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「百日ぜき」ワクチンの効果は3~5年!? 追加接種のタイミングを小児科専門医が解説

コクリコ

激しいせきが続く細菌性の感染症「百日ぜき」について、小児科専門医・岡本光宏先生に取材。百日ぜきのワクチンについて(全2回の2回目)。

「百日ぜき」ワクチンの効果は3~5年? 追加接種のタイミングを小児科専門医が解説

2025年、百日ぜきの流行が続くなか、ワクチンの役割があらためて注目されています。しかし、時間の経過とともに免疫が落ちてくることはあまり知られていません。そこで今回は、5歳以降の子どもの追加接種についてやタイミングなどを「おかもと小児科・アレルギー科」の岡本光宏先生に伺いました。

生後2ヵ月からワクチン接種可能

──今回は百日ぜきのワクチンについてお伺いします。まず、百日ぜきのワクチンは、何歳ごろにどのように打つのが基本なのでしょうか?

岡本光宏先生(以下、岡本先生):もともと百日ぜきは、「3種混合ワクチン(DPT)」の中に含まれていました。2024年4月からは「5種混合ワクチン」(ジフテリア、百日ぜき、破傷風、不活化ポリオ、ヒブ〈インフルエンザ菌b型〉)として、定期接種の対象に組み込まれています。

接種のスケジュールとしては、生後2ヵ月から始めて、7ヵ月までに3回、その6~18ヵ月後に4回目を追加するという流れです。

以前は生後3ヵ月からのスタートでしたが、今はより早く、生後2ヵ月から始められるようになりました。

ワクチンは、1回で免疫が完成するわけではありません。少しずつ抗体をつけていきながら、回数を重ねるごとに免疫がしっかりついてきます。とくに乳児期は、まだ体の防御力が不十分ですから、早い段階で「予防の土台」をつくっておくことがとても大事になってきます。

──接種後の効果はどれぐらい続くのでしょうか?

岡本先生:百日ぜきに対する抗体は、接種から時間がたつにつれて徐々に下がっていくとされています。だいたい3~5年くらいで免疫が薄れてくるといわれています。

特に、家庭内にまだワクチンを受けていない小さな赤ちゃんがいる場合は、家族が百日ぜきを持ち込まないようにするという視点がとても大切です。そうしたご家庭、特にお子さんに追加接種を検討してもよいと思います。

追加接種のタイミングとかかる費用

──ワクチンの追加接種について、推奨されるタイミングを教えてください。

岡本先生:まず、小学校入学前の5~7歳のお子さんですが、この年齢では、法定の定期接種として麻しん風しん混合(MR)〈第2期〉があります。ところが百日ぜき(DPT)やポリオ(IPV)の追加接種は定期スケジュールに入っていません。そこで日本小児科学会は、次のいずれかを任意接種で1回追加するよう勧めています。

1.4種種混合(DPT-IPV)を1回

2.3種混合(DPT)+IPVを各1回

費用は医療機関によって異なりますが、DPTが3,000~6,000円、IPVが7,000~10,000円ほどが目安です。自治体によっては助成制度もあるので、確認してみてください。

写真:maroke/イメージマート

──小学校高学年の11~12歳の追加についてはどうでしょうか?

岡本先生:この年代では、定期接種として2種混合DT(ジフテリアと破傷風のワクチン)を打ちますが、ここにも百日ぜきは含まれていません。

そこで学会では「DT」を百日ぜきを含む3種混合(DPT)に置き換えるという方向性を提案しています。

こちらも任意接種なので自費になり、各医療機関によって金額が異なりますが、前述のとおり、DPTでおおよそ3,000~6,000 円が相場です。気になる方は、接種前にかかりつけで相談してみてください。

※保護者や成人家族の百日ぜきワクチン接種は、現在定期接種の対象ではありません。任意接種を検討する場合は、かかりつけ医にご相談ください。

なぜ今、百日ぜきの感染者が増えているのか?

百日ぜきの感染者が増えている理由

──追加接種の必要性が見直されるなか、「そもそもなぜ今、百日ぜきの報告がこれほど増えているのか?」と気になる人も多いと思います。その背景には、どんな要因があるのでしょうか?

岡本先生:一つ大きな要因は、やはり新型コロナの影響だと思います。2020年以降は、マスクや手洗い、距離をとるなどの感染対策が徹底されていたため、百日ぜきに限らず多くの感染症の流行が一時的に抑えられていました。

しかし、その反動のように、2024年には手足口病が大流行し、その後はマイコプラズマ肺炎やインフルエンザも長引きました。今はいろいろな感染症が次々と現れており、現場の医師としても「落ち着かない状況」が続いていますね。

──たしかに、ここ数年でさまざまな感染症が一斉に話題になっている印象です。そのなか、家庭でできる対策にはどんなことがありますか?

岡本先生:まずは、手洗い・うがい・マスクといった基本の感染対策ですね。これらを意識するだけでも、飛沫感染はかなり防ぐことができます。

特に、咳をしている家族がいる場合や、家庭に乳児がいる場合などは、意識的に感染を広げない工夫が大切です。日常の中で少し注意するだけでも、家族全体の安心につながります。

最後に、百日ぜきは、本当に咳がつらい病気です。昼も夜も咳き込んで、子どもにとっては大きな負担になります。しかも、咳が治まるまでに時間がかかる。

だからこそ、「かからないようにする」ことが何より大切です。そのためには、ワクチンによる予防と日常の対策を、家族全員で心掛けて過ごしてくださいね。  

───◆─────◆───

百日ぜきは、「かかってから対処する」よりも、「かかる前に備える」ことが大事だと、今回の取材をとおして改めて感じました。

特に、ご家庭にまだ予防接種を受けていない赤ちゃんがいる場合は、上のお子さんが追加接種を受けることで、家庭内での感染リスクを減らせる可能性があります。もし気になることがあれば、かかりつけ医に相談してみてください。

取材・文/山田優子

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