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「このままでは共倒れに…」アルツハイマー型認知症の父が特別養護老人ホームに入所するまで【体験談】

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現在80代後半の父。2010年秋に初期のアルツハイマー型認知症と診断され、進行を遅らせる薬を服用しながら、デイサービス(利用者が自宅で自立した日常生活を送れるよう、食事や入浴などの支援が中心の介護サービス)、訪問介護の力を借りつつ母が主たる介護者として在宅介護をしてきました。しかし発症から12年たった2022年秋、在宅での介護の限界が見え、施設入所を検討することとなりました。

コロナ禍での在宅介護

2020年、コロナ禍で生活様式が大きく変わり感染に怯える日々を過ごしていました。このころ父はデイサービスを利用していましたが、もしそこで感染してしまったら……という不安から、母は父のデイサービスの利用を中止しました。

そのころ、父のアルツハイマーの症状は確実に進行しており、入浴介助と排せつ介助も必要となってきました。また、コロナ禍前は私も両親の元を訪れ多少の手伝いをしていましたがそれも難しくなり、日に日に主たる介護者である母の負担が増え、母はケアマネジャーさんに助けを求めました。すると訪問看護の利用を提案され、毎週1回は看護師さんが健康状態の確認、薬の管理、話し相手、入浴介助のために訪問、別の曜日に1回理学療法士さんが機能訓練(歩行訓練など)のために訪問してくれることになりました。両者とも母の相談にも乗ってくださり、心強い存在だったそうです。

その1年後の2021年になり、デイサービスを再開。しかし、身体機能はさらに低下していました。両親の家はエレベーターのないマンションの3階です。それまでは手すりに掴まりながら隣に介護者が付き添いゆっくりと昇降できていた父でしたが、それも難しくなってきました。そのせいで近所の病院への通院も難しくなったため、訪問診療の利用も開始しました。

施設入所を提案される

そんなある日、ケアマネジャーから「お父様の体が動かなくなるのは時間の問題です。お母様への負担と現在の住環境を考えるとこのまま在宅介護を続けるのは無理があると思います。施設への入所を検討する時期が来たのではないでしょうか」と話がありました。

経済的な事情から選択肢は特別養護老人ホーム(介護保険サービスが適用される公的施設の1つで、常時介護を必要とし在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を提供する施設)となりますが、申し込み条件は「原則要介護度3以上であること」。このときの父の介護度は要介護1でした。また、申し込みをしても施設によっては待機者が数100名いるとのことで、いつ順番が来るのかもわかりません。

すると再度ケアマネジャーさんより「いきなり施設入所となるとお父様も混乱されると思います。現在の介護保険の有効期間があと半年で終了します。次回は要介護3となる可能性が高いと思うので、まずはショートステイ(短期間で宿泊し介護サービスを受けることができる施設)を利用して少しずつ施設での生活に慣れていただくのはいかがでしょうか」との提案があり、自宅から徒歩圏内にあるショートステイ事業所で1泊から始めてみることとなりました。

結果、最初の数回は利用を渋り、施設到着後も「家に帰らせろ!」と訴えることもあったようですが、利用を繰り返すうちに安定し、数カ月後には5泊6日を問題なく過ごせるようになりました。

いざ入所となって迷いが生じる

半年後、ケアマネジャーさんの読み通り父は要介護度3の判定となり、自宅からそう遠くない、比較的早く入所が可能と思われる特別養護老人ホームに申し込みをしました。

さらに半年後、「まもなく入所可能となります」との電話がありました。しかし、このとき母には施設に入所させることへの迷いがありました。

このころの父は、家族の顔と名前が一致せず、意思表示が難しく、歩行も不安定。排せつや入浴は全介助と在宅介護は厳しい状態になっていました。また、何より心配だったのは母の疲労がピークに達していたことです。同時に父にとってもそのような母に介護されることが良いことなのか? とも思えました。

その一方で、父自身は施設に入ること、入所した後は自宅に戻って来ることができないことをどのように受け止めるのだろうか……。それを考えると、申し訳なさもあり私の中にも迷いが生じました。しかし、ケアマネジャーさんから「今何より大切なのは、本人、家族が共倒れとならないことです。介護については環境が整った場所でプロにお願いするのも1つの方法であると思います」と言葉を掛けられ、その意味を考えることで私たちの迷いは払拭され、1カ月後に施設入所の契約をしました。

まとめ

施設へ面会に行くと、父は自宅にいたころより穏やかな表情をしていました。父が認知症になったころから担当してくださったケアマネジャーさんの「家族が共倒れになってしまっては意味がない」との言葉で、家族でできることには限界があり、プロにゆだねることもときには必要なのだと改めて思いました。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。

文/ブルームーン

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