雨でも参加する価値あり!初心者のためのライディングレッスン
「バイクの免許を取得したけど、公道を走るのが怖い」「ブランクが長かったので再びバイクに乗れるかどうか」といった不安を抱いている方も多いのではないでしょうか?そうしたライダーのための体験型安全運転講習会が「ベーシックライディングレッスン」(Basic Riding Lesson / 以下、BRL)です。一般社団法人 日本二輪車普及安全協会(以下、日本二普協)が主催するBRLには、安全に気持ちよくバイクで一般公道を走るために知っておきたいポイントやスキルを身に付けたいと思っているライダーが数多く参加しています。今回は千葉県運転免許センターで実施されたBRLの模様と、受講者の声をお届けします。
BRLとは
1991年の開催開始から33年を超える歴史を持つライディングレッスン「グッドライダーミーティング」を前身とするBRLは、バイクの免許を取得したばかりのビギナーライダーや、ブランクを経てバイクに乗り始めたリターンライダーを対象とする初心者向けライディングレッスンです。
一般公道の走行に不安を抱えている方運転免許を取得後、間もない方長いブランクがあって、運転操作に不安を抱えている方運転は不慣れだけど、バイク仲間が欲しい方
主催者である日本二普協に寄せられたライダーの声応え、公道走行を楽しめるカリキュラムを組んだレッスンとして2024年に生まれ変わりました。ビギナー同士で交流を持つ場としても利用されています。
4月から12月にかけて、東北・関東・中部・近畿・中四国・九州と日本各地で開催されているBRLは、二輪車安全運転指導員の資格を有する指導員のもと、運転免許センターや自動車教習所といった公共施設にてレッスンを受けられる手厚い内容になっています。開催日程や参加費、講習内容については日本二普協のWebサイト「ベーシックライディングレッスン」にまとめられているので、参加を検討されている方はそちらをご覧ください。
Basic Riding Lesson(安全運転講習)|日本二普協
https://www.jmpsa.or.jp/safety/event/event.html
BRL千葉の模様をレポート
2025年5月17日(土)、千葉県運転免許センターで開催された「2025 Basic Riding Lesson 千葉」の模様をお届けします。参加資格は以下の通りです。
千葉県在住であること二輪車防犯登録制度に加入していることレッスンで使用する車両は受講者各自による持ち込み該当する二輪免許を所持していること未成年者は親権者の同意が必要
開催当日はあいにくの雨模様で、あらゆる状況が芳しくないことから参加を敬遠したくなるところですが、この日は参加予定だった50名のうち、26名のライダーが路面状況の悪いなか、会場にやってきました。確かに好天時よりも不安要素が多くなりますが、バイクに乗っていると思わぬ悪天候に見舞われることもあります。そんなときに慌てないようにする予行練習という意味で、雨天時のレッスンはまたとない絶好の機会と言えます。
受講者が全員集まり、ブリーフィング(事前説明)が始まります。今日1日のスケジュールや注意点の確認、インストラクターの紹介が行われました。特に天候面から、路面状況に注意してレッスンに臨むよう促されました。BRLというレッスンが「ライディングスキルを向上させ、安全運転を学ぶ場である」という基本理念もしっかりと伝えられました。
レッスン開始、まずは準備運動から。ストレッチで体をほぐして、ライディングに適した柔軟な動きができるよう備えます。特にこの日は雨で体が冷えてしまうので、入念なストレッチが行われました。
ライディングギアの確認や、日常点検が済んだら実走行の開始です。安全面に配慮し、十分な車間距離を確保した隊列での走行が基本となります。
入門クラスの模様
今回BRL初参加の5名は入門クラスとして、バイクを操るための基本操作や走行中のバランスコントロールを重視したカリキュラムに臨みます。
アクセルを大きく回さずに、クラッチワークとリアブレーキを駆使してスムーズに発進信車体を安定せるための坂道でのレッスンです。失敗すると後ろに下がってしまう操作方法ですが、身につけられればライディング時の安定感を高められる重要なテクニックです。
白線を一本橋に見立てたレッスンでは、黄色と黒のパイロンで設けられた区間を8秒以上かけてできるだけゆっくりと走行するバランスコントロールに挑戦します。リアブレーキをうまく使うことがポイントになるのですが、なかなか難しいことから受講者もかなり悪戦苦闘していました。
ライディングレッスンの定番メニューである直線パイロンスラローム走行にも挑みます。雨が強まり普段よりも難しい状況のなか、受講者は一層集中力を高めて安全に課題をこなしていきました。
初心者クラスの模様
21名による初心者クラスでは、教習所で教わった基礎的なレッスンの反復が行われました。パイロンのあいだをゆっくり走行する低速走行でのレッスンは、一見すると大きく曲がらなくても良い簡単な内容に見えますが、指導員がゆっくり後退する歩調に合わせて走るので、意外と難しいのです。
パイロンを縫うように走る直線パイロンスラローム走行、左右に大きくオフセットされたパイロンを旋回しながら走る オフセットパイロンスラロームと、バリエーションの異なるスラロームレッスンが用意されていた初心クラス。インストラクターを務めた指導員や千葉県警察本部白バイ隊員が追走し、課題や改善ポイントを教えてくれました。
正しいブレーキングを学ぶ急制動では、雨というコンディションもあってなかなかフルブレーキングができない受講者も見られました。確かに初心者でなくても不安を覚えるレッスンですが、雨中で愛車の制動性能を知る絶好の機会でもあり、受講者は安全面を考慮したブレーキングに挑戦しました。
