釣れた「アイゴ」の【下処理方法と美味しい食べ方】を解説 毒棘には細心のご注意を
毒針があり厄介なゲストのアイゴ。実は美味しい魚で、カワハギにも似た濃厚な旨味と脂の甘味があります。ただ皮や内臓などに臭みがあるので、下処理次第で食味が大きく変わるのもアイゴの特徴です。そこで今回はそんなアイゴの下処理方法と美味しい食べ方を紹介します。
海釣りの厄介ゲスト「アイゴ」
海釣りで定番の外道と言えばフグやネンブツダイのイメージが真っ先に思い浮かぶと思います。彼らは遭遇率の高さや厄介さも含めて常にトップの座に君臨する魚です。しかし、筆者としてはアイゴの存在も忘れてはいけません。サビキ釣りやフカセ釣りなど堤防・岸壁や磯でよくヒットしてくる魚で、毒魚としても知られています。
ヒレの棘に毒を備えており、初心者や子供が知らずに触れてしまうアクシデントも多く、刺されてしまうと激しい痛みと腫れで病院送りになる可能性も。ハオコゼやゴンズイと並んで知っておきたい毒魚の1種でもあります。
磯焼けのきっかけにもなる
最大で40cm前後まで成長しますが、海藻を好んで食べるベジタリアンな一面も。ただ、釣りエサで用いられるオキアミやイソメといった動物性のエサも選り好みせず食べるため、草食寄りの雑食と表現するのが正確でしょう。
困った事に、時折大量発生しては一帯の海藻を食べ尽くしてしまい磯焼けのきっかけになることも。一時的ではあっても生態系や環境に少なからず影響を及ぼす魚でもあります。
実は美味しいアイゴ
見た目は地味な色にトゲトゲしたヒレと見栄えが良いとは言えませんが、捌いてみると綺麗な白身魚でかなりのギャップがあります。ところが、美しい白身にも関わらず市場価値は低めで、未利用魚として扱われてしまうことも。
原因としては内臓や皮の臭みが強い個体がいる点や、有毒なヒレを処理する手間が掛かる点が挙げられます。個体によっては下水のような強烈な臭いを発することもあり、身に臭いが移ってしまえば食べられたものではありません。釣りにおいてもエサ取りや毒魚として厄介者扱いされがちです。
これだけ見てみるとただの嫌われ者のようにも感じられますが、実は脂も多くとても美味しい魚です。臭みは個体差があるものの、下処理次第で驚くほど変わります。手間は掛かるものの、しっかり下処理したアイゴはカワハギにも似た濃厚な旨味と脂の甘味を感じられるほどです。
アイゴの下処理方法
そこでアイゴを美味しく食べるための下処理方法を紹介していきます。
用意するもの
・締め用ナイフ(キッチンばさみでも可)
・キッチンばさみ
・水汲みバケツ
・汚れてもいいタオル
・軍手、グローブ
毒魚を扱う以上、素手で触れるのはおすすめしません。魚が暴れて手が滑った途端に刺されてしまう恐れもあるため、軍手やグローブを着用した上でタオルを活用するのが大切。危険なヒレの棘は締めて動きを止めてから早めに除去すると安全です。
下処理方法
1.汚れてもいいタオルや雑巾で目を隠すように覆う
※魚は目を隠すと大人しくなる
2.エラを切り、水を汲んだバケツで放血する
※時折尾びれを掴んで振ると血が固まらずしっかり放血しやすい
3.血が抜けたら毒のある腹びれ、背びれ、尻びれの棘をキッチンばさみで切る
4.切ったヒレは放置せずきちんと処理する
5.持ち帰るまでに1時間以上掛かる場合は内臓を取り出す
※なるべく傷付けないよう慎重に刃を入れる
6.魚に直接氷が触れないようにビニール袋などで包んでからしっかり冷却し持ち帰る
アイゴの下処理でポイントとなるのが「血抜き」「内臓の除去」「冷却」です。臭みの原因となる血液と内臓を早めに取り除くのが重要で、釣り場で内臓を処理しない場合には持ち帰ってからすぐに取り出すと身への臭い移りを防げます。また、内臓をできる限り傷付けずに取り出すことも意識して下処理しましょう。
アイゴの食べ方
刺身で食べる際に注意する点として、皮の表面に臭みがあるためこまめにまな板を洗い、皮がついた部分に身を置かないようにします。白身魚のため数日寝かせるともっちりとして旨味も増えますが、時間が経つと皮目の臭みが復活する場合もあるため、可能なら3日以内に消費するのがおすすめです。
普通に食べても美味しいですが、筆者のおすすめが塩締めです。半身の状態、皮を引いたサクどちらでも塩締めできます。全体に塩を振って半身なら約1時間、サクなら約30分を目安に寝かせます。
浸透圧の効果で余計な水分と一緒に臭みが出てくるためバットなどに入れて傾けておきます。出てきた水分を拭き取ってからいつも通りに刺身を引いて完成です。もちもちとした食感と濃縮された旨味が特徴で、口いっぱいに濃厚な旨味が広がります。他にも昆布締めや漬けにしても美味しいので、アイゴを釣ったら是非一度試してみてはいかがでしょうか。
<杉本隼一/TSURINEWSライター>