意外と知らない【海外の外来種問題】 タイで猛威を振るう『ブラックチンティラピア』とは?
日本国内の外来種問題はニュースで目にすることもありますが、海外の外来種問題について聞くことは少ないのではないでしょうか?現在、タイで大繁殖しているカワスズメ科のブラックチンティラピアは西アフリカ原産の魚として知られています。これに対してタイの漁業局は、ブラックチンティラピアの繁殖に歯止めをかけるべくいくつかの対策を計画しているようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ブラックチンティラピアとは
ブラックチンティラピア(Sarotherodon melanotheron)はスズキ目カワスズメ科(またはシクリッド科)に属する魚です。成魚の下顎には黒色域があり、英名の Blackchin tilapia はこの特徴に由来していると考えられます。
本種は高い塩分濃度への耐性があり、マングローブ域に多く生息するほか、河口、ラグーンから淡水域にも出現するようです。
また、ブラックチンティラピアは夜行性で群れを形成して生活します。
大繁殖しているタイでの対策は?
ブラックチンティラピアの原産地は西アフリカですが、タイをはじめ各地に移入されており、ヨーロッパやアメリカでも見られるようです。特にタイではブラックチンティラピアが大繁殖した結果、生態系へ深刻な影響を及ぼしていると言われています。
タイでは駆除活動に乗り出しており、漁業局では1匹15バーツ(現在のレートで約63円)で買い上げているほか、遺伝子組み換えにより?殖能力を失ったブラックチンティラピアや本種の天敵となり得る魚の放流などを計画しているようです(外来魚「ブラックチンティラピア」大量繁殖問題 遺伝子組み換えにより3年で終止符-バンコク週報)。
日本のカワスズメ科
タイで猛威を振るうブラックチンティラピアですが、日本も他人事ではありません。
現在、国内では南日本を中心に4種のカワスズメ科(ナイルティラピア、ジルティラピア、カワスズメ、コンビクトシクリッド)が知られており、生態系への悪影響が懸念されています。特にカワスズメはかつて食用として導入された種であり、南日本以外に北海道の温泉地から記録があります。
いずれの種も特定外来生物に指定されていないものの、カワスズメとナイルティラピアは過去に要注意外来生物(平成27年に廃止)に指定されていたほか、愛知県では「自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例」に基づきナイルティラピアの放流が禁じられています。
このように外来種問題は日本だけでなく、海外でも起こっているのです。これ以上、被害を大きくしないためにも外来種は絶対に放流しないようにしましょう。
<サカナト編集部>