの賢い活用法:在宅生活を支える様々なオプション

介護保険サービスは、在宅介護を支える重要な社会資源です。しかし、多くの方がその活用方法を十分に理解していないのが現状です。ここでは、効果的なサービス利用について説明します。

まず、訪問系サービスの活用をお勧めします。訪問介護(ホームヘルプサービス)では、食事・入浴・排せつなどの身体介護や、掃除・洗濯などの生活援助を受けられます。訪問看護では、医療処置や健康管理のサポートを受けることができます。これらのサービスを組み合わせることで、介護の負担を大きく軽減できます。

また、通所系サービス(デイサービスやデイケア)の利用も効果的です。要介護者にとっては外出の機会となり、介護者にとっては一時的な休息時間を確保できます。ほかにも、短期入所生活介護(ショートステイ)を定期的に利用することで、介護者が長期の休養をとることも可能です。

サービスを選ぶ際は、ケアマネジャーとよく相談し、要介護者の状態と介護者の負担を考慮しながら、最適な組み合わせを見つけることが大切です。

レスパイトケアの重要性:介護者自身の休息確保の方法

レスパイトケアとは、介護者が一時的に介護から解放され、休息をとるための支援サービスのことです。介護者の心身の健康を保ち、燃え尽き症候群を防ぐために非常に重要です。

レスパイトケアの方法としては、先述のショートステイの利用が代表的です。要介護者が施設に短期間滞在することで、介護者は一時的に自分の時間を確保できます。これによって、旅行に行ったり、ゆっくり睡眠をとったりすることができます。

また、デイサービスの利用も、日中の数時間を介護から離れるという意味で、レスパイトケアの一種と言えます。

さらに、訪問介護サービスを利用して、介護者が外出する時間を作ることもレスパイトケアの一つの形です。例えば、週に1回、ヘルパーさんが来る時間帯に自分の趣味の時間を確保するなど、定期的な気分転換の機会を作ることが大切です。

レスパイトケアを効果的に活用するためのポイントは、計画的に実施することです。「疲れたときに」ではなく、定期的にレスパイトケアの時間を設けることで、介護者自身の心身の健康を維持することができるでしょう。

また、家族や友人にサポートを求めることも重要です。「介護は一人で抱え込むもの」という考えを捨て、周囲の力を借りることで、より効果的なレスパイトケアが可能になります。

家族間での役割分担:介護負担を分散させるコツ

在宅介護では、しばしば特定の家族メンバーに負担が集中しがちです。しかし、これは介護者の燃え尽きや家族間の軋轢を引き起こす原因となります。そこで、家族間で適切に役割を分担することが重要です。

まず、家族全員で話し合いの場を設けることから始めましょう。この際、以下のポイントを意識すると効果的です。

各自の生活状況や仕事の状況を共有する
要介護者の状態と必要なケアについて理解を深める
それぞれができることを明確にする
定期的に状況を確認し、役割を見直す機会を設ける

役割分担の例としては、主たる介護者が日常的なケアを担当し、他の家族が週末の介護や通院の付き添い、財務管理などを担当するといったパターンが考えられます。遠方に住む家族の場合は、定期的な電話での様子確認や、長期休暇時の介護の引き継ぎなどを行うケースが挙げられます。

また、家族間のコミュニケーションツールを活用するのも効果的です。介護専用の連絡グループを作成したり、共有のカレンダーを使用したりすることで、情報共有がスムーズになるでしょう。

ただし、完璧な役割分担を目指すのではなく、各自の状況に応じて柔軟に対応することが大切です。「できる人が、できるときに、できることをする」という姿勢で臨むことで、無理のない介護体制を構築できます。

まとめ:在宅介護の課題を乗り越えるために

在宅介護には介護者の負担は発生しますが、適切な対策を講じることで、その負担を軽減することは可能です。ここまで紹介してきた内容を踏まえ、最後に重要なポイントをまとめます。

自分一人で抱え込まない
介護保険サービスや家族のサポートを積極的に活用しましょう。「すべて自分でやらなければ」という考えは、介護者自身を追い詰めてしまいます。
介護者自身の健康管理を怠らない
介護者が倒れてしまっては、要介護者の生活も立ち行かなくなります。定期的な休息を取り、自分の健康管理にも気を配りましょう。
情報収集と学習を継続する
介護に関する知識や技術は日々進歩しています。最新の情報を収集し、より効率的な介護方法を学び続けることが大切です。
地域とのつながりを大切にする
地域包括支援センターや介護者の集いなど、地域のリソースを活用しましょう。同じ立場の人との交流は大きな支えになります。
将来を見据えた計画を立てる
要介護者の状態変化や介護者自身の状況変化を想定し、中長期的な視点で介護計画を立てることが重要です。

在宅介護は確かに大変ですが、見方を変えれば要介護者本人との絆を深める貴重な機会でもあります。この記事で紹介した方法を参考に、無理のない持続可能な介護を目指してください。そして、困ったときは一人で悩まず、周囲に助けを求める勇気を持つことが、長期的な在宅介護を続けるための鍵となります。

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