横浜旭陵高校 豚から脳の機能学ぶ 解剖伴う「命の授業」
「認知行動療法」を教育に取り入れている県立横浜旭陵高校(大野俊世校長)で1月22日、豚の頭部を解剖して脳を取り出す授業が行われた。生徒が自ら摘出することで、命の尊さを実感するとともに、脳の働きを知ることを通して不安やストレスとどう向き合うか考えてもらう目的がある。
認知行動療法とは、心理療法の一つで、ストレスの影響で物事の認知が狭くなってしまった際に、自由に考えたり行動したりできるように手助けするための方法。これまでうつ病や不眠症の治療に用いられてきた。
同校では、これまで生徒の自死や不登校を未然に防止するため、教育活動において認知行動療法を活用してきた。
「本物を見てほしい」
今回の授業を担当した理科生物担当の伊藤未紗教諭によると、認知行動療法を絡めた解剖の授業を行う理由は、自らがクラス担任を務めた際の気づきだという。「家庭環境や生い立ちを背景に、将来を思い悩んでいる生徒がいた」と説明する。
伊藤教諭は「授業によって全て解決できるとは思っていない」と前置きしつつ「深刻に思い悩んでいても、あくまで脳に電気信号が流れているだけ。そのように認知を変えてほしい」と話す。
これまで、伊藤教諭は「本物を見てほしい」という思いから、授業で煮干しや鶏の頭の解剖を行ってきた。今回豚の頭を使用したのは、「人と同じ哺乳類で、臓器が似ている」という理由だ。
22日の授業では、約4人の班に分かれ、それぞれ豚の頭の解剖を進めた。生徒たちが脳を摘出すると、伊藤教諭は「豚にも嫌だと思うことはあるが、身体の大きさに比べてこれだけ小さい脳の中で起こっていること」と説明した。
授業を受けた3年の吉川悠太さんは「今日解剖した豚は、自分の意志で来たわけではない。命へ感謝しようと改めて思った」と語った。
3年の本間凌斗さんは、「4月から新たなコミュニティに入るのが不安だったが、授業を通して深刻に捉え過ぎる必要はないと感じた。工夫して感情をコントロールしていきたい」と前向きな感想を述べた。