半数以上の総務でエンプロイーサクセスの推進は進まず。管理職の理解不足などの課題も浮き彫りに
『月刊総務』は、全国の総務担当者を対象に、エンプロイーサクセスに関する調査を実施し、124人から回答を得た。
エンプロイーサクセス:企業の持続的成長のために従業員が能力を発揮できるよう支援する概念
・調査結果 概要
・約半数の総務がエンプロイーサクセスを意識
・エンプロイーサクセスを推進しているのは約3割
・エンプロイーサクセス推進の目的は「離職率の低下」「エンゲージメントの向上」「優秀な人材の確保」など
・実施施策と効果があった施策ともに「福利厚生の充実」が最多
・エンプロイーサクセス推進の課題は「施策の効果測定の難しさ」が最多
・成長を実感するために効果的な取り組みは「職場環境の整備」「多様なキャリアパスの準備」「定期的なフィードバック」など
・組織内でのキャリアの選択肢が広がったと感じるのは約3割
・自律的な組織を実現するための取り組みは「社内コミュニケーションの促進」が最多
約半数の総務がエンプロイーサクセスを意識
エンプロイーサクセスという言葉を知っているか尋ねたところ、55.6%が「言葉を聞いたことがない」と回答し、認知度は低い状況にあることが明らかとなった(n=124)。
総務としてエンプロイーサクセスを意識しているか尋ねたところ、53.2%が意識していると回答した(n=124)。
エンプロイーサクセスを推進しているのは約3割
エンプロイーサクセスを推進しているか尋ねたところ、推進していると回答したのは34.7%にとどまった(n=124)。
エンプロイーサクセス推進の目的は「離職率の低下」「エンゲージメントの向上」「優秀な人材の確保」など
エンプロイーサクセスを推進する理由を尋ねたところ、「離職率の低下」が79.1%で最も多く、次いで「エンゲージメントの向上」が69.8%、「優秀な人材の確保」が60.5%となった(n=43/エンプロイーサクセスを推進している企業)。
実施施策と効果があった施策ともに「福利厚生の充実」が最多
エンプロイーサクセス推進のために行っている施策について尋ねたところ、「福利厚生の充実」が72.1%で最も多く、次いで「職場環境の整備」が69.8%、「健康管理支援」と「ワーク・ライフ・バランスの推進」がともに62.8%となった。
また、実際に効果があった施策を尋ねたところ、「福利厚生の充実」が51.2%で最も多く、次いで「ワーク・ライフ・バランスの推進」が41.9%、「職場環境の整備」と「資格取得支援」がともに37.2%となった(n=43/エンプロイーサクセスを推進している企業)。
エンプロイーサクセス推進の課題は「施策の効果測定の難しさ」が最多
エンプロイーサクセス推進における課題を尋ねたところ、「施策の効果測定の難しさ」が60.5%で最も多く、次いで「管理職の理解不足」が41.9%、「リソースの不足」が34.9%となった(n=43/エンプロイーサクセスを推進している企業)。
成長を実感するために効果的な取り組みは「職場環境の整備」「多様なキャリアパスの準備」「定期的なフィードバック」など
従業員が成長を実感するために効果的な取り組みについて尋ねたところ、「職場環境の整備」が51.6%で最も多く、次いで「多様なキャリアパスの準備」と「定期的なフィードバック」がともに50.0%、「キャリア開発プログラム」が45.2%となった(n=124)。
組織内でのキャリアの選択肢が広がったと感じるのは約3割
この数年で組織内でのキャリアの選択肢が広がったと感じるか尋ねたところ、約7割がキャリアの選択肢が広がっていないと考えていることが明らかとなった(n=124)。
<広がったと感じる理由/一部抜粋>
・社内公募制度などの活用が進んできている。
・本人の意向に沿った異動が増えたと思うから。
・他社に転職するのではなく、社内で柔軟に業種変更できる施策を導入しているため。
・多様なキャリアパスにおける社内ロールモデルが増えてきたと感じるため。
<広がっていないと感じる理由/一部抜粋>
・人事としては新しい施策を実施しているが、従業員の立場から実感はしていない。
・ポジションは増えたものの、経営層の人事判断がそれに沿っていないと感じるから。
・若手で昇進する人は増えたが、中間層からその先のキャリアが行き詰っているように見える。
・コロナ後、勤務スタイルもコロナ以前に回帰する傾向があり、選択肢としての多様性は減っている。
・経営の方針と現場の考えとの乖離が著しい。
・昇進、昇格のルールが数十年変更されていないため
自律的な組織を実現するための取り組みは「社内コミュニケーションの促進」が最多
自律的な組織を実現するために会社として取り組んでいることについて尋ねたところ、「社内コミュニケーションの促進」が52.4%で最も多く、次いで「フィードバックを重視する評価制度」が22.6%、「各部署の意思決定権の拡大」が20.2%となりました。一方、「取り組みをしていない」と回答した企業は28.2%に上った(n=124)。
総評
今回の調査結果から、エンプロイーサクセスに対する総務の関心は高まりつつあるものの、実際の推進には課題が多いことが明らかとなった。半数以上の総務がエンプロイーサクセスを意識している一方で、推進できている企業は3割強にとどまり、その背景には「施策の効果測定の難しさ」「管理職の理解不足」「リソースの不足」といった課題が浮かび上がっている。
エンプロイーサクセスの本質は、従業員体験の向上を通じた組織全体の活性化にある。今後の推進には、管理職層の理解を深めるための取り組みや、データを活用した効果測定の仕組みづくりが求められる。総務は、従業員の働きがいを高める観点から、エンプロイーサクセスを経営戦略の一環として捉え、より戦略的に取り組むことが重要となるだろう。
【調査概要】
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2025年1月15日〜2025年1月21日
■調査結果の引用時のお願い
※本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など