愛と平和のまなざしに出会う——江戸絵画の真髄を箱根で堪能
静謐な山あいに佇む岡田美術館(神奈川県箱根町・小涌谷)にて、2025年7月31日(木)より特別展「愛と平和の江戸絵画」が開催されます。およそ260年にもわたって泰平の時代が続いた江戸。戦のない時代が人々の生活にもたらした「穏やかさ」と「つながり」は、絵画にも独自の表現となって咲き誇ります。 本展では、江戸期の絵画に表れた多様な「愛」と「平和」のイメージを丁寧にたどりながら、風俗画、花鳥画、美人画、そして動植物への愛情まで——画家たちの眼差しを通して、温かな世界を再発見する機会となります。
幻の名作、83年ぶりの奇跡的再会
伊藤若冲「孔雀鳳凰図」が語る命の煌めき
展覧会のハイライトの一つが、長らく行方不明とされていた伊藤若冲の初期作《孔雀鳳凰図》。モノクロ図版でしか知られてこなかった本作が2016年に再発見され、若冲ファンの間で大きな話題を呼びました。精緻な筆致と壮麗な構図は、後の代表作《動植綵絵》(国宝)への萌芽を感じさせます。
江戸の美術が映す「平和」な日常と感性
平和が生んだ文化の多様性
江戸時代の泰平な社会構造は、芸術表現にも豊かな展開をもたらしました。
・風俗画や浮世絵に描かれた庶民の享楽
・俵屋宗達、尾形光琳らによる琳派の装飾美
・旅情や名所を映した絵画文化の広がり
それぞれに、都市文化の洗練や人々の心の余白が感じられます。
いきものたちへのまなざし
虫や魚、小動物など——命あるものへの愛情を映した作品群も見逃せません。
写実的な猿や昆虫の表現など、江戸の絵師たちが見つめた生命のきらめきを堪能できます。
さまざまな「愛」のかたち
江戸の絵画には、恋人、家族、子どもなど、身近な存在への愛がさまざまなかたちで描かれてきました。婚礼調度の屏風や雛祭りの絵、遊女を描いた一幅まで。
そこには時代を超えて共鳴する情感があります。
上村松園 生誕150年記念特集も開催
近代日本画の巨匠、上村松園(1875〜1949)の生誕150年を記念し3点を特別公開。
凛とした女性像を描き、日本人女性として初の文化勲章を受章した松園の世界をぜひご覧ください。
紅葉と共鳴する名品たち
美術館の庭園では、11月上旬〜下旬ごろが紅葉の見頃。多種多様なカエデが色づき、散策しながら箱根の秋を楽しめます。
紅葉シーズンには、美術館内でも特別な“秋の名品”が展示されます。
尾形乾山「色絵竜田川文透彫反鉢」(18世紀・重要文化財) 岡田美術館蔵
尾形乾山「夕顔・楓図」(元文5年[1740年頃]) 岡田美術館蔵
陶工として名高い尾形乾山(1663〜1743)が描いた、自然の美をテーマにした逸品。兄・光琳と共に革新的な作風を打ち立てた乾山の世界が、秋の風景と見事に響き合います。
鑑賞のあとは、ぜひ庭園にも立ち寄って、美術と自然が織りなす“日本の秋”を体感してみてください。
アートをもっと深く楽しむ!関連イベント
・学芸員によるギャラリートーク(8月1日〜11月28日の金曜11:00〜)
・関連講座|江戸絵画のなかの愛 ー婚礼調度から美人画までー(10月4日)
・関連スライドトーク|江戸時代の食と器(9月13日)
さらに、美術館と箱根のラグジュアリー旅館「箱根・強羅 佳ら久」によるコラボ企画も開催中。岡田美術館の収蔵品をモチーフにしたコース料理で美術と食の融合体験も楽しめます。
展覧会情報
展覧会名:愛と平和の江戸絵画
会期:2025年7月31日(木)~12月7日(日) ※会期中無休
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料:一般・大学生 2,800円/小中高生 1,800円
会場:岡田美術館(神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1)
主催:岡田美術館
公式サイト:https://www.okada-museum.com
江戸が育んだ「平和」と「愛」の世界に、秋の彩りが重なって——。
箱根・岡田美術館で、心ほどけるアートの旅を体験してみませんか?