急制動では停止位置に指導員が立ち、加速から停止までの動作を見てアドバイスしてくれました。
インストラクターを務めていただいた千葉県警察本部の女性白バイ隊「ホワイトレディース」によるデモンストレーションが披露されました。装備を含めて総重量が約300kgに及ぶHonda CB1300Pを操ってのリーンイン・リーンウイズ・リーンアウトの使い分けに、受講者から歓声が上がりました。特に雨足が強まったなかでのデモンストレーションでもあり、その技術力の高さを見せてくれました。
レッスン総括「振り返り講習」
レッスンの締めくくりは、この日のメニューすべてを繋ぐコースを周回するBRL千葉オリジナルの「振り返り講習」です。分けられたグループごとに先導車がつき、ペースを合わせて走り抜けます。
この日取り組んだレッスンに連続してトライすることで、学んだ内容をライディングのなかでうまく活かせているかを確認します。
1日中雨が降り続いたことから会場のあちこちに大きな水たまりができており、過酷な状況下で「振り返り講習」に挑むという絶好の機会に恵まれた今回の受講者。万が一走行時に雨が降ってきたときでも慌てることなく対処できる心構えと技術が身についた、そんなレッスンになりました。
BRL受講者に話を聞いた
入門クラスに参加された井関さんに感想を伺いました。
「昨年(2024年)にバイクの免許を取得したばかりのビギナーです。若い頃からバイクには興味があったのですが、53歳になってようやくライダーの仲間入りをしました。中古で購入したCB250Rに貼ってあった二輪車防犯登録の日本二普協という表記からBRLの存在を知り、今回初めて参加しました。
改めて基礎技術の大切さを感じました。特に難しいと思ったのは一本橋です、どうしても緊張しちゃうんですよね。雨の日にバイクに乗ったのも今回が初めてで、会場までの行き来も含めていろいろと勉強になりました。指導員や白バイ隊員の指導も分かりやすくて、上達できた手応えも感じられました」
仲良く参加された永井ご夫妻にお話を聞きました。
「バイクに乗るようになったのは3年半ほど前で、BRLへの参加は今回が3回目です。地元の警察署が催した練習会に初めて参加したとき、自分の下手さ加減に気付かされ、『もっと練習しないと!』と練習の場を求め、BRLを見つけました。
参加するたびに課題が見つかり、ひとつずつ克服できているBRLに参加し続けているのは、指導員のアドバイスが的確で上達につながっていることです。正しく走れていない問題点がどこにあって、どうすれば改善できるのかを分かりやすく教えてもらえるんです。だから今回、上達したいという夫を誘いました」(加奈恵さん)
「通学で原付に乗るようになり、大学生のときに普通二輪免許を取得して、社会人になってからバイクを購入してライダーの仲間入りをしました。1年ほどで降りてしまったのですが、約15年のブランクを経て一念発起し、大型二輪免許を取得してCB650Rを購入しました。大型二輪の教習を経験しましたが、久々の公道走行に緊張してしまうため、妻が参加していたBRLに飛び込みました。
コーナリングに不安を覚えていたので、スラローム走行が難しく感じました。実際、指導員からも『ニーグリップが甘くて足が開いている』『目線が進行方向を向いていない』など具体的な指摘を受けました。それを改善するよう取り組んでいくうちに、スムーズに走れる感覚が身についたようです。まだまだ課題はあるので、できれば継続的にBRLに参加して成長したいですね」(芳輝さん)
指導員に話を聞いた
前身の「グッドライダーミーティング」立ち上げ時から約32年に渡って、千葉でのレッスンの取りまとめをしている林氏。ホンダのインストラクターの資格もお持ちのベテラン指導員です。
「グッドライダーミーティングも初心者のスキルアップを目的としたスクールでしたが、BRLに生まれ変わる際に改めて交通安全教育の原点に立ち返り、より初心者向けを意識したカリキュラムとしています。『公道を走るのが怖い』という声をよく聞くのですが、それでバイクから離れてしまうのは本当にもったいない。正しいライディングスキルを身につけることで、“怖い”を“楽しい”に変えていってもらいたいんです」
「今回は雨という状況下でのレッスンになりましたが、指導員のサポートがある雨中でのライディングレッスンって絶好の機会になります。普段なら行わない急制動でのブレーキロックを体感してもらう取り組みなど、インストラクターも状況に合わせてレッスンに工夫を加え、日々のライディングを楽しくするための経験や手応えを掴んでもらえるようにしています。指導マニュアルに沿いながら、受講者のスキルやレベルを見極めて臨機応変に指導することをBRL千葉では共有しています。
“怖い”を“楽しい”に変えると言いましたが、バイクで走るのならある程度の“怖さ”を持つことも大切です。無茶な運転はもちろんいけません。常に緊張感を持ちながら安全第一でバイクを楽しんでもらいたいのです。そのお手伝いができればと思っています」
手応えを掴んで楽しいバイクライフを
雨の中でのライディングレッスンという、初心者ライダーにとっては不安が増すものの、運転免許センターという安全な場所で指導員のサポートを受けながらトレーニングが受けられるという絶好の機会として参加した皆さんは、誰も辛そうな表情など浮かべず雨という状況を楽しんでいました。初心者を手厚くサポートできる体制だからこそ、どんな状況下でも不安なく練習に励めるところもBRLの大きな魅力と言えます。「愛車で公道を走る際の不安をなくしたい、手応えが欲しい」そんな思いを抱いている初心者ライダーは、最寄りの会場で開催しているBRLに参加してみてはいかがでしょうか。
お問い合わせ先:Basic Riding Lesson(安全運転講習)|日本二普協